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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4323】御前酒 雄町三部作 PROGRESSIVE(ごぜんしゅ)【岡山県】

2020.8.31 21:53
岡山県真庭市 辻本店
岡山県真庭市 辻本店

【B居酒屋にて 全6回の③】

 月1回のペースでB居酒屋に足を運んでいる。この店は酒の品揃えが豊富で、非常に勉強になる。なにより当連載「日本酒津々浦々」の取材になる。頻々と暖簾をくぐってもいいのだが、そうなると新規のお酒に巡り会えない。「日本酒津々浦々」は、わたくしにとって新規のお酒ばかり取り上げているので、それでは困る。したがって経験則から、酒の入れ替えのリズムに合わせるには月1回の来店、ということになる。

「鳳凰美田」「風の森」と飲み進め、3番目にいただいたのは「御前酒 雄町三部作 PROGRESSIVE」だった。この蔵のお酒は当連載でこれまで、6種類を取り上げており、うち「御前酒」は5種類だ。さて、今回のお酒をいただいてみる。

「甘いっ!」。思わず口に出る。これが第一印象だ。甘みは飴を煮詰めたような味わい。完熟南国フルーツのような華やかな香味。余韻は苦みと辛みがすこし。まろやか、ふくよかであり、グラマラスなどっしり濃厚な甘み。そして、前述の完熟南国フルーツ的ジューシーさ。後述するが、それにしても、これが等外米で醸したお酒とは! びっくり仰天、驚かされる。蔵の技術が高い証左だろう。

 瓶の裏ラベルは「雄町の未来は、御前酒が醸す」と題し、この酒を造った際のコンセプトを以下のように掲載している。

「使用米として初めてとなる、50%まで磨いた等外雄町で試験醸造しました。等級の高い米は裏付けされた品質の良い米ですが、等級が低いからといってその逆であるとは言えません。将来的には普通酒に使うことも視野に入れ、等外米の使用によって持続可能な地元の農業を支えることができると信じています」

 この考えにわたくしは大いに共感するところだ。一等米だけで酒造りをすれば、等外米(規格外米)は余る。米菓など加工用に回ると、酒造用よりはるかに安値で引き取られ、稲作農家にとって気の毒なことになる。だから、等外米も酒造に使用しよう、という考えには大賛成だ。もっとも、現在の規定では、等外米で醸したお酒は普通酒扱いとなり、蔵元さんにとってはコスト面で難しい。しかし、売れれば、これらの心配は一気に解消する。積極的に等外米を使用する、この蔵を注視していきたい。

 以上から、この酒は、普通酒扱いなのだ。だから、特定名称の区分の表示はない。しかし精米歩合は50%なので、スペック的には純米大吟醸級だ。

 ラベルでは「雄町三部作」をうたっており、今回「PROGRESSIVE」ラベルによると、このほか「MODERN」「TRADITIONAL」がある。蔵のホームページはこの3つを以下のように説明している。

■【MODERN】~雄町による現代的アプローチ~
 これからの雄町のスタンダードを念頭に、口に含めば理解する、官能的で直感的な美味しさを表現しました。満ち溢れて生きた味わい、無垢のままを詰め込んだ純米無濾過生原酒です。新酒だからこその伸びしろの余裕、確かな可能性も感じていただけるはずです。
■【TRADITIONAL】~雄町による伝統的アプローチ~
 滋味深さを感じるクラシックな造りであるからこそ、ゆっくりと時を重ねたことによって余韻のある旨味を纏います。時間が育てた柔らかさと優しさ、辿り着いた味わいをご堪能ください。2016年のヴィンテージ菩提もと純米酒です
■【PROGRESSIVE】~雄町による挑戦と研鑽~
 使用米として初めてとなる、50%まで磨いた等外雄町で試験醸造しました。等級の高い米は裏付けされた品質の良い米ですが、等級が低いからといってその逆であるとは言えません。将来的には普通酒に使うことも視野に入れ、等外米の使用によって持続可能な地元の農業を支えることができると信じています

 裏ラベルのスペック表示は「原料米 岡山県産雄町米100%使用、原材料名 米 米こうじ(原料米はすべて岡山県産)、精米歩合50%、アルコール分16度、杜氏 辻麻衣子(備中杜氏)、製造年月20.03」。

 この蔵の主銘柄「御前酒」の由来について、蔵のホームページは「文化元年(1804年)、現在地に酒造業を創業。当時は美作勝山藩御用達の献上酒として『御膳酒』の銘(現在の銘柄の由来)を受け、一般には『萬悦』の銘柄で親しまれていた」と説明している。

酒蛙

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