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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4333】裏死神 加茂福 純米大吟醸 完熟 瓶燗(うらしにがみ)【島根県】

2020.9.10 11:35
島根県邑智郡邑南町 加茂福酒造
島根県邑智郡邑南町 加茂福酒造

【E居酒屋にて 全9回の③】

 なじみのE居酒屋のバイトNさんからカラオケの勝負を挑まれた(E居酒屋にはカラオケ装置がある)。精密採点(コンマ3桁まで採点される)で勝負しようというわけだ。Nさんは、なかなかの自信家だ。課題曲は「危険なふたり」(沢田研二)と「最後もやっぱり君」(Kis-My-Ft2)の2曲。わたくしはこの1カ月、決戦に備えスナックやボックスなどで、この2曲の練習をしてきた。そしてこの日、さあ勝負だ! とE居酒屋に乗り込んだ。ところがNさんは所用ということで不在。なんということだ。

「古伊万里」「裏百楽門」と飲み進め、3番目にいただいたのは「裏死神 加茂福 純米大吟醸 完熟 瓶燗」だった。わたくしがこの酒を選んだら、ママが「『裏死神』は、単に『死神』の裏じゃなくて、『死神』とはまったく造り方が違うんですよ~。人気のお酒ですよ~」と教えてくれた。

 以前、当連載で「死神」(当連載【658】)を取り上げたことがある。その酒は純米仕込みのお酒だった。今回は純米大吟醸。そもそも造りが違う。一般的な「裏」は、正規の酒の“責め”(最後に圧力を加え搾る部分)である場合が多い。杉浦酒店(東京都葛飾区)のサイトによると、「裏死神」は、「この酒は6年連続金賞受賞蔵の造る正統派純米大吟醸のせめ酒になります」とのことだった。“責め”の部分を使った酒ではあるが、もとが純米ではなく、純米大吟醸だったのだ。E居酒屋のママが言ったことは、こういう意味だったのだ。

 さて、いただいてみる。さらっとした口当たりできれいな酸が立つ。これが第一印象だった。香りは抑え気味。中盤から余韻にかけては辛み。旨みは適度。余韻が長く押味あり、表現不能な複雑味が長く続く。昭和レトロ的な、いかにも日本酒、といった残り方だとおもった。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料 米(国産米)米麹(国産米使用)、使用原料米 五百万石100%、精米歩合50%以下、アルコール分17度、使用酵母901号、製造年月2019.12」。

 蔵のホームページでは、“表”の「死神」についての紹介で、「日本一縁起の悪い名前の酒! とんでもない名前のお酒ですね! でも結構癖になる旨口の純米酒です。要、御祓い? 色は枯葉色、サエも良くない。しかし一度飲めばはまる酒です。さあ貴殿も取り憑かれてみませんか?」と、露悪っぽくあおっている。これもひとつの商法か。なかなか考えたものだ。しかしその一方で、ホームページは「平成11年『特選街』全国日本酒コンテスト純米酒部門9位入賞酒」と紹介、単なるキワモノではないことを訴えている。

 ところで、なぜ「死神」という名をつけたのか、気になるところだ。蔵のホームページの「死神はこちら」の入り口をクリックすると、「死神」のページが、幽霊の効果音?とともに開き、ページの下に「お笑いを一席… 『死神』」とある。ページをスクロールすると、落語の演題「死神」の“台本”がすべて掲載されている。その内容は、ここでは省略するが、落語好きの蔵元さんが、この演題を酒名に使ったとおもわれる。

 主銘柄「加茂福」の由来について、蔵のホームページは「酒名 は、地元の賀茂神社の神酒酒屋として創業したことに由来」と説明している。

酒蛙

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