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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4200】土田 菩提酛×山廃酛(つちだ ぼだいもと やまはいもと)【群馬県】

2020.3.30 17:09
群馬県利根郡川場村 土田酒造
群馬県利根郡川場村 土田酒造

【日本酒研究会月例会 全4回の③】

 足掛け14年目に入った超長寿飲み会「日本酒研究会」(会場はM居酒屋に固定している)。大層な会名だが、単なる飲み会。異業種間交流にもかかわらず、1回も欠かさず、こんなに長い間月例会を続けるとは、やはりみなさん、酒が好きだからだろう。

「まんさくの花」「加茂川」に続いて3番目にいただいたのは「土田 菩提酛×山廃酛」だった。「土田」は当連載でこれまで、2種類を取り上げている。今回の「菩提酛×山廃酛」にはびっくりだ。菩提酛で醸した酒は、今西酒造(奈良県桜井市)などのお酒でたまに見られるが、山廃酛と絡めてのお酒は初めて見た。 

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。「【室町時代の製法『菩提酛』の土田流現代版】古の製法菩提酛に山廃酛をかけ合わせて酒母をたて造る独自製法。培養酵母、人工的な乳酸を使用せず、微生物達と対話するかのように醸した自然派の酒。深甚なる日本酒文化、素晴らしき伝統の技術に感謝」。むろん、これで分かる人はほとんどいない。以下に、もうすこし詳しく説明する。これとても、ほとんどの人は分からないだろうが、関心のある人は、さらにネットなどで深く調べていただきたい。

 そもそも「酛」とは酒母のこと。すなわち“酒のもと”である。

 菩提酛は、奈良県の菩提山正暦寺で1440年代に造られた、といわれている。一回仕込み(現代は三段仕込みが一般的)で酒造りをするため、酒母造りイコール酒造りである。清酒造りは、麹による糖化と、酵母によるアルコール生成を同時に行う、という世界で例をみない並行複発酵という技術で行われているが、この技術が室町時代に生まれていたとは驚きである。

 菩提酛づくりの具体的な製法は、まず使用米の1割を御飯に炊き、それを水に浸した残りの9割の生米の中に埋める。この御飯から溶け出した養分によって乳酸菌を呼び込み、増殖させ、この乳酸菌が造り出した乳酸を大量に含んだ『そやし水』を仕込水として使用することによって、強酸性の環境をつくり、雑菌の繁殖を抑える、というもの。天然の乳酸菌だけでなく、天然の酵母菌も取り込む自然醸造法である。したがって、酵母や乳酸は無添加である。

 山廃酛は、自然界の乳酸菌を取り込み育成する方法で、蒸し米をすりつぶし糖化を早める作業(生酛)を省略し、麹の酵素で米を溶かす方法。蒸し米をすりつぶす「山卸し作業」を廃止するから縮めて「山廃」。すりつぶさなくても同様の効果があることが1909(明治42)年に発見された。

 さて、「菩提酛×山廃酛」とあるが、両酛をどのように組み合わせるのかが分からない。これについて、群馬の前橋市の地酒店「高橋与商店」のウェブサイトは以下のように説明している。「菩提酛は山廃酛を造るよりも高い温度の環境のため乳酸菌や酵母を育てやすい反面、酒造りに不要な菌まで育ちやすいので、温度が低く過酷な環境の山廃酛に菩提酛を掛け合わせることで蔵付き酵母を増やし醸造しています」

 さて、いただいてみる。

 酒蛙「おおおっ、酸っぱい!」
 H 「そうだな。本当に酸っぱい」
 SI「ワインをおもわせる。フランス人が好みそう。これ、アリだな」
 酒蛙「香り穏やか。すぱっとキレる。キレがいい」
 SI「たしかに」
 Y 「この酒、ずーっと飲める」
 K 「私はちょっと・・・2合は飲めない」
 酒蛙「飲み飽きしない。時間をかければ1升は飲める酒だ。抜群の食中酒だ」
 SI「コクのある白ワインのような酒だ」
 酒蛙「同感。旨みがたっぷりある。菩提酛や山廃酛ならではの、表現不能な複雑で深い旨みだ。すこし熟成感あり」
 K 「しっかり濃い味だ」
 酒蛙「この酒、うめぇ~!!!」
 M 「これ、アリだよ」
 酒蛙「いくらでも飲める。燗酒はすごいだろうな。時間的に今日はできないけど」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合 麹米70% 掛米70%、麹歩合22%、種麹 酒母麹/白夜 掛麹/白夜、粕歩合34%、アルコール分16%(原酒)、ラベルに表記のある原材料以外不使用(酵素剤・発酵補助剤不使用)、平成30酒造年度醸造(2018-2019)」にどどまり、こだわりまくっているのに使用米の品種名が非開示なのは残念だ。蔵のホームページは使用米を「飯米:(群馬県産・新潟県産)」と記している。

 また特定名称の区分表示が無いのも残念だ。ナニガシカの理由があって表示していないものとおもわれるが、表示をしない理由を裏ラベルの載せていただければ、消費者として助かる。表示スペックから類推すると、純米酒とおおわれる。

 蔵のホームページには「菩提酛×山廃酛はこれで最後」と題し、興味深い以下の文が掲載されている。「こんなにも人気商品なのに、なぜ終了なのか。それは、菩提酛の菌を呼び寄せる力が強すぎて、他のタンクにも影響を及ぼす恐れがあるからです。菩提酛専用蔵ができたら、また造りたいですね」

酒蛙

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