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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4437】中乗さん 風越青嵐 低精白純米(なかのりさん、かざこしせいらん)【長野県】

2020.12.30 16:45
長野県木曽郡木曽町 中善酒造店
長野県木曽郡木曽町 中善酒造店

【H居酒屋にて 全2回の②完】

 なじみのH居酒屋の店主から、ショートメールが入った。「2種類、新しい酒が入りましたよ」。おおっ、それは素晴らしい。さっそく、酒友Yを誘い、H居酒屋の破れかけている暖簾をくぐった。

 まずいただいたのは、「ふわふわ。 島仕込み 純米吟醸」。次に飲んだのは、「中乗りさん 風越青嵐 低精白純米」だった。この蔵のお酒は、当連載でこれまで「中乗さん 特別純米」(当連載【2237】)1種類を取り上げている。酒名はもちろん、「♪木曽のな~ぁ 中乗りさん…」(民謡・木曽節)の「なかのりさん」だ。が、H居酒屋の店主は木曽節を知らなかったため「ちゅうじょうさん」と言っていた。さて、いただいてみる。

 酒蛙、Y「セメダイン(酢酸エチル的芳香)がいる」
 Y 「これは旨い」
 酒蛙「さっぱりとした口当たり。精米歩合80%が信じられないほどの、きれいなお酒。キレが良い」
 店主「軽快です」
 酒蛙「口が慣れてきたら、旨みと酸が出てきた。中盤からは辛み」
 Y 「これ、いい。マジ旨い」

 それから1週間後、セカンドオピニオンを得るため、酒友ちーたんと飲んでみた。

 ちーたん「奥ゆかしい華やかさ」
 店主「素晴らしい表現だ。俺の彼女と同じだ」
 ちーたん、酒蛙「わーわーわー、ブーブーブー。いいね、いいね」
 酒蛙「酸が良く出ている。味の中心は旨みと酸。さっぱりとした軽快感のある口当たりだが、やや骨太な味わい」
 ちーたん「バナナっぽい。南国の果物。時々柿」
 酒蛙「辛みと苦みも感じる」
 ちーたん「そうだね。時々柿ってのは、渋みのことだよ」
 酒蛙「たしかに苦みとともに渋みも感じる。香りはけっこう抑えられているとおもう。奥ゆかしいという表現、分かる」
 ちーたん「(テイスティングは)面白い。仕事に結びつくかな」

 瓶の裏ラベルは、この酒を「あまり削らないお米で造ったお酒。琥珀色で豊富な酸と旨味が特徴です」と紹介している。また、蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。「口当たりはふくよかですが、時間経過とともに様々な味わいを感じられます。お燗をつけることで幅広くお楽しみいただけます」。たしかに燗上がりする酒だとおもった。

 裏ラベルのスペック表示は「自家栽培米、木曽郡上松町産ひとごこち全量使用、原材料名 米(長野県産)米こうじ(長野県産米)、精米歩合80%、アルコール分15度、杜氏 山口孝、酒米生産者 中善酒造店 南俊三、製造年月2020年2月」

 使用米の「ひとごこち」は、長野県農事試験場が1987年、母『白妙錦』と父『信交444号』を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定、1997年に品種登録された酒造好適米。

「中乗りさん」というと、すぐに「♪木曽のな~ぁ 中乗りさん…」という民謡を頭に浮かべる。しかし、「中乗りさん」はどういう意味なのか、さっぱり分からない。ということで、ウィキペディアで調べてみた。すると、この民謡「木曽節(きそぶし)」には“物語”があった。興味深いので、その部分を以下に転載する。

「木曽節は木曽地域に近世から伝わる民謡で、木曽の材木を河川に流して運ぶ『川流し』をモチーフに、木曽川や周囲の山々と人情を歌い上げている。
 歌詞中の『中乗りさん』は諸説あるが、材木を筏に組んで木曽川を下り運搬する人たちで、先頭を『舳乗り』(へのり)、後ろを『艫乗り』(とものり)、真ん中を『中乗り』といったというのが一般的である。(略)『木曽の御岳さん』は木曽地域の最高峰(標高3,067メートル)である大きな山容の御嶽山である。 
 木曽節と木曽踊りはいまでは日本全国に知られているが、これには大正から昭和戦前にかけて福島町(のち木曽福島町を経て現・木曽町)の町長を務めた伊東淳(いとう すなお、1876年 - 1942年)の尽力が大きかったといわれている。伊東は木曽の旧・福島村生まれで、地元自治体吏員から後に福島町長に就任、12年間在職した。観光客誘致・地元振興の手段として早くから木曽節に着目、自ら歌い、踊りも指導して、木曽節と木曽踊りを広く紹介した。『木曽のなかのりさん』(1917年)という冊子も発行、1925年には地元酒蔵・中善酒造店に薦めて酒の銘柄を『中乗さん』と改めさせるなどあらゆるPRに努め、『なかのりさん町長』と呼ばれた。
 昭和時代に入ると、木曽節はラジオやレコード等の新メディアで一般に普及するに至り、全国的な知名度を得た。木曽福島駅前には功績を称えて伊東の銅像が立っている」

 もう一つの酒名「風越青嵐」は、木曽八景のひとつ「風越の晴嵐(あるいは青嵐)」が由来。風越山(1,698.5 m)山麓では酪農が営まれ、山の斜面一面に牧草地が広がっていた。その美しい緑の草山に爽快な夏風が吹き越していく風景が「風越の晴嵐」として親しまれている。蔵では「ここの田園風景を、次世代に残していきたい…。そんな思いで酒米作りに挑戦しています。未来に繋がる地域づくりを目指しています。

酒蛙

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