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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4324】聖 中取り 若水 純米吟醸 生酒(ひじり)【群馬県】

2020.9.1 20:55
群馬県渋川市 聖酒造
群馬県渋川市 聖酒造

【B居酒屋にて 全6回の④】

 月1回のペースでB居酒屋に足を運んでいる。この店は酒の品揃えが豊富で、非常に勉強になる。なにより当連載「日本酒津々浦々」の取材になる。頻々と暖簾をくぐってもいいのだが、そうなると新規のお酒に巡り会えない。「日本酒津々浦々」は、わたくしにとって新規のお酒ばかり取り上げているので、それでは困る。したがって経験則から、酒の入れ替えのリズムに合わせるには月1回の来店、ということになる。

「鳳凰美田」「風の森」「御前酒」と飲み進め、4番目にいただいたのは「聖 中取り 若水 純米吟醸 生酒」だった。「聖」は当連載でこれまで、5種類を取り上げている。しっかりした味わいのお酒、という印象を持っている。さて、いただいてみる。

 甘旨酸っぱい味わい。余韻は苦み。舌先にすこしピリピリ炭酸ガス感あり。いかにも生酒だ。ひとことで言うと、サイダー的エキス感が凝縮した味わいのお酒だ。セメダイン香(酢酸エチル)の要素もある。サイダー的要素があり、キレが良いため、さわやか感がある。「聖」でさわやかさを感じたのは初めてだ。「聖」にはどっしり骨太感があるとおもってきたから。くどくなく、実に旨い。いくらでも飲めそうなお酒だ。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「アルコール度数15度以上16度未満、原材料 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 群馬県若水100%、精米歩合50%、令和壱酒造年度、製造年月02.05」。

 使用米の「若水」は、愛知県農業総合試験場作物研究所が1972年、母「あ系酒101」(「あ系酒101」の母は「玉栄」、父は「露葉風」)と父「五百万石」を交配させ育成した品種で1985年に品種登録された酒米だ。

 気になるのは、瓶のラベルに達筆で歌が詠まれていること。古文書系はからっきし駄目なわたくしなので、蔵のホームページに解説文が載っていないかなあ、と探してみたら、あった。「聖の酒」と題し、以下の記事を掲載している。

「『酒の名を 聖とおほせし古の 大き聖の言のよろしさ』と、万葉の歌人である大伴旅人が詠うように、聖(ひじり)とは良く澄んだ酒を意味します。上州赤城山西南麓の自然水と蛍の舞う緑豊かな自然環境の中で酒造りを始め、七代160余年の長きにわたりその伝統と技を継承してきました」

 これが酒名「聖」の由来となったのだ。ラベルにデザインされた歌は「酒の名を 聖とおほせし古の 大き聖の言のよろしさ」だったが、答えを知ってもわたくしはラベルの文字を読めない。嗚呼。

 この歌についてサイト「万葉集入門」(解説:黒路よしひろ)は、分かりやすく解説している。以下に転載する。

「酒の名を聖(ひじり)と負(おほ)せし古(いにしへ)の大(おほ)き聖の言(こと)のよろしさ
酒のことを聖と呼んだ昔の大聖人の言葉のよさよ。
大伴旅人(おほとものたびと)の酒を誉める歌として詠んだ十三首のうちの一首。これは中国三国志の時代、魏(き)の国の曹操(そうそう)が禁酒令を出したとき、徐獏(じょばく)が禁酒令を破り清酒を『聖』、濁り酒を『賢者』と呼んで飲んだ中国の故事をもとにしたものです。徐獏らは聖人ではありませんが、旅人はあえて酔人を聖人と評して詠みました。
『酒を聖(ひじり)と呼んだ大陸の昔の人の言葉のすばらしさよ』
昔の偉い人もこのように酒を愛していたのだとの自分自身の境遇に重ね合わせて故事を読む気持ちは、旅人の時代から千年以上も経った現在のわれわれとも共通する感情ですよね」

酒蛙

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