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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4405】窓乃梅×天乃屋 歌舞伎揚に合う日本酒(まどのうめ)【佐賀県】

2020.11.23 21:20
佐賀県佐賀市 窓乃梅酒造
佐賀県佐賀市 窓乃梅酒造

【E居酒屋にて 全6回の⑥完】

 近々E居酒屋で、わたくし主催の中規模の飲み会を企画している。女将さんとその打ち合わせをするため、一人で暖簾をくぐる。話は簡単に終わり、あとは飲むだけ。

「庭のうぐいす」「東洋美人」「カットよっちゃん×春鶯囀」「久保田」「「高清水」と飲み進め、最後6番目にいただいたのは「窓乃梅×天乃屋 歌舞伎揚に合う日本酒」だった。「窓乃梅」は、当連載でこれまで、2種類を取り上げている。今回の酒は、この日3番目に飲んだ「カットよっちゃん×春鶯囀」同様、「お菓子の居酒屋」シリーズの一つ。

 発売のいきさつについて、2019年10月22日付佐賀新聞のウェブサイトは、以下のように伝えている。

「佐賀市の窓乃梅酒造(古賀釀治社長)は、米菓製造販売の天乃屋(東京)のロングセラーせんべい『歌舞伎揚』とコラボし、『窓乃梅 歌舞伎揚に合う日本酒』を販売している。歌舞伎揚に合わせたラベルデザインで酒の味も調整した。
 酒類コーディネーター会社SBS(東京)が手掛ける『お菓子の居酒屋』シリーズ。しょうゆベースの甘く塩みの効いた揚げせんべいに合うよう、全国数十の蔵の中から甘みのある佐賀県産酒に絞り、窓乃梅酒造にたどり着いたという。
 同酒造の中で一番甘く、菓子に合わせアルコール度数を14%に落とした。古賀社長は『さらっと油分を洗い流す口当たりの軟らかい日本酒で、ぜひ一緒に味わってほしい』と話す。(中略)
 『お菓子の居酒屋』シリーズは6種類。他の商品は次の通り。
 『春鶯囀(しゅんのうてん) カットよっちゃん専用日本酒』(山梨県・萬屋醸造店)▽『八鶴 都こんぶに合う日本酒』(青森県・八戸酒類)▽『銀嶺月山 でん六豆に合う日本酒』(山形県・月山酒造)▽『近江ねこ正宗×すぐるビッグカツ』(滋賀県・近江酒造)▽『チロルチョコミルクに合う日本酒』(福岡県・いそのさわ)」  

 また、「歌舞伎揚」の製造元・天乃屋のサイトは、「歌舞伎揚」について、以下のように紹介している。「1960年発売から皆様に愛されてきたロングセラー商品。香ばしく揚げた歌舞伎の家紋入り生地に、天乃屋秘伝の甘口しょうゆタレで味付けした風味豊かな揚げせんべい」

 瓶のラベルは、この酒をユーモア混じりに以下のように紹介している。「歌舞伎揚味のお酒ではありません。歌舞伎揚と一緒に飲むと、より美味しくお楽しみいただけます」

 さて、いただいてみる。まず、「歌舞伎揚」と合わせず、酒単独で飲んでみる。うおっ! 昭和レトロ的クラシカル香味が強い。味わいは、すっきり軽めで甘みが感じられるが、旨み、酸、辛みはすくなめ。つまり、あまりパッとしない。しかし、合わせると、あ~ら不思議不思議! 「歌舞伎揚」によって、酒の味が引き出され、バランスが良い酒となる。酸もけっこう出てくる。クラシカル香味もいなくなる。これはいい。居合わせたカウンター客たちも「おおおっ、酒の味がこんなに変わるとはびっくりだあああ!」と口々に驚いていた。

 瓶のスペック表示は「アルコール分14度、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)醸造アルコール、糖類、酸味料」。すなわち、このお酒は普通酒だったのだ。

 ユニークな酒名「窓乃梅」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「当蔵は元禄元年に佐賀鍋島藩より藩の余剰米の利用法として酒造りを命じられた初代古賀六右衛門により『寒菊』の銘で創業致しました。ではどうして現在の『窓乃梅』という銘に変わったのでしょうか。実は次のようなエピソードがあったのです。
 時は安政七年(1860年)三月。春とはいえ山峡に寒気が満ちて、野面を渡る風も冷たく肌を刺す夕暮であった。と、酒倉の横にいまを盛りと咲き誇っていた白梅の花が、さっと吹き過ぎた一陣の風にすくい上げられ空に舞った。つぎの瞬間、それらの花吹雪は酒倉の窓に吸われるように消えて行った。あっという間の出来ごとである。
 仕込みの桶は、時ならぬ落花にまたたく間に雪をかぶったようになった。驚いたのは杜氏である、桶にかけ寄ったものの何ら手のほどこしようもなく、呆然と突然変異に見舞われた桶の前で手をこまねくだけであった。しかし、その杜氏をはじめ全員の不安のまなざしを尻目に一つの奇跡が起こったのである。梅の花びらの浮かぶ桶の中から、かってない芳醇な香りが漂よいはじめたではないか。
 驚き、喜んだ杜氏はこの旨を告げに八代、文左衛門のもとにかけこんだ。やがて、桶から汲み上げた酒を口に含んだ文左衛門の眼が異様にかがやきだした。まさにこの時奇跡が起った。
 文左衛門はちょうど昨年秋より西の宮に酒造技術の研究に出かけ帰ったばかりである。西の宮でもこのような話は聞いたことがない。この現実は何かの天の恵みと解釈する以外にないのである。彼は早速この酒を時の藩主、鍋島直正公に献上した。腹にしみわたるまろやかな味。酌めどもつきない芳醇な香り。公は喜び、筆を取るとさらさらと一筆その場でしたためた。

 年々にさかえさかえて名さえ世に香りみちたる窓乃梅が香

 これを直臣、古川松根氏がさらに掛軸に仕立て上げ、文左衛門に贈った。現在、古賀家の家宝となっている掛軸がそれである。『窓乃梅」』の名称がここから出たものである事は言うまでもない」

※ 写真の手前の、皿に乗っているものは「歌舞伎揚」。

酒蛙

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