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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4544】若波 純米吟醸 TYPE-FY2 生酒(わかなみ)【福岡県】

2021.4.17 17:31
福岡県大川市 若波酒造
福岡県大川市 若波酒造

【H居酒屋にて 全5回の⑤完】

 なじみのH居酒屋の店主からショートメールが入った。「FY2(若波=福岡県)など新しいお酒が入りましたので、お越しください」。おおおっ、それなら行かねばならない。常人では考えられない嗅覚力を誇るちーたんに同席を願い、新しいお酒を味わった。

「勝駒」「寒紅梅」「播州一献」「与右衛門」と飲み進め、最後5番目にいただいたのは「若波 純米吟醸 TYPE-FY2 生酒」だった。若波酒造のお酒は、飲む機会が多く、当連載でこれまで、18種類を取り上げている。オーソドックスなお酒からエキセントリックなお酒まで酒質は幅広く、蔵元さんおよび蔵元杜氏さんの懐の深さや先進性を感じさせるラインナップを世に送り出している。

 中でも2013年の夏、「若波 純米吟醸 FY2」(当連載【1283】)を飲んだときの衝撃ったらなかった。白ワインをおもわせる酸の強さ、やんちゃさに仰天、腰を抜かしたものだった。酸味酒が大好きなわたくしとしては、心をわしづかみにされたような酒だった。あとで知ったことではあるが、FY2とは、「ふくおか夢酵母2号」の頭文字をとったもの。この酵母はリンゴ酸を生成、シャープな酸を引き出す特性があるという。FY2は、まさしく狙い通りの酒質だったのだ。

 一度飲んだだけでFY2の旨さは脳裏に強く刻まれ、以来、夏近くなればH居酒屋の店主に「FY2を入れてよ」とお願いしてきたものだった。今回のお酒は、そのFY2の生酒バージョンという。しかもFY2は夏酒として売ってきたが、その生酒は春に登場だ。興味津々でいただいてみる。

 酒蛙「おおおおっ、酸っぱい!!! フレッシュ感たっぷり。梅干しのような酸っぱさ。さわやか!!! FY2より、さらに酸っぱい。酸のアップグレードだ!!!」
 店主「す、すげぇ!!! この酸(絶句)」
 ちーたん「目が覚めた。香りさわやか!」
 店主「酸が非常に強い」
 酒蛙「これは美味しい。レモンがすこし混じる梅干し的な酸だ。甘旨みも適度に出ており、酸にやや丸みをつけている。総じて酸が突出し、味の輪郭がくっきりとした甘旨酸っぱい味わい」
 ちーたん「酸っぱくて面白い。不思議な日本酒だね」
 酒蛙「舌の両側から、酸がじゅわじゅわ入ってくる。そして、ものすごくキレが良い」
 ちーたん「うん、飲んだあと、すっきりだね」
 酒蛙「生酒だと丸い口当たりを想像するけど、これは火入れ的シャープな酸っぱさだ」
 ちーたん「ボジョレの白をまろやかにしたような感じ。日本酒のボジョレだね」
 酒蛙「このお酒は、酸にインパクトがある。おっしゃるように白ワインをおもわせる。しかもアルコール分が13%とまさにワインと同じアルコール度数。くいくい飲んで酔っ払いそうな危険な酒だ。13%でも、味に凝縮感があり、日本酒としての物足りなさは一切無い」

 わたくしたちは度肝を抜かされた。これまで、白ワイン的なやんちゃな酸味酒の代表格はFY2だとおもっていたが、生酒は、それを上回るパワフルな酸味酒だったのだから。試飲のつもりだったが、四合瓶はすぐ空いた。

 後日、酒屋さんのサイトを見てみたら、なぜ酸がパワーアップしたのか、理由がすぐ分かった。一部、白麹を使っていたからだ。日本酒を醸すとき、一般的に黄麹が使われる。一方、焼酎には白麹が使われている。この白麹を日本酒造りに使うと、クエン酸が強く出る特性があるのだ。今回のお酒は、もともとリンゴ酸が出やすい「ふくおか夢酵母2号」を使っているうえ、さらにクエン酸が強く出る白麹を使っているため、リンゴ酸とクエン酸の“ダブル酸効果”というか“ハイブリッド効果”で、通常のFY2より、酸が強く出ているのだった。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(福岡県産)米麹(福岡県産米)、精米歩合55%、酵母 ふくおか夢酵母2号、アルコール分13%、製造年月2021.02」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 酒名「若波」の由来について、蔵のホームページは「大正11年創業。蔵の傍を流れる筑紫次郎(筑後川)のように『若い波を起こせ』と銘々されました」と説明している。

酒蛙

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