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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4216】若波 純米吟醸 雄町 生酒(わかなみ)【福岡県】

2020.4.27 17:47
福岡県大川市 若波酒造
福岡県大川市 若波酒造

 わたくしは、オマチスト(雄町酒が好きな人)である。雄町酒のどこが好きか、と問われると、ひとことで言えないから言わない。ただ、山田錦酒はおおむね水準以上の出来栄えになるが、雄町酒は蔵によって優劣が極端に出る。造り手にとって、難しいコメなんだろうなあ、と想像がつく。雄町米とはどんなコメなのか。ウィキペディアの記事を以下の転載する。

「1859年(安政6年)、備前国上道郡高島村雄町(現在の岡山市中区雄町)の岸本甚造が伯耆大山参拝の帰路で珍しい品種の米を発見した。さっそく二穂を譲り受け雄町に持ち帰って栽培し、1866年(慶應2年)にこの新種に『二本草』と名付けた。 その後、雄町に良い酒米があるとのうわさが広まり、分けて欲しいという希望者が殺到した。岡山県南部をはじめ当地一帯で栽培されるようになり、米の名前もいつしか雄町の名をとり『雄町米」と呼ばれるようになった。

 大粒で心白が大きく軟質で、昭和初期には品評会で上位入賞するには雄町米で醸した吟醸酒でなければ不可能とまで言われた。しかし、丈が1.8mと他品種に比べて高いため台風に弱く、病虫害にも弱かったため、栽培に手間がかかり難しいため次第に生産量が減少。雄町を改良した品種である山田錦に取って代わられた。しかしながら山田錦とは違う香りと味わいを持っている。

 昭和40年代には栽培面積がわずか6haに落ち込むなど絶滅の危機を迎えたが、岡山県の酒造メーカーを中心にしたグループが栽培を復活させ、雄町を使用した清酒が再び生産されるようになった。これらの清酒が評価を受け、作付面積も増加傾向にある。

 全国で栽培されているが、9割は岡山県産である。特に、岡山市、岡山市瀬戸(旧瀬戸町)、赤磐市赤坂町地区産のものが有名である。 雄町は優秀な酒造好適米として各地で交配種として使用され、山田錦や五百万石などの優良品種の親として重宝された。現存する酒造好適米の約2/3の品種は雄町の系統を引き継いでいる」

 この雄町米に若波酒造が初挑戦するという。以下は蔵元杜氏さんのFacebookに投稿した文章である(3回に分けて投稿したものを1本に編集した)。

「このお酒は、今年、若波酒造が創業以来初めて挑戦した酒米『雄町』の記念すべき第一作目です。雄町と言えば『オマチスト』という言葉があるくらい、愛飲家の多い酒米ですね。ずっと『若波さん雄町で造らないんですか?』との多くのお声を頂いておりました。福岡の酒蔵である若波酒造。造るのであれば『福岡産』雄町にこだわりたいと、密かに心に決めておりました。しかし、とても作付けの難しい雄町を作って下さる農家さんには出会えません。ずっと。ずっと。探し続けておりました。 
 そして… 出会えたのです。たくさんの人のおかげで、やっと、やっと出会えたのです。奇跡の酒米・福岡産 雄町。しかも! 福岡の中でも、蔵が位置する『筑後』で作られた雄町。そう。国内初『筑後雄町』のお酒、若波酒造にて誕生です。
 あなただったらこの筑後雄町。想い入れも一入な筑後雄町。何色の若波ラベルにしますか? 悩みました。とても、とても悩みました。実はこの筑後雄町。昨年の仕込み計画時、蔵の中では2020年夏のデビューを夢見ておりました。5色に輝く若波ラベルで…。
 しかし。今、できることを。お客様にとって、蔵人にとって、一滴一滴 搾れゆくお酒にとって。今できる最善のことを。もう他には考えられませんでした。日はまた昇る。明けない夜はない。がんばろう! の想いを込めて。若波 日の丸ラベル、再びです。
 たくさんの不安に押し潰れそうな中、一滴一滴搾れゆくこのお酒たちが教えてくれました。今だ!今しかない! 今、最高の状態で。お米から漲る(みなぎる)力をそのままに。国内初の『筑後雄町』。どうぞ、そのポテンシャルをまずは『生』でお楽しみ下さい。(中略)
 そして、決めました。『筑後雄町』の仕込本数はタンク1本。半分は生で4月に出荷。残りの半分は火入れをして大切に貯蔵しておきます。今回、どうしてもお楽しみ頂くことができないお客様も。飲食店様も特約店様も。半分は、『その時』のために大切に貯蔵しておきます(後略)」

 熱いおもいがビンビン伝わってくる。オマチストのわたくしとしては、飲みたい、飲まなければならない、飲む、という「飲む三段活用」(うそ)で、大阪の「かどや酒店」に予約して購入した。以下は、自宅でいただいたときのテイスティングメモだ。
  
 上立ち香はほのか。含み香はマスカット。それにバナナとセメダイン(酢酸エチル)が少し混じる。口に含み、「おおおおっ!」と思わず声に出る。甘旨酸っぱい、とくに酸がチャーミングで、超極めてジューシー。果実ジュースを飲んでいるような味わいだったからだ。声を出さずにはいられない味。しかも、さっぱり、すっきりした、きれい感のある口当たりで、フレッシュ感抜群。全く飲み飽きせず、いくらでも飲めそうな酒質だった。

 若波酒造のお酒は、ほっこりやさしい気持ちになるものが多く、わたくしの好きな蔵の一つ。近年、「山田錦」に挑戦、その出来は素晴らしく、大きなステップアップを果たした。したがって、この蔵の注目株「若波 純米吟醸 山田錦 火入」と、つい比べたくなる。甘旨酸っぱい味わいはほぼ同じとして、酒の厚み・味の膨らみ・ふくよかさは、山田錦火入の方がある。さっぱり・すっきり・シャープさは雄町生の方。山田錦、雄町それぞれの個性が、素直な形で出ている、とおもった。どちらを選ぶかは好みの問題。わたくしは、甲乙つけ難し、だ。本当は2種類を並べてテイスティングすればいいのだが、「山田錦」は記憶に頼った。致し方ないことだ。

 しかし、2合くらい飲んで、わたくしの心が落ち着いてきたら、そして、口が慣れてきたら、上品な甘みがけっこう出てきた。雄町的な甘みだ。が、甘みが出てきても、キレが良い。くどくない甘みは素晴らしい。そして、次第に分厚くて濃醇なお酒になっていった。

 おっと、このまま飲んでいると4合を飲んでしまいそうだ。ここは、心を鬼にして、打ち止め。明日以降に残しておこう。こんな美味しいお酒をあっという間に飲みきってしまうと、もったいないから。この日、この後は麦焼酎「いいちこ」のロックを飲み続けた。翌日、4合瓶が空になったのは言うまでもない。

 酒名「若波」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。「大正11年創業。蔵の傍を流れる筑紫次郎(筑後川)のように『若い波を起こせ』と銘々されました」。ホームぺージのトップページに書かれている言葉である。

酒蛙

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