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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4284】新政 JA秋田なまはげ 別誂 生酛木桶純米 生成2019(あらまさ)【秋田県】

2020.8.2 15:16
秋田県秋田市 新政酒造
秋田県秋田市 新政酒造

【B居酒屋にて 全8回の④】

 コロナ感染防止のための緊急事態宣言が解除された当地では、居酒屋が徐々に営業を再開している。なじみのB居酒屋も5月7日から営業を再開した。さっそく暖簾をくぐったが、まだ客は戻っていないようで、店長やスタッフは浮かない顔だ。しかし、居酒屋できちんと飲むのは1カ月ぶりというわたくしは、大張り切りで8種類の酒を飲んだ。

「獅子吼」「東一」「萩の鶴」と飲み進め、4番目にいただいたのは「新政 JA秋田なまはげ 別誂 生酛木桶純米 生成2019」だった。「新政」は飲む機会が非常に多く、当連載でこれまで、24種類を取り上げている。同蔵発祥の6号酵母だけを使用していることで知られ、高水準の酒を醸し続けている。

 今回の瓶のラベルを見て「秋田なまはげ農協」という名の農協が存在するとは驚いた。さて、秋田なまはげ農協産の「秋田酒こまち」を使って醸したお酒をいただいてみる。使用酵母はもちろん6号酵母だ。

 甘旨酸っぱい。これが第一印象。とくに酸が立っており、軽快感もあり、ややジューシー、まったく飲み飽きしない。麹っぽい、そして菌類っぽい、そして木造校舎っぽい、いわゆる生酛っぽい複雑な香りに、セメダイン(酢酸エチル)っぽい香りが混じる。わたくしが好きな香りだ。生酛仕込みではあるが、ガツンとくる重いタイプではなく、軽め飲み口で、やさしい、モダンタイプの味わいのお酒だった。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「アルコール分14度(原酒)、原材料名 米(秋田県産)米麹(秋田県産米)、原料米名 あきた酒こまち100%使用(2019年収穫 秋田県産)、精米歩合40%(麹米 掛米ともに40%)、使用酵母 木桶、発酵容器 木桶、醸造年度 令和1酒造年度(2019-2020)、杜氏名 植松誠人、製造年月2020.03(瓶詰時期)、出荷年月2020.03」

 使用米の「秋田酒こまち」は秋田県農業試験場が1992年、母「秋系酒251」(その母は「五百万石」)と父「秋系酒306」(その父は「華吹雪」)を交配。育成と選抜を繰り返し開発、2004年に品種登録された酒造好適米だ。

 瓶の裏ラベルには「当蔵の方針」と題し、以下の口上が掲載されている。「秋田県産の酒米を、生酛純米造りにより六号酵母にて醸す」「当蔵は素材の魅力を最大限に表現するため、生酛造り・純米造りに徹しております。しようしても表示する義務がない以下の添加物…酸類(醸造用乳酸など)・無機塩類(硝酸カリウムなど)・酵素剤(アミラーゼなど)を用いることはありません」。後者の口上については、新政酒造に倣い、同様の口上をラベルに掲載する蔵が増えてきた。

 新政酒造は自蔵発祥の協会6号酵母に並々ならぬプライドを持っている。蔵のホームページは6号酵母について、詳しく説明しているので、以下に転載する。

「五代目卯兵衛の採用した近代的酒造技法によって、自ずと選択された蔵付き酵母。これこそが、きょうかい六号酵母(新政酵母)です。この酵母の特徴は、中~低温での安定した増殖力と発酵力。また一般的な蔵付き酵母と比較して、驚くほど酒の酸度が低く、まろやかな味になる点。そして、なんといっても上品で馥郁たる香りです。
 新政の酒が、新酒鑑評会主席を2年連続受賞するなど、その名声が頂点に達するに至った頃、五代目卯兵衛と花岡正庸氏はこの新酵母を研究の対象にすべきとの意見で一致しました。この頃、日本醸造協会は、失敗がつきものだった酒造りを改善しようと、高い醸造適正を有する酵母を選抜・培養し、全国の酒蔵に配布する取り組みを行っていたのです。
 そして昭和5年、花岡氏の弟子であった酒造技師、小穴富司雄氏が、新政のもろみからこの酵母を分離し培養することに成功。 後に、日本醸造協会より『きょうかい六号酵母』の名で発売されることとなったのです。発売直後から、この六号酵母は、全国の醸造家に画期的な一大転機をもたらす酵母となりました。
 以前の酵母とは比較にならない安定した醸造特性、また近代的な酒質が評価され、一躍、日本の醸造方法は、蔵付き酵母に頼る自然発生的なものから、醸造協会が頒布する培養酵母添加方式へと様変わりしたのです。速醸酒母と協会酵母という、現在の一般的な酒造方法は、この時、確立したといえます。
 このようなわけで、六号酵母は、 現在頒布されている協会酵母の中で一番歴史の古い酵母となっています」

 新政蔵から発祥した6号酵母は、いってみれば、近代日本酒のおおもとを築いた立役者だったのだ。蔵のアイデンティティーである6号酵母にこだわって酒造りを行おう、という蔵の姿勢に敬意を払わずにはいられない。

 酒名および蔵名「新政」の由来について、日本の名酒事典は以下のように説明している。

「嘉永5年(1852)創業。酒名は明治維新新政府がその施政の大綱とした〝新政厚徳〟からとったもので、『新政』と『厚徳』に分けて商標登録されている。『新政』は、はじめ『しんせい』を読んでいたが、後に『あらまさ』と訓読するようになった」

酒蛙

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