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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4656】花の香 純米造り ふぞろい ドメーヌ和水町【熊本県】

2021.11.5 18:43
熊本県玉名郡和水町 花の香酒造
熊本県玉名郡和水町 花の香酒造

【E居酒屋にて 全3回の➁】

 P居酒屋の暖簾をくぐったら、常連ちーたんが飲んでいた。ちーたんと談笑しながら、ジムビームのハイボールをジョッキで2杯ほど飲む。「たまにE居酒屋に行くか?」「いいね」。こういう話はすぐまとまるものだ。ということで直ちにちーたんとE居酒屋に転戦。ここでは日本酒を5種類飲んだが、うち2種類はすでに当連載で取り上げているので、ここでは3種類を掲載する。

 まずいただいたのは、赤いラベルが目に鮮やかな「森嶋 ひたち錦 純米吟醸 瓶燗火入」。続いていただいたのが「花の香 純米造り ふぞろい ドメーヌ和水町」だった。「花の香」は近年、急速に酒質を向上させ、それに伴い急速に人気を得ている、注目蔵だ。当連載でこれまで、「花の香」を7種類取り上げている。

 花の香酒造は1902(明治35)年創業だが、近年、その酒質の良さで急速に注目を集めている蔵だ。契機は、「獺祭」の旭酒造で研修を受け、酒質を飛躍的に向上させたこと。同蔵の躍進ぶりについて、日本酒専門のウェブサイト「SAKETIMES」は、以下のように書いている。

「蔵元や蔵人が『獺祭』の旭酒造で長期研修を受け、新たに全量純米酒の蔵としてスタートを切った熊本・花の香(はなのか)酒造。平成26BYにはわずか70石(一升瓶換算で7000本)の製造でしたが、翌年にはその6倍の480石、さらに次の年(平成28BY)には650石を造るまでに急成長しています」

 今回の酒のコンセプトについて、瓶の裏ラベルは以下のように説明している。

「花の香酒造は、人口約9千人の小さな山間の和水町にて栽培した米だけで日本酒を醸す『全量ドメーヌ和水町』を実現させました。日本遺産・菊池川流域に在る和水町は、はるか昔より土地の恩恵を受け、2千年以上米を作り続けています。花の香酒造は、そのころから今日まで、大地に流れる澄んだ水を仕込み水とし、その同水域の稲作文化を引き継ぎ、全量を和水町の米だけにこだわった酒造りをしています。地から、水から、天から、米からの恵みを受けて和水という土地をまるごと醸す。それは、『土地』『人』『水』全てこの地から受ける恵みを真摯に受け止め、季節を通しこの地の自然を感じながら土地の個性を活かす。だからこそ全ての米を大切にしたいと考え、和水町で丁寧に育てた規格外のお米でも日本酒を醸しました」

 また瓶の表ラベルに大和言葉で何やら文字が書かれており、その文字が模様、すなわちデザインとなっている。その訳を裏ラベルに以下のように掲載している。

「【大和言葉 訳】ドメーヌ和水町としてお米を作ったら、粒の揃わない米も出来ます。これを酒造りに使わないのは、とてももったいないことです。低精白でも良い酒が造れるのであれば、揃わない米も良い酒となり、和水町の農家も安心だろうと存じます。こうして和水の農家と醸造家の想いと夢を込めまして、敢えて粒の揃わない米でこの酒を醸しました」

 また、瓶の首にはタグが掛けられており、この酒を「応援酒」と名乗っている。タグには「全てのお米・食文化を大切に」と題し、「麹米50%・掛米に等外米を使った純米造り ふぞろいのお酒です。お米には1等、2等、3等などの格付けがありますが、等外米で造ったお酒は特定名称酒を名乗れません。しかし等外米も大切に育てた和水テロワールのお米です。そして純米大吟醸や他の花の香の酒造りと同じく手間暇かけて醸しています」と紹介している。

 瓶の裏ラベルもタグも松岡修造ばりの“熱さ”だ。

 かみくだいて、分かりやすく言うと、以下のようになる。稲作では、どうしても1等、2等、3等に格付けされないコメが出てくる。それらを規格外米とか等外米といい、これらのコメで酒を醸しても、純米酒、大吟醸酒など特定名称酒を名乗れない。このため、捨てられたり、加工用に使われたり、とあまり有効に活用されないできた。これは、酒米にとっても、生産者にとってもかなしいことだ。

 この等外米は避けて通れない問題で、有効活用をしよう、と正面から取り組んだのが今回の酒、というわけだ。この蔵のお師匠さんの旭酒造はだいぶ前から「獺祭 等外」を世に出しており業界をリードしている。等外米が有効利用されると、生産者にとっても、コメにとってもうれしいことだ。

 さらに花の香酒造は、低精白米で酒を醸そう、とさまざま試みている。これは、コメをあまり削らなず、ご飯程度の精米歩合で酒を醸そう、というもの。これも、コメを無駄にせず活用する、という精神のもとの試みだ。すべてのコメを可能な限り無駄なく使い切ろう、という信念だ。

 ある酒屋さんのサイトを見たら、蔵元さんは「山田錦50%を麹米に、掛米に和水テロワール等外90%を使い、9号酵母で醸しました」と話している。90%という意味は、コメの外側の10%だけ(そのほとんどは糠)削り、残った90%で酒を醸した、という意味だ。ちなみに、白米の精米歩合は約92%だから、ほとんど同じだ。これらをラベルのスペック表示に書けばいいとおもうのだが・・・。じっさいのラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、アルコール分16度、製造年月20.06」にとどまっており、松岡修造ばりの“熱さ”で語っているわりには、そっけない。これでは、飲み手に伝わらない。残念だ。

 前置きが長くなり過ぎた。では、いただいてみる。

 ちーたん「香りが特徴的。セージ的な香り。かわいい味」
 酒蛙「セージか。サイモン&ガーファンクルの『スカボロフェア』をおもい出すなあ。歳が分かっちゃうけど。お酒は、さっぱりとした口当たり。上立ち香と含み香にセメダイン(酢酸エチル)のニュアンス」
 ちーたん「渋みがある」
 酒蛙「旨みが出過ぎていないため、ドライ寄りな味わい。やわらかな旨みと酸がバランス良く出ている。余韻は辛みと酸。等外米で造ったお酒とはおもえない綺麗さだ」

 これからも、等外米&低精白米で、美味しいお酒を醸してもらいたいものだ。そして、このムーブメントが全国の蔵に広がることを切望する。

 酒名および蔵名の「花の香」の由来について、蔵のホームページは「酒蔵周辺の木々から 梅の香りが蔵の中に漂うことから 『花の香』という名の清酒が生まれました」と説明している。

酒蛙

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