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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4640】日高見 純米(ひたかみ)【宮城県】

2021.10.3 21:35
宮城県石巻市 平孝酒造
宮城県石巻市 平孝酒造

【父の日プレゼント 全8回の③】

 息子が2013年から毎年、父の日に、カップ酒の詰め合わせを送ってくれる。毎年8種類ずつ。これがとても楽しみだ。ありがたい。感謝感激だ。ことしで9年目。重複したものが無いから、これで72種類。いつネタが尽きるんだ? カップ酒の世界はなかなか奥が深そうだ。

 一日1個ずつ、大事に飲む。「福祝 夏の純吟」「月の輪 無農薬米酒」と飲み、3番目にいただいたのは「日高見 純米」だった。「日高見」は飲む機会が多い酒で、当連載でこれまで、14種類を取り上げている。今回の酒は、当連載【1040】の「日高見 純米 山田錦 60」と同じだとおもうが、これを飲んでから8年半もたつので、再び取り上げることにする。さて、いただいてみる。

 酸と旨みの、厚みがあるしっかりとした味わいのお酒。これが第一印象だ。マスカット的な香味がほのか。ふくよかな口当たり。余韻は辛みと苦み。最初のころ前に出ていた酸が、飲み進めていくと、奥にやや引っ込むニュアンスに。とおもったが、酸は存在を主張し続け、全体を引き締めている。

 温度が上がれば、甘みも顔を出してくる。また、冷たいときはマスカット的な香りだが、温度が上がってくるとマスカット香が弱まる。終始一貫して、ずっと出ているのが旨みだ。エレガントな味わいではないが、しっかりとした味わいのお酒だ。いかにも日高見、という「日高見DNA」が入っている。そして、いかにも純米酒という味わいのお酒だった。

 カップのラベルには「兵庫県産山田錦100%使用」と大きく書かれ、アピールしている。また、ラベルのスペック表示は「アルコール分15度以上16度未満、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合60%、製造年月02.07」。

 さて、あまりにも有名な山田錦だが、ここでおさらい。

「山田錦」は、兵庫県立農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター)が1923(大正12)年、母親の「山田穂」と父親の「短稈渡船」を交配させ、育成と選抜を重ねて開発。1928(昭和3)年 、酒造米試験地(現:酒米試験地)で産地適応性の試験が行われ、1931(昭和6)年に品種確定し「山渡50-7」との系統名がつけられた。そして1936(昭和11)年1月31日 の 午前11時から開催された水稲原種改廃協議会で「山田錦」と命名され、兵庫県奨励品種に採用された。

 ところで、「山田錦」命名に隠れたエピソードがあった。当初は「山田錦」ではなく「昭和」と命名される予定だったというのだ。これについて、山形県の米穀類販売業「アスク株式会社」のホームページに、以下のような記述が載っている。

「(前略)蛇足ながらもうひとつ、山田錦の品種候補名は『昭和』であったということです。それがなぜ山田錦になったのでしょうか。『昭和』という候補名が見送られた背景には、山形県が昭和10年に奨励品種に採用した『昭和ニ号』(佐藤弥太右衛門育成)があったためでないか、そこで、母の山田穂に由来する山田錦に変更したのでないか、と言われています。山田錦の命名にも、山形と兵庫との因縁めいたものがあったようです」

「昭和」という品種名の申請が1年早まっていたら、すんなり「昭和」と決まったかもしれない、きわどい命名劇だったのである。

 酒名「日高見」の由来について「日本の名酒事典」は、「太陽の恵みを受ける『日高見国』が、北上川を中心とする地域に依存しているという郷土の伝説と、地元を大切に考える蔵の姿勢から命名」と説明している。地図を見ると、蔵のある石巻市は、旧北上川の河口に位置している。

酒蛙

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