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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4464】陸奥八仙 Mixseed Series 自社田 Hanafubuki88(むつはっせん ミクシード シリーズ)【青森県】

2021.1.26 18:28
青森県八戸市 八戸酒造
青森県八戸市 八戸酒造

【B蕎麦屋にて 全5回の④】

 山仲間のタケちゃん&ちふみん夫妻と年に2回ほどB蕎麦屋で会食をしている。今回は、タケちゃん宅の新しい家族・ロシアンブルーの仔猫と対面したあと、夫妻と一緒にB蕎麦屋へ。

「墨廼江 純米吟醸 雄町」「上喜元 翁 生詰」「屋守 純米 中取り 無調整 仕込み22号」と飲み進め、4番目にいただいたのは「陸奥八仙 Mixseed Series 自社田 Hanafubuki88」だった。八戸酒造のお酒は飲む機会が多く、当連載でこれまで、23種類を取り上げている。そのほとんどが「陸奥八仙」だ。中でも「陸奥八仙 特別純米」は飲み飽きしないのでお気に入りだ。さて、今回のお酒は、八戸酒造のお酒としては見慣れないデザインのラベル。興味津々でいただいてみる。

 上立ち香・含み香とも空前にして絶後のセメダイン(酢酸エチル)似の芳香。果実に例えるならば、柑橘的未熟バナナ的でもある。含むと、シュワシュワチリチリとガスが舌先を刺激する。甘・旨・酸は出ているが、このうち甘・旨は出過ぎることはなく、むしろ控え目。極めてさわやか、極めて淡麗旨口酒。キレも良い。もはや、日本酒ではないような味わい。あえて言うならば白ワインだ。

 わたくしが、興奮しながら上記の感想をぎゃーぎゃー言っていたら、店主が厨房から出てきて、「どれどれ」と言いながら、一口含む。そして、「俺の好みじゃない」と言い捨てた。人それぞれ違った好みがあるので、いろんな日本酒が醸されているのだ。金子みすゞではないが、みんな違ってみんないい、だ。

 瓶の裏ラベルには、「これから芽を出す『種』の様に 大いなる可能性を秘めた蔵人の酒シリーズ」と題し、以下の記事が掲載されている。そして、石橋伸也さんの顔写真。「大切に育てた自社田の酒米『華吹雪』。蔵人として米を作り、その苦労を知るほどに半分近くも削るのはもったいないという思いから88%の精米で仕込みました。濃醇な米の旨味がじんわりと感じられるお酒です。田植えから手をかけた無骨ながら正直なお米の物語です」

 これだけだと、酒名「Mixseed Series」の意味や、顔写真の意味が分からない。

 蔵のホームページは、「蔵人プロデュースのお酒」と題し、以下のように説明している。これなら分かる。4人の蔵人がそれぞれ造りたい酒を醸した結果、新しい4種類の酒が出来、その中の一つが今回の酒、というわけだ。

「この度、杜氏の駒井伸介と、蔵頭の石橋の2名が酒造技能士1級を、製造部社員の中曽根・足立・木村の3名が酒造技能士2級をそれぞれ取得しました。そこで今回、資格取得者である各人が挑戦したいテーマをそれぞれ設定し、想いのこもったお酒を皆様にお届けします。銘柄名は『Mixseed(ミクシード) 』。『混ぜる・交わる』を意味する“Mix”と、『種』を意味する“Seed”を併せた造語です。これから芽を出す種のように、大きな可能性を秘めた若い蔵人たちが力を合わせ、それぞれが表現したいお酒を造ります。発売時期は、2・3・4・5月の各月での発売を予定しております。蔵人たちの新しい試みにどうぞご期待ください」

 ホームページでは、石橋さんのコメントを以下のように掲載している。このお酒を造った意図がよく分かる。つまり、酒米を自ら生産すると、コメを多く削るのはもったいない、と気づき、できるだけ低精白で醸してみよう、と造ったのがこのお酒、というわけだ。

「地元八戸市出身。1980年7月16日(39歳)。介護福祉士の資格と弓道2段を保有しています。地元の豊作祈願祭である『えんぶり』と三社大祭での『虎舞』に毎年参加しています。酒造りに入って今年で9年です。今は蔵作業全般と、保有する自社田に関する業務全般を担当しています。 
 そんな私が関わっている自社田は、八戸でも数少ない里山の自然と原風景がそのまま残されている蟹沢(がんじゃ)地区にあります。そこでは青森県の酒米『華吹雪』を作付けしております。蔵人として米作り作業を通じ、苦労や自然の恩恵を感じながら育てた自社田の酒米。そんなお米を半分も削ってしまうなんてもったいないという想いがありました。また昔からお米作りには八十八の手間がかかると言われていることもあり、今回は精米歩合88%でお酒を仕込みます。苗から育て、低温でじっくりとお米を溶かしながら仕込んだ自社田米の魅力を表現できればと思っています。
 この度の酒造技能士の資格取得に満足せず、さらなる飛躍の年になるよう新たな資格取得に意欲的に挑戦していく一年にして参ります。そんな私が米作りからお酒の仕込みまで、気持ちを込めて造ったお酒をお手に取っていただけましたら幸いです」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料 米 米麹、使用米 青森県産華吹雪100%、アルコール分16度、製造年月 2020年5月」。使用米の「華吹雪」は青森県農業試験場が1974年、母「おくほまれ」(祖母が「山田錦)と父「ふ系103号」(祖母が「ササニシキ」)を交配。育成と選抜を繰り返し開発、1988年に品種登録された酒造好適米だ。裏ラべルには書かれていないが、この酒の精米歩合は蔵のホームページによると88%という低精白。ご飯(白米)の精米歩合は92~93%だから、白米に近い精米歩合だ。

 酒名「陸奥八仙」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「中国に古くから伝わる八人の仙人(酔八仙)にまつわる故事があります。それには、酒仙たちの様々な逸話や世俗の有り様など、興味深い酒の楽しみ方や味わい方が語られています。『陸奥八仙』は、この故事から引用し、飲む人が酒仙の境地で酒を楽しんで頂きたいとの思いを込めて名付けた」

酒蛙

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