【4584】イモリ谷 純米【大分県】

【E居酒屋にて 全8回の⑥】
E居酒屋で日本酒研究会の月例会を開いており、毎月6種類の酒を飲んでいる。しかし、月例会用の酒とは別に冷蔵庫には新たな酒が入る。E居酒屋のママは頃を見計らって連絡をくれる。「冷蔵庫のお酒の入れ替えしたので、ご都合の良いときにいらっしゃい」。ということで、連絡をもらったわたくしは、おっとり刀で駆けつけた。今回も、人並み以上の嗅覚を発揮する酒友ちーたんにテイスティングしてもらった。
「長門峡」「月桂冠」「天明」「澤屋まつもと」「鷹来屋」と飲み進め、6番目にいただいたのは「イモリ谷 純米」だった。「イモリ谷」という酒名に面食らったが、この蔵は「智恵美人」「ちえびじん」という酒名で知られる。「智恵美人」「ちえびじん」は、良質の、なかなか味わい深いお酒というイメージを持っている。当連載ではこれまでこの蔵の酒を6種類取り上げている。
この「イモリ谷」という、ぶっ飛んだ名は、ネット情報によると、この谷を上空から見ると、イモリが這っている姿に見えることに由来するとか。すごいなあ、この名が市民権を得るなんて! この谷は、コメどころで、今回のお酒は、杜氏さんがここで作ったコメで醸したものなんだそうな。これについて、瓶の裏ラベルに「イモリ谷物語」と題し、以下のように紹介している。
「うまい米の産地で名高い大分安心院のイモリ谷を訪ねた杜氏は原料の米から自らの手で育ててみたいと思いました。初夏のある日の早速の田植から黄金色に輝く稲穂を刈り取った収穫の日まで杜氏はじっくり待ちました。この米とこの蔵の地下水を出会わせれば、きっとすばらしい酒ができる! 杜氏の信念は固いものでした。さて、仕上がりは如何。丹精込めた一品には間違いございません」
ワインで言うところの「テロワール」の精神に基づく日本酒づくりだ。文中の「安心院」は、駆け込み寺の名じゃなく、安心院町という地名とのこと。さて、いただいてみる。
ちーたん「レモングラスの香り。ハーブ系のさわやかな香り。すごくすっきりとしたお酒」(【注】レモングラスとはイネ科オガルカヤ属の多年草。アジア料理およびカリブ料理でよく使用されるハーブ=Wikipediaより)
酒蛙「うん。すっきりとした酒質」
ちーたん「苦みが強い」
酒蛙「旨みがややすくなめに造っている感じ」
ちーたん「酸と苦みが出ている。ハーブ感が強い」
酒蛙「酸がいいね。軽快感がある」
瓶の裏ラベルのスペック表示は「製造年月20.9、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合65%、アルコール分15度」。
この蔵の主銘柄「智恵美人」「ちえびじん」という名がユニークだが、これについて蔵のホームページは以下のように説明している。
「『より旨く、より愛されるように』と、創業時(明治7年)より、当家の女将『智恵』(ちえ)の名にあやかり『智恵美人』と名付け140年に亘り、日本酒を製造して参りました。受け継がれた私たちは、蔵を護って頂いた女将始めご先祖に感謝し心を込めて情熱ある酒を醸す。焼酎市場の九州は大分の地で、国酒である日本酒造りに携われる事に誇りを持って酒造りに精進して参ります」