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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4625】天美 特別純米(てんび)【山口県】

2021.9.4 15:10
山口県下関市 長州酒造
山口県下関市 長州酒造

【B居酒屋にて 全9回の③】

 1カ月に1回のペースで足を運んでいるB居酒屋。常時約200種類の酒を置いており、1カ月たてば、冷蔵庫のラインナップがけっこう更新されているので、「日本酒津々浦々」の取材に好都合なのだ。コロナで大苦戦を強いられている様子だが、飲み手としては、すこしでも支援になるよう定期的に通うことしかできない。早くコロナ禍が過ぎ去り、にぎわいを取り戻してもらいたい、と切に願う。

「神韻」「マルマス米鶴 純米吟醸 青 生酒」と飲み進め、3番目にいただいたのは、「天美 特別純米」だった。当連載【4451】で取り上げた「天美 特別純米 生原酒」の火入れバージョンだ。

 この長州酒造は新しい蔵で、誕生までには物語があった。それを報道した地元山口新聞の2020年3月30日付Webサイト記事を以下に貼り付ける。

「県内産の日本酒がブームとなる中、下関市菊川町に新しい酒蔵が誕生した。太陽光発電機器製造販売の長州産業(山陽小野田市)が、廃業の危機にあった同町の酒造会社から免許を譲り受け、立ち上げた『長州酒造』だ。女性杜氏、藤岡美樹さん(44)を中心に5月から試験醸造を開始する。
 始まりは、『長門菊川』の銘柄で親しまれてきた菊川町吉賀の児玉酒造との出合い。長州産業は事業の一つとしてチョウザメの養殖を手掛けており、水のきれいな新たな養殖場を探していたところ同酒造に行き着いた。1871(明治4)年創業の老舗ながら後継者がなく、存続が危ぶまれていることを知り、『町に一つ続いてきた酒蔵のDNAを残せないか』と一昨年、事業を継承した。
 老朽化していた酒蔵を取り壊し、跡地に防湿作用がある木造骨組みの酒蔵が昨年末に完成。品質を左右する空調環境、衛生管理を万全に整えるとともに、『どうしたら仕事がしやすいか』と製造から瓶詰め、出荷まで動線にこだわった。年明け以降、新しい設備が次々と搬入され、試験醸造に向けての準備が着々と進む。
 5人でスタートする蔵人を率いる藤岡さんは三重県出身。東京農大醸造学科を卒業後、銘柄『川鶴』の川鶴酒造(香川)、『作』の清水清三郎商店(三重)などで修業を積んだ。長州酒造は設計段階からの参加で、『杜氏がゼロから蔵の立ち上げに関わることはまずない。二度とないチャンスで大変だけど挑戦しがいがある』という。
 地元で長く愛されてきた『長門菊川』を引き継ぐとともに、菊川町と隣接する豊田町をはじめ県産米を積極的に使用し、新しい味わいの酒造りに挑む。『いいお酒を造りたいとの思いは一つ。皆の夢を形にする最終ランナーとして、飲んだ人に感動してもらえる酒を造りたい』と目を輝かせる。
 新しい蔵は直売所を併設し、来館者がいつでも製造風景を見ることができるガラス張りの見学通路を設置。『地域の人が集まり、楽しんでもらえるスペースに』と願う」

 また、山口新聞は、2020年11月18日付のWebサイト記事で、お酒を出荷したときの記事を以下のように報じている。

「下関市菊川町吉賀に誕生した新酒蔵『長州酒造』が、初搾りとなる『天美 the first』2千本を県内外の酒販店に出荷した。既にほぼ完売状態だが、今月末から蔵の顔となる『天美特別純米』、続いて『天美純米吟醸』の販売が控えている。
 同酒造は、太陽光発電機器製造販売の長州産業(山陽小野田市)が同町で廃業の危機にあった1871年創業の児玉酒造の事業を継承して立ち上げた。老朽化していた酒蔵を取り壊し、昨年末、跡地に木造骨組みの新しい蔵が完成。新型コロナウイルスの影響で設備機器の試運転や調整を担う県外技術者の作業が遅れたものの、9月末から仕込みを開始した。
 蔵を率いるのは香川県の川鶴酒造、三重県の清水清三郎商店など老舗蔵元で修業を積んできた女性杜(とう)氏(じ)、藤岡美樹さんで、蔵人は3人。今月2日に初搾りをした天美 the firstを10日に出荷したばかり。『日本酒の魅力を知っていただけるお酒になるよう丁寧に造った。時間はかかったが透明感のあるお酒に仕上がった』と藤岡さん。
 来年6月までの初年度は1万本を造る計画。原料となる酒米は菊川町と隣接する豊田町で取れた西都の雫、徳地町の山田錦を使用する。
 17日は長州酒造の岡本晋社長(長州産業社長)と藤岡さんが下関市役所を訪れ、前田晋太郎市長に初出荷を報告。岡本社長は『日本酒が日本の文化で果たす役割を考え、蔵を再生させた。地域経済を活性化し、天美ブランドが日本全国そして世界でおいしいと言っていただけるよう夢を実現したい』と話した」

 さて、いただいてみる。

 仲居さん「ライトなのにコクがある。口当たりが軽いのに、しっかり味がする。面白い酒。クイクイいく」
 酒蛙「舌先にチリチリ微発泡を感じる。生原酒ではなく火入れなのにフレッシュ感があり、微発泡を感じるとは、びっくりだ」
 お客さんH「あ、なるほどね。味がある。旨いね」
 酒蛙「甘旨酸っぱくて、ジューシー感がある。香り穏やかでほのか。モダンタイプのライトボディ。やわらかく、軽めの口当たりだが、けっこうしっかりした味わいで、良い。酸が効いているので飲み飽きしない酒質、食中酒に適している。いくらでも飲めそうだ」

 瓶の裏ラベルは、酒造りのコンセプトを以下のように説明している。「山口県下関に湧き出る天然水を使い、この地で酒造りができる感謝の気持ちとありったけの愛を込め、今できる精一杯を醸したお酒です。いつもそっと寄り添うような癒しの一杯をお届けしたいと思います」

 裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%、アルコール分15度(原酒)、杜氏 藤岡美樹、製造年月2021.5」。こだわった酒造りをしているのは分かるが、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 酒名「天美」の由来について、新潟県長岡市の地酒専門店「カネセ商店」のサイトは「『天の恵みを醸す』の考えの下、『天照(あまてらす)』と『美禄(びろく)』から一文字ずつとり命名!」と説明している。

酒蛙

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