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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4179】悦凱陣 丸尾神力 純米 無ろ過生 情熱(よろこびがいじん)【香川県】

2020.3.13 22:30
香川県仲多度郡琴平町 丸尾本店
香川県仲多度郡琴平町 丸尾本店

【B居酒屋にて 全5回の②】

 当連載「日本酒津々浦々」は、原則として同じ酒を2回載せることはしていない。ごく例外的に2回載せたものが2種類ほどある程度だ。このため常日ごろ、飲んだことがない酒を求めている。このB居酒屋は、わたくしが飲んだことがない酒が冷蔵庫に入っていることが多いので、必然的にしばしば“取材”に訪れることになる。

 トップバッターとして「山の井 50 あさひ 純米大吟醸」をいただき、2番目に飲んだのは「悦凱陣 丸尾神力 純米 無ろ過生 情熱」だった。「悦凱陣」は飲む機会が多く、当連載でこれまで16種類を取り上げている。中でも「悦凱陣 純米 無ろ過生 丸尾神力」(当連載【2073】)と今回の酒は同じではないか、とおもうのだが、B居酒屋の店主は、「以前の酒とは違うんです。『情熱』が付いているものは違うんです」と頑強に言い張る。ふだんは物静かな店長がそこまで言うのなら、と飲んでみることにする。

 含み香に、なんと古酒香がありびっくり仰天だ。醸してからざっくり2年間で古酒香が出るとは! というより、最初からこのような香りが付いているのではないだろうか、とおもった。バニラ・カカオ・カラメル・シナモン・紹興酒を混ぜたような非常に香ばしい香りが特長的だ。

 味わいは、口に含むと酸が来る。一瞬置いて、辛みが来る。しかし、突き刺さるような辛みではなく、旨みのオブラートにくるまれたような辛みだ。余韻は酸と辛み。「悦凱陣」は全般に非常に力強い酒質で、今回のお酒も力強さがあるが、これまでの「悦凱陣」に比べ、ややシャープ感がある。これは酒米「神力」によるものなのだろうか。

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。

「凱陣は、四国は讃岐の国こんぴらさんの東に在る蔵の手造り清酒です。当所は幕末時代天領で桂小五郎や高杉晋作が潜伏していたこともある蔵で、選び抜かれた国内の新米と讃岐の偉人空海ゆかりの満濃水系の伏流水を使い丹精込めて醸し上げた純米造りのお酒でございます」

 瓶の肩ラベルは力強い字で「情熱神力」と書かれている。

 裏ラベルのスペック表示は以下の通り。「平成29年酒造年度仕込第55~56号、原料米 神力100%(国内産)、原材料 米(国内産)米麹(国内産米)、精米歩合65%、アルコール分19.0以上20.0未満、仕込総米1000kg、日本酒度+16、酸度1.9、アミノ酸度1.2、使用酵母 熊本9号 醪日数33日、製造年月31.02」

 使用米のひとつ「神力」については、オエノングループのサイトが「『神力』物語」と題し、以下の解説文を掲載しているので転載する。

「言い伝えによると・・・

明治10年、兵庫県の農業家丸尾重次郎が、自分の水田に特別に穂の重い稲が生長しているのを発見しました。わずか3本の穂を種にし、苦心して改良したところ、この品種からは大粒で多くの米が収穫できたことから“神から賜った米”として『神力』と名付けられました。次第に『神力』の評判が近隣に広がり、丸尾重次郎は『神力翁』と呼ばれるようになりました。

抜群な収穫量を誇り、全国に普及した『神力』は、『麹がつくりやすく、もろみで溶けやすく、酒に雑味を与える成分が少ない』という性質から、酒造好適米としても高い評価を受けるようになります。しかしながら、昭和の初めになると、稲作形態の変化と激しい品種改良競争のなかで、姿を消すこととなりました。

それから、半世紀近い年月が流れ、“幻の米”となった『神力』は、酒造りに適した性質が再び見直され、復活を果たします。丸尾重次郎は『神力』の繁栄を見ずに逝去しましたが、『神力』は今も人気の酒造好適米として、また、多くの酒造好適米の祖先米として、後世に脈々と受け継がれています」

 さて、店主が「『情熱』は、これまでと造りが違うんです」と強調していたが、それを裏付けるものが、ネット上では探せなかった。ただ、神奈川県横浜市の酒販店「横浜君嶋屋」のサイトが、「情熱誕生Story」と題し、以下の文を掲載している。

「明治の中頃に酒造好適米『神力』を開発した兵庫の丸尾重次郎氏。名前が同じ事からご自身のルーツを重ね、古代米への想いを抱く凱陣の当主丸尾氏に君嶋代表が共感。当時は兵庫でも幻の米となっていたため、熊本の農協に掛け合うなどして酒米『神力』を使った酒造りがはじまりました。 その経緯から凱陣・神力は主に君嶋屋の取り扱いとなっています。30BYからは本家の兵庫県産の神力で造っています」

 以前の「悦凱陣 純米 無ろ過生 丸尾神力」と今回の「「悦凱陣 純米 無ろ過生 丸尾神力 情熱」の、どこが違うのか、上記の文からは分からない。

 また、「横浜君嶋屋」のサイトは、この酒の味わいを以下のように紹介している。「ナッツや栗のような穀物香、ゴボウや椎茸などの熟成香。香りの如く味わいも複雑味があり濃厚な旨みと後口を引き締める酸があります。冷やから燗酒。平盃やグラスで時間を掛けてゆっくり楽しみたい」

「悦凱陣」の酒名の由来について、「『日本の名酒』自宅にいながら蔵元巡りの旅」というサイトは「"悦凱陣"の命名は、酒蔵のご子息が日露戦争に従軍し無事帰った事で、主人が喜んでこの勇ましい名前になったということです。酒名は日清・日露戦争の戦勝を祝ったことが由来との説もありました。現在は未確認ですので、正確な由来が分かりましたら掲載します」と説明している。

酒蛙

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