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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4244】いなば鶴 強力 五割搗き 純米吟醸 しぼりたて 無濾過生原酒(ごうりき)【鳥取県】

2020.6.15 11:36
鳥取県鳥取市 中川酒造
鳥取県鳥取市 中川酒造

【Z料理店にて 全6回の④】

 Z料理店の店主はMLB、NPB、社会人野球、大学野球、高校野球に詳しく、わたくしは彼と野球の話をするのが好きだ。店主も、わたくしと野球の話をするのが好きなようで、いつも、店主の定位置の向かいのカウンター席を用意してくれる。今回もその場所に「reserve」の置物が。

 店に入るなり、店主が「蛙さんの飲んだことのない酒を入れときましたよ」。冷蔵庫を見る。おおおっ、本当だ。わたくしが飲んだことがない酒が6種類鎮座している。うれしいではないか。店主の好意にこたえ、全部飲もうではないか。

「羽前白梅」「釜屋新八」「麒麟山」と飲み進め、4番目にいただいたのは「いなば鶴 強力 五割搗き 純米吟醸 しぼりたて 無濾過生原酒」だった。「いなば鶴」は当連載でこれまで、「いなば鶴 純米大吟醸 強力」(当連載【2612】)と「いなば鶴 純米 生酛 強力 無濾過生原酒」(当連載【2615】)を取り上げている。

「強力」は復刻米である。「いなば鶴 純米大吟醸 強力」の箱に入っていたしおりは、「強力」について、以下のように説明している。

「『強力』は大正時代に鳥取県立農業試験場により在来種から選抜育成され、特産酒米として一時期には六千余町歩も生産されていました。強力米の歴史は古く、『山田錦』の祖先と言われている優良酒米『雄町』の更なるルーツであるという説もあります。昭和20年代の食糧難の時代、反当たりの収穫量の少なさ、尋常でない背丈、大粒の為倒伏の危険といった理由から、特産酒米『強力』は姿を消しました。(中略)
 鳥取大学農学部で、永年、少量だけ育種、保存されていた種籾から、やっと、わずかではありましたが、単一品種醸造ができる量まで収穫することができました。低タンパクな米質を重視するため、低収穫量を覚悟の上で減農薬・低窒素肥料などを心がけ、見事、酒米『強力』は復活しました。その強力米と清らかな水を使った地酒がここに蘇りました」

 また、蔵のホームページは、以下の復刻物語を掲載している。

「折しも世間では地酒を見直す機運が盛り上がりかけていた昭和の終わり。鳥取の老舗造り酒屋、中川酒造の中川盛雄氏は『真の地酒とは、その土地にしかない米と水でつくられたもの。そんな本来の地酒を造りたい』という思いにとらわれていた。
 日本酒は米から造られる酒だが、その米自体に地域色を持ったものは非常に少ない。有名な山田錦は兵庫県が本場だが、現在は西日本各地で生産されている。酒米にとっては、心白の大きさというものが精米歩合を決める大きな要素となっている。『山田錦』と同じ線状心白を持ち、ここ鳥取県を発祥の地とする『強力』という酒米が在ったことを知った中川氏は、その復活を願い奔走した。心意気を持った賛同者を得、平成2年2月、幻の酒米『強力』の命と、男たちの夢を宿した清酒、純米大吟醸『いなば鶴 強力』が蘇った」

 その「強力」で醸したお酒をいただいてみる。「力強い」。これが第一印象だった。旨みと酸が出て骨太。骨太なんだけどシャープ感がある。エキス感・ミネラル感があり、すこしセメダイン香(酢酸エチル)。とにかく味が強い。そして、実に美味しい。いつも手元に置き、ゆるゆると飲み続けたい酒だ。なんとなく、生酛酒をおもわせるナニカがある。ぬる燗もまた良さそうな酒だとおもった。

 瓶のラベルに書かれている「かつて、鳥取にしかない酒米があった」が誇らしげだ。また、「『強力をはぐくむ会』認定純粋種子使用」とも書かれている。これは非常に大切なことだ。各農家が自家生産の種子を使い続けると、やがて本来のものとは違う種子になってしまう危険性があるからだ。種子を守るしっかりした組織があるのは喜ばしいことだ。

 瓶のラベルのスペック表示は「原材料名 米(鳥取県産)米こうじ(鳥取県産米)、原料米 全量 強力、精米歩合50%、アルコール分15度、製造年月2.2」。蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。「『酒蔵でしか飲めなかった搾ったままの純米吟醸原酒 強力を飲んでみたい』という御要望にお応えして実現した限定の無濾過生原酒です」

 この蔵の主銘柄は「福寿海」。その由来と「いなば鶴」について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「文政11(1828)年創業、鳥取県東部では 最も歴史のある蔵元です。『福寿海』は、おめでたい謡曲『枕慈童』に由来し、美酒による不老長寿を願って命名しました。また、平成元年より、地酒の原点に立ち戻り、鳥取らしさに更にこだわった『いなば鶴』を育てています。ともに、アゴの刺し身、岩ガキなど、四季を通じ て郷土料理に調和した銘酒として親しまれています」

 また、「いなば鶴」の「いなば」は「因幡」のこと。「因幡」についてコトバンクは「旧国名の一。鳥取県東部にあたる。古くは『稲葉』『稲羽』とも書いた」と説明している。

酒蛙

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