×
メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4530】綿屋 特別純米 情熱 亀の尾(わたや)【宮城県】

2021.4.3 21:20
宮城県栗原市 金の井酒造
宮城県栗原市 金の井酒造

【B居酒屋にて 全7回の⑤】

 月1回のペースでB居酒屋に足を運んでいる。この店は酒の品揃えが豊富で、非常に勉強になる。なにより当連載「日本酒津々浦々」の取材になる。頻々と暖簾をくぐってもいいのだが、そうなると新規のお酒に巡り会えない。「日本酒津々浦々」は、わたくしにとって新規のお酒ばかり取り上げているので、それでは困る。したがって経験則から、酒の入れ替えのリズムに合わせるには月1回の来店、ということになる。今回は嗅覚が人並み以上に敏感な酒友・ちーたんに同席願った。

「ほしいずみ」「長陽福娘」「飛良泉」「ヤマサン正宗」と飲み進め、5番目にいただいたのは「綿屋 特別純米 情熱 亀の尾」だった。金の井酒造のお酒は飲む機会が多く、当連載でこれまで、23種類を取り上げている。バランスが良く、落ち着きのある上品なお酒、というイメージを強く持っている。“外れ”の無い蔵だ。

 落ち着きのある、大人の風格を感じさせる「綿屋」なので、今回の副酒名「情熱」にはびっくりだ。しかもパッション赤ラベルだ。戸惑いながらいただいてみる。

 ちーたん「『鬼滅の刃』の赤版のラベルだね。赤は情熱だ」
 酒蛙「たしかに市松模様のラベルだ。気づかなかったよ。さらっとした飲み口のお酒だ。キレも非常に良い」
 ちーたん「この香り、落ち着く。おいしい。情熱???」
 酒蛙「さらっとした口当たりなので、酒じたいからは情熱を感じない。なんだか違和感を覚える。これまでの『綿屋』同様、品の良さを感じる」
 ちーたん「突出したところがない。そこがいいかもね」
 酒蛙「うん、それが『綿屋』の持ち味だ。だから『綿屋』はいい」
 仲居さん「やわらかい。バランスが良いお酒」
 酒蛙「うん、たしかにやわらかくて丸みのある口当たりだ」
 仲居さん「まとまっている」
 酒蛙「たしかにそうだ」
 ちーたん「とげとげしさが無い」
 酒蛙「そうだ、そうだ。甘旨みあり、酸あり、くどくなく、中道路線ってニュアンスのお酒だ」

 神奈川県横浜市の酒販店「横浜君嶋屋」のサイトによると、この情熱シリーズは、通常の仕込み量の約半分の量で仕込み(小仕込みという)、キメ細かく丁寧な酒造りを行うのがコンセプト。つまり、大吟醸の仕込みで純米酒を醸す、という考えだ。たしかに、その心意気や熱い。情熱そのものだ。つまり、「情熱」とは造る側の熱量を具現化した言葉だったのだ。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「醸造酒米 宮城県産亀の尾100%、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、アルコール分15度、精米歩合60%、日本酒度+4.5、酸度1.9、使用酵母K-701、杜氏氏名 南部杜氏鎌田修司、製造年月20.7、28BY」。28BY(2016年7月~2017年6月の間に醸した酒、という意味)で、製造年月(たぶん蔵出し日)が2020年7月ということは、およそ3年半の間、蔵で低温貯蔵したのちに世に出した酒、という意味だ。ここでも、手間をかけた“情熱”を感じる。

 使用米の「亀の尾」はもともと主食用米で、明治時代、いまの「コシヒカリ」のように食用米として作付面積がダントツ1位の人気米だった。しかし、作りにくいことから次第に作付けが減り、そのうち幻の米になってしまった。時が流れ、現代。「『亀の尾』で醸した酒は旨い、と言われていたよね」という話が出て、それならば、「亀の尾」で酒をつくってみようではないか、となった。新潟県長岡市の久須美酒造や山形県東田川郡庄内町の鯉川酒造が、さきがけて復刻させた「亀の尾」で醸した酒を世に出し、脚光を浴びた。

 酒名「綿屋」の由来について、コトバンクは「酒名は、創業時の屋号『綿屋酒造』に由来」と説明している。創業は1915(大正4)年。

酒蛙

関連記事 一覧へ