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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4622】鍋島 純米大吟醸 きたしずく(なべしま)【佐賀県】

2021.8.29 16:50
佐賀県鹿島市 富久千代酒造
佐賀県鹿島市 富久千代酒造

 休日の夕方、ふらりと近所のうなぎ屋へ。うなぎはもちろん美味しいのだが、酒がいい。定番酒はありきたりの地酒3種類ほどだが、店主の“隠し酒”が面白い。この場合の面白い、は特段意味のある言葉ではない。わたくしの興味をそそる酒が多い、ということだ。どんなルートで入れているのか興味のあるところだが、あえて聞かないことにしている。

 席につくと、店主が、いつものようにおすすめのお酒を抱えて持ってきた。今回は「鍋島 純米大吟醸 きたしずく」だった。「鍋島」は2011IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門のチャンピオンに輝き注目された。その前から、日本各地の地酒蔵から目標とされてきた実力蔵だが、受賞でさらに注目度が高まった。

「鍋島」は飲む機会が多い酒で、当連載でこれまで、20種類を取り上げている。甘旨酸っぱい味わいで濃醇、モダンタイプのフルボディー酒というイメージを持っている。今回の酒はどうか。いただいてみる。

 上立ち香は、メロンと白桃を合わせたようなニュアンスで非常にフルーティー。甘旨酸っぱい味わいが、メロン香とともに、口の中でパッと弾ける。そして、次の展開に驚愕した。味が弾けたあと、瞬時にスパッとキレて、いなくなったのだ。驚くべきキレの良さ。「鍋島」というと、濃醇でどっしりした酒、というイメージがあるが、これは違う。ファーストアタックだけは、ガツンと力強いが、むしろ軽快さがあり、すぐキレるのでくどさは無い。舌先にチリチリ微発泡を感じ、生酒ではないが、フレッシュ感にあふれる。バランスが非常によくとれ、透明感のある上品な酒。蔵の実力がよく分かるお酒だった。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、アルコール分16度、使用米 きたしずく100%、精米歩合40%、製造年月2021.01」。

 使用米の「きたしずく」は、北海道立総合研究機構中央農業試験場が2002年、「雄町」×「ほしのゆめ」の子と「吟風」を交配。選抜と育成を繰り返し品種を固定、2012年に品種登録され、2014年6月にデビューした酒造好適米。北海道生まれとしては「吟風」「彗星」などに続く新しい酒造好適米。コメの特性としては、①濃醇で甘みの強い「吟風」と淡麗辛口の「彗星」のちょうど中間に位置する香りと味わいを持つ ②雑味が少なく、柔かな酒質に仕上がる傾向にある-という。

 北海道で生まれた酒米「きたしずく」は、全国の地酒蔵で使われている。当連載で取り上げたものだけでも以下の4種類を数え、今回が5種類目となる。「【4444】瀧自慢 純米吟醸 北雫 50(三重県名張市 瀧自慢酒造)」「【4207】五十嵐 きたしずく 純米吟醸 無濾過生原酒 直汲み(埼玉県飯能市 五十嵐酒造)」「【3144】基峰鶴 純米大吟醸 北雫 生(佐賀県三養基郡基山町 基山商店)」「【2512】UMENOYADO LAB. きたしずく 生(奈良県葛城市 梅乃宿酒造)」。極めて異例のことだとおもう。

 酒名「鍋島」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「(前略)1997(平成9)年4月、目標とする酒はできたのですが、肝心の銘柄を決められないでいました。(中略)新しい銘柄は、一般公募で決めることになり、地元の佐賀新聞社様に記事(平成9年10月17日)として取り上げていただきました。(中略)寄せられた150に及ぶ候補の中から、コンセプトの『佐賀を代表する地酒を目指して』にふさわしい名前として、『鍋島』を選ばせていただきました。江戸時代、約300年にわたって佐賀藩を統治した鍋島家にちなんだもので、『鍋島』の商標使用にあたっては、財団法人鍋島報效会を通じて鍋島末裔の方に快く了承していただきました。1998(平成10)年4月、構想から三年を経て、ついに『鍋島』デビュー。(後略)」

酒蛙

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