×
メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4474】越乃景虎 名水仕込 吟醸 洞窟貯蔵酒(こしのかげとら)【新潟県】

2021.2.5 20:59
新潟県長岡市 諸橋酒造
新潟県長岡市 諸橋酒造

 休日の夕方、ふらりと近所のうなぎ屋へ。うなぎはもちろん美味しいのだが、酒がいい。定番酒はありきたりの地酒3種類ほどだが、店主の“隠し酒”が面白い。この場合の面白い、は特段意味のある言葉ではない。わたくしの興味をそそる酒が多い、ということだ。どんなルートで入れているのか興味のあるところだが、あえて聞かないことにしている。

 席につくと、店主が、いつものようにおすすめのお酒を複数抱えて持ってきた。その中から「越乃景虎 名水仕込 吟醸 洞窟貯蔵酒」を選んだ。諸橋酒造のお酒は当連載でこれまで、4種類を取り上げている。

 今回の酒は洞窟貯蔵酒を名乗っているのが特徴。蔵のホームページは、これについて「春先にご予約を頂いた酒を平均温度13℃の洞窟へ貯蔵し、ゆっくりと熟成させた後の10月にお届け致します」と説明している。完全予約制で洞窟に半年間貯蔵・熟成させているのだ。

 この洞窟は、蔵の近くに昔ながらにあるもので、瓶の裏ラベルは、以下のように説明している。

「自然が旨い! 大自然の厳しさと 大らかな時間のブレンド!
越後の山間いで、厳寒の期に全国名水百選指定の栃尾『杜々の森湧水』を仕込水に求め、良質な新潟県産米を磨き、低温でじっくりと時間をかけて旨口タイプの吟醸酒を醸しました。その酒を母なる自然の大地のふところ深く、地表下約10m地中約30mの昔ながらの横穴洞窟に永い時間静かに眠らせ、そして今、目さめました。
◎地中の洞窟に貯蔵する事を初めて試みた洞窟貯蔵酒」

 上記文章の最後の段落の「◎」は、近年、トンネル貯蔵酒など地中貯蔵を試みる蔵が複数あることから、同蔵がそのさきがけだ、とのプライドをのぞかせたアピールである。

 さて、冷酒(たぶん9~10℃)でいただいてみる。上立ち香、含み香ともほのか。香りを抑えている。やわらかながら、さっぱり、すっきりとした口当たりで、辛みがずーっと続く。キレが良い。軽めの旨み。酸は、奥にほのかに感じる。いわゆる淡麗辛口酒。特徴が全く無いのが特徴で、落ち着き感、上品感がある。辛口酒ではあるが旨みがほどほどにあり、ただ辛いだけで旨みのないドライな味わいはでないのが良い。

 ところが後日、同じ酒を自宅で飲む機会があり室温(20℃=常温)で飲んでみたところ、あまりの味の違いにびっくり仰天。いったい、この酒の味わいはどっちが本当なのだ?とアホな質問を自分に投げ掛けてはみるが、当然ながら答えは「どっちも本当」なのだ。

 さて、常温(20℃)で飲んだ感想を以下に述べてみる。冷酒のときに抑えられているとおもった香りが、華やかに広がるではないか。典型的な吟醸香がふんわりと鼻腔をくすぐる。冷酒ときに、やわらかながらさっぱり、すっきりに感じた口当たりは、やわらかく、まろやか、に変身。冷酒のときにあまり出てこなかった甘旨みが、むちむちなめらかに膨らむではないか。このため、辛みは冷酒のときより和らぎ旨口寄りになった印象だった。酸も出しゃばらないが、冷酒のときよりは顔をのぞかせる。香りを含め、さまざまな味わい要素が一気に花開く印象を受けた。わずか10℃の温度差で、こうも味が変わるものだろうか。ともあれ、冷酒のときの淡麗辛口酒から、常温になったら華やかな旨口の膨らみあるボディーに仰天してしまった。日本酒って、本当に面白い。冷酒だけ飲んで、その酒を知ったつもりになっては、ゆめゆめならない。

 瓶のラベルのスペック表示は「環境庁指定全国名水百選『杜々の森湧水』、製造年月20.04 出荷年月20.10、アルコール分15度以上16度未満、原材料名 米(国産)米麹(国産米)醸造アルコール、精米歩合50%」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

「越乃景虎」の酒名について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「当蔵は弘化4年(1847年)創業で、新潟県長岡市(旧栃尾市)で約160年酒造りを行ってきました。栃尾地域は歴史資産にも恵まれた所です。戦国武将が群雄割拠した時代に越後は輩出した英雄『上杉謙信』は、栃尾で多感な青年期を過ごし、その当時は元服名『長尾景虎』を名乗っていました。その後栃尾を発ち、家督を相続して越後を平定し、関東管領となりました。その偉業は清廉な人柄と共に現代まで語り伝えられ、栃尾には今でも『景虎』の事跡が数多く残されています。『越乃景虎』はこの地と歴史の縁によって名付けられました」

酒蛙

関連記事 一覧へ