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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4251】六歌仙 五段仕込 純米(ろっかせん)【山形県】

2020.6.26 22:51
山形県東根市 六歌仙
山形県東根市 六歌仙

【B居酒屋にて 全4回の④完】

 当連載「日本酒津々浦々」は、原則として同じ酒を2回載せることはしていない。ごく例外的に2回載せたものが2種類ほどある程度だ。このため常日ごろ、飲んだことがない酒を求めている。このB居酒屋は、わたくしが飲んだことがない酒が冷蔵庫に入っていることが多いので、必然的にしばしば“取材”に訪れることになる。

「晴雲」「美保」「星泉」と飲み進め、最後4番目にいただいたのは「六歌仙 五段仕込 純米」だった。「六歌仙」のお酒は当連載でこれまで、3種類を取り上げており、このうち2種類は「山法師」だ。「山法師」は、しっかりした味わいのお酒というイメージを持っている。さて、今回のお酒。ラベルを見て「ぬぬぬ、なんだコレハ」といささかとまどった。ラベルに「五段仕込」と書かれているではないか。普通は三段仕込。わたくしは四段仕込までは飲んだことがあるが、五段は初めて。段仕込については後述するとして、まずはいただいてみる。

 まず甘みが来る。第一印象は甘みだった。やわらかで、まろやかで、やさしい口当たり。酸はすくなく、ほのかに感じられる。濃醇でまったりとした、平らな調子で、ややジューシー。べたつき感が一切ない上品な甘みが特長で、和三盆をおもわせる甘みだ。

 瓶のラベルはこの酒を以下のように紹介している。わざと片仮名で書かれている。実に読みづらい。

「此ノ酒ハ傳統技法ト新シイ醸造技術ノ巧ミナ調和カラ生マレタ秘伝ノ銘酒デ御座居マス。厳選シタ粒選リノ酒造好適米ト米麹デ醸シ上ゲ、一滴一滴丹念 時間ト手間暇ヲカケテ味一筋ニ研鑽ヲ重ネテ来マシタ。此ノ酒ニハ自然ノ恵ミト人ノ真心トガ融ケ合ヒ馥郁タル香リト豊カナ味ハ酒ノ芸術品トモ謂フベキ出来映ヘデ皆様方ニ十分御満足頂ケマス。是非御賞味下サイ。 敬白」

 瓶のラベルのスペック表示は「アルコール分15度、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合70%、製造年月20.02」にとどまり、こだわって造っている割には使用米の品種名が非開示で残念だ。

 蔵のホームページはこの酒を以下のように大々的にPRしている。

「『ワイングラスでおいしい日本酒アワード 2020』のメイン部門において、当蔵の『五段仕込み純米』が最高金賞を受賞いたしました。このアワードであは、259社から897点のエントリー中、最高金賞24点、金賞242点が選考されました」
「江戸時代の酒造りの文献を紐解き、現代風にアレンジした純米酒です。燗酒コンテストで最高金賞を受賞いたしました」

 しかし、この酒は「五段仕込」がポイントだとおもうのだが、ホームページでは「五段仕込」について、一切触れていない(わたくしが探せないだけかもしれないが)。こだわりぶりは分かるが、説明責任を果たしていないようにおもえる。

 酒の仕込は通常「三段仕込」だ。しかし、場合によっては段数を増やす。これについて、「沢の鶴」(兵庫県神戸市)の日本酒情報サイト「酒みづき」は、以下のように説明している。

「仕込みの際に全量を一気に発酵させると、酒母の中の酸が薄くなり、酵母菌の増殖が間に合わなくなります。酒母は酸性を保てなくなり、雑菌が繁殖してしまうのです。そのため、酵母の様子を見ながら数回に分けて加え、ゆっくりと発酵させることが重要です。3回に分けて発酵させる仕込み方が一般的で、これを『三段仕込み』と呼びます」
「日本酒造りにおいては『三段仕込み』がもっとも一般的ですが、四段仕込み、五段、六段、八段、さらには十段仕込みといった仕込み方もあります。実は、仕込みの回数が多いほど、甘い日本酒になるのです。
 四段仕込み以上の場合は、単純に仕込みの回数を増やすということではなく、三段仕込みが終わった後に蒸米を加えます。四段仕込みなら三段仕込みに蒸米を1回投入、十段仕込みなら三段仕込みに蒸米を7回に分けて投入といった具合です。
 三段仕込みが終わった段階で、糖をアルコールに変える酵母は自分が生み出したアルコールに死滅させられています。蒸米のデンプンから変化した糖は、糖分のまま日本酒に残るため、仕込みの回数が多ければ多いほど、甘みのある日本酒になるというわけです」

 すなわち、四段仕込、五段仕込…は、お酒の甘みを出すテクニックの一つ。今回のお酒が甘く感じたのは、お酒の中に、アルコール化しなかった糖分が残っているからだったのだ。

 蔵名「六歌仙」の由来について、蔵のホームページは「人々の心にやさしく響き渡る和歌を詠んだ平安の歌人『六歌人』のように、人々の心にやさしい味わいを届けたい思いを込めて誕生した日本酒です」と説明している。

酒蛙

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