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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4189】澤屋まつもと 守破離 五百万石(さわや しゅはり)【京都府】

2020.3.20 21:54
京都府京都市伏見区 松本酒造
京都府京都市伏見区 松本酒造

【Z料理店にて 全5回の④】

 近所のZ料理店の店主から電話がかかってきた。「酒屋を変えました。今までに無い酒が入っていますよ」。ここの店主は、わたくしが飲んだことがないであろう酒を取り寄せてくれるので、その好意にこたえ2カ月に1~2回のペースで暖簾をくぐることにしている。しかし、ネタが尽きたようで、酒屋を変えた、ということらしい。

 すなわちこれ、営業トーク。飲みに来い、ということだ。素直なわたくしは、すぐ暖簾をくぐった。店主はMLB、NPB、社会人野球、大学野球、高校野球に詳しく、わたくしは彼と野球の話をするのが好きだ。店主も、わたくしと野球の話をするのが好きなようで、いつも、店主の定位置の向かいのカウンター席を用意してくれる。今回もその場所に「reserve」の置物が。

「寒菊」「川中島 幻舞」「風の森」と飲み進め、4番目にいただいてのは「澤屋まつもと 守破離 五百万石」だった。「澤屋まつもと」は当連載でこれまで、9種類を取り上げている。太くはないが、しっかりした味わいの酒、というイメージを持っている。今回のお酒はどうか。

 舌先をチリチリと微発泡が刺激する。わたくしの好きな柑橘系の香りがほのか。旨みは適度だが、辛みが立っているので、口当たりにシャープ感がある。辛みとともに酸がさわやかに良く出ているので、芯がしっかりあるような酒におもえる。飲み飽きしないお酒である。

 瓶の裏ラベルに、「“原料に勝る技術なし”〈私たちが五百万石を日本酒に醸す理由〉」と題し、以下の文を掲載している。

「昔から日本酒は技術で作るという常識がありました。しかし技術だけでは表現できない領域があることをこの米から学びました。その瞬間から『守破離』の酒造りが始まりました。そして今『農業から見つめ直す山田錦の醸造』へのチャレンジへと繫がっています。富山県南砺(Nanto)産五百万石は私たちの原点でありベースです」

 裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、原料米 五百万石100%、アルコール分15度、製造年月(瓶詰年月)19.02、出荷年月19.09」

 気になるのは、特定名称の区分表示がされていないことと、精米歩合が非開示なこと。食品成分表示が細かく開示されている時代にあって、消費者のために、特定名称の区分と精米歩合は公開すべきだ、と強く訴えたい。

 酒名「澤屋まつもと」の由来について、静岡県田方郡函南町の酒屋さん丸屋酒店のサイトは「酒名の酒は古い暖簾『澤屋』と名字の「松本」に由来します」と説明している。

 酒名にある「守破離」の意味について、コトバンクは、以下のように説明している。

「剣道や茶道などで、修業における段階を示したもの。『守』は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。『破』は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。『離』は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階」

 ネットでは、これをかみくだいて、以下のように説明している。「『守』とは、伝統を守ること。『破』とは、新しい感性でその伝統を破ること。『離』とは、守と破の両方を大切にして、新しい価値を創造すること」

 しかし、これでも隔靴搔痒、イマイチ腑に落ちない。「澤屋まつもと」における「守破離」の説明は、酒販店「五本木ますもと」(東京)のブログが一番分かりやすい。なんといっても、実名を挙げて説明しているのだから。「五本木ますもと」のブログを以下に貼り付ける。

「『澤屋まつもと』の松本日出彦杜氏は、愛知県名古屋市の『醸し人九平次』の萬乗醸造で酒造りの修行を積んだ経験があり、『醸し人九平次』の佐藤彰洋杜氏とは師匠と弟子の関係にあたります。その後、日出彦さんは実家である松本酒造に戻り、自らの蔵の伝統を守る酒造りを行う一方、萬乗醸造で学んだこれまでの『澤屋まつもと』にはない酒造りに挑戦。両者の酒造りを知る日出彦さんにしか造ることが出来ない『澤屋まつもと』でも『醸し人九平次』でもない新しいお酒がこの『守破離』というお酒です」

酒蛙

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