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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4632】加賀鳶 夏純米 生(かがとび)【石川県】

2021.9.18 19:49
石川県金沢市 福光屋
石川県金沢市 福光屋

【Z料理店にて 全6回の①】

 近所のZ料理店に顔を出す。「うちは居酒屋じゃないんだからね。居酒屋みたいにいっぱいの種類の酒を置いてないんだからね」と言いながらも、予約すると、わたくしが飲んだことがないだろうお酒を数種類さりげなく用意してくれる。その心意気がうれしく、月に1回のペースで暖簾をくぐっている。が、長引くコロナ禍で、かつてない苦しい経営を強いられている。しかし、客としてはどうすることもできず、歯がゆいおもいが募るばかり。せめて定期的に顔を出すしか手立てはない。

 冷蔵庫の中を見て、一番先に目に飛び込んできたのは「加賀鳶 夏純米 生」。まだ取り上げたことがない酒だ。これを今回のトップバッターに選ぶ。当連載でこれまで、「加賀鳶」を9種類取り上げている。派手さは無いが、落ち着き感のある酒、というイメージを持っている。今回の「加賀鳶」の夏酒はどうか。いただいてみる。

 夏酒というと、淡麗でさっぱりした口当たりの酒がもっぱらである。ところが、「加賀鳶」の夏酒は、その真逆を行く路線だったのだ。これには驚いたのなんの。

 まず、酸と辛みがドンと来る。これが第一印象。ファーストアタックがとにかく力強いのだ。言ってみれば、重量級の先制パンチをいきなり食らった、という感じだ。味わいは、旨酸っぱさが膨らむ。終始、酸が味を支配する構造だ。香り穏やか。舌にわずかにチリチリ微発泡がきて、さわやか、フレッシュ。そして、しっかりとした味わいで、飲みごたえ十分。やわらかながら、力強い口当たり。味に膨らみがあるので、非常に豊かな気持ちになる。余韻は辛み、キレが良い。これで夏酒を名乗るとは! そのココロは?と問いたくなるが、旨いから面倒くさいことは言わないことにしよう。

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。「低温醗酵でじっくりと仕上げたしぼりたての純米酒です。一切の火入れをせずに爽やかな風味をそのまま封じ込めました。フレッシュで清涼感あふれるキレの良い辛口は、米の旨味が存分に生きた夏季限定の美味しさです」

 裏ラベルのスペック表示は「全量契約栽培米・酒造好適米使用、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合65%、アルコール分17度、製造年月2021.04」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。しかし、蔵のホームページでは、この酒の使用米を「五百万石 100%(富山県産)」と公開している。またホームページではこの酒の日本酒度を+5、酸度を2.2と開示している。

 酒名「加賀鳶」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「江戸の昔、加賀藩お抱えの大名火消し加賀鳶は、面たくましく、力あくまでも強く、火消しの技と、喧嘩早さは天下一品。賑々しくも勇ましく、粋な集団として江戸八百八町の人気をさらっていました。そんな加賀鳶の粋の良さを表現したのが、歌舞伎の出しもの『盲長屋梅加賀鳶(めくらながやうめがかがとび)』。加賀鳶と江戸の町火消しとのケンカがらみの、江戸の人情や風俗を生き生きと表現した河竹黙阿弥のヒット作です。長半纏に染め抜かれた雲に雷をモチーフにした『加賀鳶』のロゴマークは、加賀鳶連中の心意気と地酒の力強さを表しています」

 鳶たちの「粋」を「キレ」で表現した酒だから「加賀鳶」なのだろう、と勝手に解釈する。

酒蛙

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