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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4235】大倉 源流 菊酛二段仕込純米 生(おおくら)【奈良県】

2020.5.29 22:01
奈良県香芝市 大倉本家
奈良県香芝市 大倉本家

【S居酒屋にて 全12回の⑧】

 仕事で知り合った飲み仲間TとA、そしてわたくしと元同僚のW。この4人で飲み会を開いた。場所は銀座のS居酒屋。キャパが大きく、置いている酒の種類も非常に多い。フロアマネージャーのような方は酒にめっぽう詳しい。酒の勉強をするのにもってこいの店だ。お酒はフロアマネージャー的なSさんにすべてお任せだ。

「ゆきおんな」「初亀」「天明」「魔斬」「御慶事」「楯野川」「真稜 至」と飲み進め、8番目にいただいたのは、「大倉 源流 菊酛二段仕込純米 生」だった。大倉本家のお酒は当連載でこれまで、6種類を取り上げている。いずれも、旨みを伴う酸が強い酒、という好印象を持っている。

 蔵のホームページは、自蔵について「明治29年(1896年) 大倉勝治商店として創業。以来、吟醸酒には『速醸酒母』も用いますが、それ以外は普通酒に至るまで、すべて山廃酒母で仕込んでいます」と説明している。「大倉」に酸を感じてきたのは、山廃由来の酸だったのだ。しかし、一貫して山廃仕込みを続けてきたなんて、真似のできることではない。すさまじいことだ。

 グラスにお酒を注ぐと色がついている。無濾過をおもわせるような色合いだ。ではいただいてみる。

 酒蛙「おおおっ、梅干し的な酸っぱさだ。激しく酸っぱい。つばが多量に出るほど酸っぱい」
 A 「おおおっ、強烈!!! こんな日本酒あるんだあああ!!!」
 W 「すんげぇ! チーズの香りだああ!」
 T 「これは、甘酸っぱいチーズだ!」
 酒蛙「たしかにチーズのような香りだ」
 A 「これ、旨いすか???」
 酒蛙「旨い、旨い、旨い。美味しい、美味しい、美味しい。梅干しからアンズになりかけている味わいのお酒だ」
 A 「たしかに、これ、アンズ系ですよ」
 酒蛙「この酒は、酸が命。酸の存在感が強烈にあり、酸が全体を猛烈に支配している。言葉が幼稚極まりないが、そんなイメージだ。しかし、酸に隠れて甘みもこっそり主張している。これが面白い。普通であれば、威張るほどの甘みだが、酸がそれ以上に威張っているので、甘みがしゅんとしている」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、アルコール分17度以上18度未満、精米歩合70%、製造年月01-11」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 ただ、蔵のホームページは銘柄「大倉」のコンセプトについて、以下のように説明している。「自家栽培の『ヒノヒカリ』をはじめとする多品種のお米を、蔵伝承の『山廃仕込み』をベースとして、それぞれの特徴を活かした、個性豊かな味わいのある酒に醸し上げられるよう努めております。インパクトの強さゆえに、新酒の段階では正直呑み辛さを感じるものもあるが、時を経て深まる味わいには、きっとご満足頂けるものと存じます」

 これだけだと、今回のお酒の使用米が「ヒノヒカリ」かどうかは、分からない。この蔵は、ずいぶんこだわっているようなので、使用米の品種名の開示にもこだわっていただきたいものだ。

 ちなみに「ヒノヒカリ」は宮崎県総合農業試験場作物部育種科が1979年、母「黄金晴」と父「コシヒカリ」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定。1989年に命名、1990年に種苗法登録された主食用米。人気品種のひとつで、デビュー以来、品種別作付面積では常に上位につけている。

 瓶の裏ラベルには「コンセプト ワーカーズ セレクション」と題し、以下の文章を掲載している。

「我々はいつから、お酒を『頭で飲む』ようになってしまったのでしょう。本来のお酒の楽しみ方は、その土地の風土や造り手の哲学が1本のボトルに表現されたお酒を、それぞれの飲み手が自らの『感性』でもって楽しむことが一番だと考えます。コンセプト・ワーカーズ・セレクションは、このような『感性に訴えるモノづくり』を一番に開発された商品たちです」

 全国の18酒蔵がこれに参加している。「大倉」もその一つで、今回の酒は、このセレクションの商品の一つ。セレクションの商品の裏ラベルには必ず、この口上が掲載されている。

 そして、コンセプト・ワーカーズのサイトは、この酒の「リリースのお知らせ」を以下のようにアップしている。

「『最高に面白い酒ができた』飲んだ瞬間にそう思った。究極の酒とは何か?極めていくにつれ、出品酒のようにどの蔵元のお酒も味が似通っていくようなことはしたくない。真逆を貫こう。産卵のために海から川へさかのぼるサケやマスのように源流を目指して。大倉さんが昔の文献をたどってみると『菊もと』という言葉があった。現代のような冷蔵設備のない時代に、菊の花が咲く暖かい時期でも、酒を腐らすことなく造る方法を先代の方々はいろいろと考えていたようだ。それを現代の大倉の造りに合わせてアレンジしてみたのが、この二段仕込みの純米酒。いろんな人に試してもらい、その感想が面白かった。香りを嗅いだ瞬間!みんな怪訝そうな顔をする。たしかに、ブルーチーズを思わす強烈な香りだ。良く言えば、はちみつや貴腐ワインに似た香りがする。しかし飲んだ瞬間にその香りは消え、和柑橘のような爽やかな香りと白ワインを思わす強烈な酸味に、みなさん驚きの表情を隠せない。どんな料理と合うのだろうか?世の中に1つぐらいこんなお酒があっても良いと思う」

 また、地酒大好きドットコム(大阪府寝屋川市の通販酒店)は、この酒を以下のように紹介している。

「個性の極み『菊もと二段仕込』! 蔵元曰く、昔の文献を遡ると、ハッキリとは理解できないのですが『菊もと』という言葉が出てくるそうです。『菊もと』とは、菊の花が咲く時期に行う『水もと』の造りである、生米と蒸米を水に浸け乳酸菌を繁殖させた水『そやし水』を使用した酒造りを指します。ブルーチーズ、はちみつ、貴腐ワインを思わす立ち香がします。口に含むと一変!金柑やはっさくのような和柑橘の香りがします。トロリとした口当たりに、後からくる猛烈な酸味は白ワイン以上のインパクトがあります」

酒蛙

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