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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4171】神亀 純米(甘口)(しんかめ)【埼玉県】

2020.3.7 16:08
埼玉県蓮田市 神亀酒造
埼玉県蓮田市 神亀酒造

 なじみのH居酒屋の店主から「新しいお酒が入りましたよ」とショートメールが入った。わたくしは、H居酒屋に、1行解説付きの酒メニューを作ってあげている。一般的な酒メニューは、酒名と値段の羅列だけ。これだと、よほどの客ではない限り、どんな香味の酒かは分からない。しかし、1行解説付きのメニューだとだいたいの味が分かり、客にも好評という。メニューを作るには飲まなければならない。おっとり刀で、H居酒屋の暖簾をくぐった。

 新しい酒は4種類。うち、わたくしが飲んだことがなかったのは「神亀 純米(甘口)」1種類だけだった。神亀酒造の酒は当連載でこれまで、21種類を取り上げており、このうち「神亀」は13種類だ。まずは、冷酒でいただいてみる。

 酒蛙「うわっ、古酒っぽい。熟成している。いかにも『神亀』。絵に描いたような『神亀』だ」
 店主「いい感じで古酒っぽい香りが出ている」
 酒蛙「この香りは、例えるならば、カカオというかチョコレートの香りか。カカオ香が非常に香ばしい」
 店主「そのカカオ香っていうのは、新しい表現としていいかもしれない。カカオ香は、言われれば納得する」
 酒蛙「香りを除けば、軽めでやわらかな口当たりのお酒だ。マイルドだ」
 店主「嫌いじゃない」
 酒蛙「近年の神亀酒造の酒は、熟成香が抑えられ、大人しくきれいな酒質のものが多くなり、『おやっ』とおもっていたが、これはまさしく、俺がおもっているところの『神亀』らしい香味だ。意外に軽い酒質だ」
 店主「酒と酒の合間に飲みたい酒だ」
 酒蛙「余韻もずっと熟成香が続く。甘みは適度で、旨みは少ない。余韻に辛みと苦みがすこし。酸はほとんど感じない」
 店主「俺は嫌いじゃない」
 酒蛙「ひき肉の巾着と合わせると、カカオ香が消え、辛みが出てきた」

「神亀」というと、燗酒が基本だ(とわたくしはおもっている)。そこで湯煎で燗酒をつけた。温度はぬる燗の40℃。

 酒蛙「熟成香が依然として強く出て、辛みが出てきた」
 店主「意外にさっぱりした口当たりで、飲みやすい」
 酒蛙「淡麗酒に感じる」
 店主「甘みを感じる」
 酒蛙「うん、分かる。冷酒のときより、甘みと旨みがぐんと出てきた。味が膨らんできた。この酒は明らかに冷酒より燗酒の方がいい。冷酒だと味が膨らまない」
 店主「うん、燗酒だと味が出ているね。でも、やっぱり酸は出ていないね」
 酒蛙「たしかに」

 次に60℃まで上げていただいてみた。

 酒蛙「甘い!」
 店主「甘みがあるけど、旨みが無い」
 酒蛙「水の如しの口当たりだ。すなわち、キレっキレのお酒になる」
 店主「40℃が一番いいなあ」

 瓶のラベルのスペック表示は「山田錦、精米歩合60%、アルコール分15度以上16度未満、原材料名 米・米麹、製造年月2018.11」。製造年月だけを見れば1年古酒だが、1年熟成で、こんなに熟成香が出るわけがない。おそらく、けっこうな年月をかけて熟成させ、2018年11月に蔵出しまたは瓶詰めしたのだろう。

 神亀酒造専門オンラインショップ「神亀の館」は、この酒を「癒し系純米酒」と題し、以下のように紹介している。「日本酒度はマイナス1〜3。酒度を切るだけが日本酒ではない。甘口はあまり難しいことは考えずにゆるゆる気楽にやって下さい」。これを見て、2つの点でたまげた。サイトは「癒し系純米酒」といっているが、カカオ香が強く、けっして癒し系の酒とはおもわなかった。また、蔵では甘口酒を標榜しているが、すくなくても冷酒で飲んでいるときは、それほど甘口酒には感じなかった。燗酒にして初めて甘口酒と感じた。もっとも、サイトのコメントは燗酒が前提のものなら理解できる。

 酒名および蔵名「神亀」の由来についてコトバンクは「酒名は、蔵の裏の天神池に棲むという神の使いの亀にちなみ命名」と説明している。

酒蛙

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