メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4265】大山 十水 特別純米 無濾過生原酒 極(おおやま とみず)【山形県】

2020.7.13 10:10
山形県鶴岡市 加藤嘉八郎酒造
山形県鶴岡市 加藤嘉八郎酒造

 休日の夕方、ふらりと近所のうなぎ屋へ。うなぎはもちろん美味しいのだが、酒がいい。定番酒はありきたりの地酒3種類ほどだが、店主の“隠し酒”が面白い。この場合の面白い、は特段意味のある言葉ではない。わたくしの興味をそそる酒が多い、ということだ。どんなルートで入れているのか興味のあるところだが、あえて聞かないことにしている。

 席につくと、店主が、いつものようにおすすめのお酒を抱えて持ってきた。今回は「大山 十水 特別純米 無濾過生原酒 極」だった。「大山」は、当連載でこれまで、2種類を取り上げている。さて、久しぶりに「大山」を飲んでみる。


 甘い。旨みもある。濃醇。かなり濃醇。中盤から余韻にかけては辛み。ふくよかな口当たりでボリューム感があり、力強い。インパクト十分だ。アルコール感を強く感じたので、瓶の裏ラベルを見たら、アルコール分が18度だった。香りは抑えられており、吟醸香がほのか。酸は少なく、わずかにジューシーさが感じられる。口が慣れ、温度がすこし上がってくると、酸がすこし出てきて、甘旨酸っぱい味わいに変化していく。しかし、個人的にはもうすこし酸がほしいところだ。

 瓶の裏ラベルは以下のように、「十水」という言葉の説明をするとともに、この酒を紹介している。

「しぼりたての『十水』の原酒を速やかに生のまま無濾過無調整にて瓶に閉じ込め、予約受注生産の極み限定品として発売させて頂くことになりました。本来、蔵の槽口でしか味わえない『よりジューシーで濃醇な旨味のある“特別な十水”を楽しんで頂きたい』との思いから生まれたお酒です。『十水』とは、米や水の量を計算する際に『升・斗・石(米一石はおよそ150kg』などの“枡”を使用していた江戸時代後期に誕生した仕込配合のことで、『米十石』に『水十石』を使用する『十割水仕込み(十水)』の通称です。時は流れ、現在は米の磨きは進み、米の溶け過ぎなどの影響を最小限にするために『米十石』に『水十二石』以上の使用が主流となっております」

 つまり、今回の酒は、江戸時代後期に生まれた「米十石」「水十石」(米1:水1)の割合で醸したお酒だったのだ。道理で極めて濃醇な酒だったわけだ。

 裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%、アルコール分18度、製造年月20.2」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 酒名「大山」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「蔵のある大山の町は天領(幕府直轄地)として江戸時代初期から本格的な酒造りが始まり、昔は数十軒の酒蔵が軒を連ねていました。広島の西条、神戸の灘と共に酒どころとして並び称せられ、『東北の小灘』とも言われました。弊社はこの大山の地に明治5年に創業。今では数軒の酒蔵を残すのみとなり、昔の面影は薄れてしまっていますが、この地を代表する酒として『大山』と命名されました」

「大山」は蔵の所在地の地名だったのだ。ちなみに、蔵の住所は山形県鶴岡市大山三丁目1-38。

酒蛙

関連記事 一覧へ