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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4629】明鏡止水 生酛 純米 2016(めいきょうしすい)【長野県】

2021.9.12 21:51
長野県佐久市 大澤酒造
長野県佐久市 大澤酒造

【B居酒屋にて 全9回の⑦】

 1カ月に1回のペースで足を運んでいるB居酒屋。常時約200種類の酒を置いており、1カ月たてば、冷蔵庫のラインナップがけっこう更新されているので、「日本酒津々浦々」の取材に好都合なのだ。コロナで大苦戦を強いられている様子だが、飲み手としては、すこしでも支援になるよう定期的に通うことしかできない。早くコロナ禍が過ぎ去り、にぎわいを取り戻してもらいたい、と切に願う。

「神韻」「マルマス米鶴」「天美」「楽器正宗」「自然郷」「秋鹿」と飲み進め、7番目にいただいたのは、「明鏡止水 生酛 純米 2016」だった。

「明鏡止水」は飲む機会が非常に多い酒で、大澤酒造のお酒は当連載でこれまで、24種類を取り上げ、うち21種類が「明鏡止水」だ。わたくし行きつけの居酒屋の店主が「明鏡止水」がお好きなためだろう。この銘柄には、旨みがありながらきれい感・落ち着き感・バランスの良さを感じている。いわゆる飲み手を選ばない酒だとおもっている。さて、今回のお酒はどうか。いただいてみる。

 客 「けっこう辛めだ」
 仲居さん「角がとれた辛み」
 酒蛙「やわらかな口当たりで、甘みと辛みが良く出ている。余韻には苦みと辛みを感じる。セメダイン(酢酸エチル)似の香り、若いバナナの香りなどが混じった香りが少しある。旨みはたっぷりあるが、酸があまり感じられないのは残念だ。これで酸が出てくれば文句なしだ。もっとも、酸の多寡は好みの問題だけど。バランスが良く落ち着き感のある従来の『明鏡止水』とは、一味違うニュアンスのお酒だ」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%、アルコール分16度、おすすめの飲み方 冷して(5~10℃)冷や(15~20℃)ぬる燗(40℃)、製造年月2020.10(瓶詰月)、蔵出荷月2020.12」。使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 しかし、2つの点でこのラベル表示は素晴らしいとおもう。それは「冷やして」と「冷や」をきちんと使い分け、それぞれの温度を明記していること。今や、居酒屋の店主をはじめ、酒飲み人の95%以上は「ひや」を冷蔵庫で冷やした酒と誤解している(たぶん)。それをきちんと書いているのがいい。

 もう1点は、製造年月と蔵出荷月を分けて表示していること。多くの蔵は単に「製造年月」と表示しているが、飲み手にしてみれば、製造年月とは何なのかさっぱり分からない。その点、この蔵は製造年月について「瓶詰日」と明示しているところが良い。これにより、この酒は2016年に醸されその後約4年間、タンクで貯蔵・熟成されたのち、瓶詰めされたことがはっきり分かるのだ。

 なお、ラベルには書かれていないが、矢島酒店(千葉県船橋市)のサイトは、この酒を「『雄町』の純米酒をベースに、『ひとごこち』の純米酒をブレンドし、両酒米のやわらかさが調和しております」と書き、ユニークな造りをしていることを紹介している。また、複数のサイトは、大澤酒造が初めて試みた生酛づくり、と紹介している。

 使用米の「ひとごこち」は、長野県農事試験場が1987年、母『白妙錦』と父『信交444号』を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、1997年に品種登録された酒造好適米。

 酒名「明鏡止水」の由来について、「日本の名酒事典」は、「元禄2年(1689)の創業。酒名の“明鏡止水”は、曇りなく磨かれた鏡と静止した水のことで、“心が澄みきって乱れがない”という意味。その意味を酒にだぶらせて、くせがなく飲みやすいという酒質を表すとともに、言葉の響きが美しいことから命名された」と説明している。

酒蛙

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