【4460】蜻蛉 特別純米 黒とんぼ 無濾過生原酒(とんぼ)【福岡県】

せんだって、なじみのH居酒屋で、「蜻蛉 特別純米 ひやおろし 赤とんぼ」をいただいた。これがべらぼうに美味しく、仲間内で、冷酒だ、燗酒だ、と言いながら飲んだら、あっという間に空になってしまった。酔っぱらったわたくしは、「赤とんぼ」の次は「黒とんぼ」だああ! と店主におねだり。しかし、「黒とんぼ」は無濾過生原酒で春の出荷。だから年末のいま、なかなか手に入らなかったが、蔵地元の酒店からやっと手に入れたとの情報。さっそく、酒友ちーたんと飲みに出かけた。
若波酒造のお酒は飲む機会が多く、当連載でこれまで、17種類を取り上げている。「蜻蛉シリーズ」は4種類を取り上げている。すなわち、春の「黒とんぼ」(特別純米 無濾過生原酒)、夏の「青とんぼ」(純米 にごり)、秋の「赤とんぼ」(特別純米 ひやおろし」、そしてレギュラーの「特別純米」の4種類だ。
今回のお酒は当連載【1603】と同じ「黒とんぼ」。しかし、その「黒とんぼ」は6年半前に飲んだもので、おそらく味が進化しているとおもうわれる。さらにラベルデザインが変わったので、あらためてじっくり飲んでみることにした。まずは冷酒でいただいてみる。H居酒屋の冷蔵庫は、他の居酒屋より、やや高めの温度設定をしている。
ちーたん「グラスに注ぐと香り立つ」
店主「濃厚だけど飲みやすい」
ちーたん「軽い。あとからちょっと渋みがくる」
店主「苦みもある。キレが良い。嫌味の無い酒だ」
ちーたん「そうだね」
酒蛙「甘旨酸っぱい。やわらかで、やさしい口当たり。たしかに濃く感じる」
ちーたん「渋みがあるから、果物のプルーンをおもわせる。美味しい」
酒蛙「果実感がある。モダンタイプのお酒だ」
ちーたん「それも、じゅわっとくる果実感だね」
店主「渋みがアクセントになっている。嫌味が無い酒だ」
酒蛙「非常にフレッシュであり、しかも丸みを感じる酒だ。この酒、美味しいよぉ~!!!」
店主「何の文句も無い美味しさです」
ちーたん「無条件に旨い」
酒蛙「甘みがよく出ており、若干、ガスのチリチリ感がある」
ちーたん「香りが良い。この香りが気に入った」
次に、ちろりで燗酒をつける。温度は40℃。ぬる燗だ。これが、超べらぼうに旨かったのだ。
ちーたん「香りが甘くなった」
店主「あ、旨い、旨い。とろみあり、甘みと酸がいい」
ちーたん「冷酒と全然違う。燗酒の方がいいかも。酸が強く出ている」
酒蛙「超ジューシーな酸。大きな塊のジューシーさが、口の中で炸裂するイメージ。甘旨みも同時に炸裂する。こ、こ、これは旨い。余韻は軽い苦み」
ちーたん「うん。苦みがある酒だが、この苦さが非常に好ましい」
酒蛙「ぬる燗の方が、ジューシー感の膨らみがはるかにはるかに大きい」
ちーたん「ホットワインみたいだ」
酒蛙「いやはや旨い。これは驚いた」
ちーたん「美味しいね」
酒蛙「なんてったって、酸がチャーミングだ」
ちーたん「そう。かわいい感じだね。押しつけがましくない味わいがいい。きょう、H居酒屋に来て良かった。日本酒って奥が深い。日本人で良かった」
酒蛙「ジューシーでフルーティーな香味は、やっぱりアンズみたいだね。アンズをおもわせる」
ちーたん「プルーンだね。苦み・渋みもプルーンのそれだ」(アンズもプルーンも似た者同士だから、2人とも、同じような意味合いのことを言っている)
酒蛙「果実感がむんむん。冷酒のときよりも、果実感が数段大きくふくらむ)
ちーたん「南国の果実のようだね」
酒蛙「冷酒のときとぬる燗とで、これほど劇的に変わる酒も珍しい」
店主「燗冷ましも旨い」
ちーたん「満足感のある酒だ。冷酒でも楽しいし、燗酒だとさらに楽しい。1本のお酒で、すごく楽しめる」
酒蛙「お酒って、冷酒と燗酒の2通りの飲み方をして、やっとその酒を理解できる。ずっとそうおもってきたけど、今回の酒で、それが間違っていないことを実感した。いやはや美味しい酒だ」
今回飲んだ「黒とんぼ」は、6年半前に飲んだ「黒とんぼ」(当連載【1603】)と名は同じだが、飲んだ印象では、大きく進化を遂げ、もはや別物になっている、とおもった。なぜそう感じたのか、というと【1603】を読み返してみると、けっこう淡々と書いており、今回のような興奮・感動が、行間にあまり見られなかったからだ。
だが、「黒とんぼ」が大きく進化している、という表現はある意味間違っている、とおもう。正しくは、この6年半の間に、若波酒造が大きく進化、飛躍を遂げた、というべきだろう。味の底上げに尽力された蔵の方々努力に敬意を表する。それほど美味しいお酒だった。気が付いたら、1升の半分があっという間に無くなっていた。
ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%、アルコール分16%、製造年月2020.2」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。超べらぼうに美味しい酒だったゆえ、非開示は残念だ。
この蔵の主銘柄名・蔵名「若波」の由来について、蔵のホームページは「大正11年創業。蔵の傍を流れる筑紫次郎(筑後川)のように『若い波を起こせ』と銘々されました」と説明している。
また、サイド銘柄「蜻蛉」の由来について、福岡市の酒販店・友添本店のサイトは「銘柄『蜻蛉(とんぼ)』の由来には、その前にしか進まない特性と古来より神様に仕えたとされる蜻蛉(とんぼ)にあやかり、縁起を担いで名付けられました」と説明している。