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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4147】黒松剣菱 特撰(くろまつけんびし)【兵庫県】

2020.2.19 14:58
兵庫県神戸市東灘区 剣菱酒造
兵庫県神戸市東灘区 剣菱酒造

【剣菱 全2回の①】

 夕方、なじみのうなぎ屋にふらっと出向く。この店のお酒は、何の変哲もない地酒3種だが、店主のおすすめ酒が面白い。「これ、どうでしょうか?」と言いながら毎回、全国津々浦々の酒を1本ずつ持ってくる。この店主酒が楽しみで、うなぎ屋の暖簾をくぐるようなものだ。

 今回は様子が違っていた。店主が待ってましたとばかりに、酒を2本持ってきた。「黒松剣菱 特撰」と「極上黒松剣菱 超特撰」。いわく「私は味の違いが分からないので、違いをレポートしてほしい」。店主はそれぞれを銚子に注ぐ。それぞれ1合強ずつ。テイスティングにしては、かなり相当、量が多い。そして、帰るとき、代金とともに、テイスティング結果を書いた紙を店主に渡さなければならないのだ。猶予時間1時間のテストだ。柄にもなく緊張する。急いで2合飲んだら、ちょっとホロっときた。

 さて、「黒松剣菱 特撰」。上立ち香も含み香も、香ばしい熟成香であふれかえる。バニラ・カラメル・シナモン・カカオ・紹興酒を混ぜたような、典型的な熟成香が非常に豊か。口当たりは、非常に濃醇で力強い。極めて濃い。豪快感がある。味わいでは、酸が非常に非常に立つ。なんだか「非常に」がやたらに多い文章になって最悪だが、しょうがない。正しい文章は、「非常に」は1個しか使わないのだ。

 酸とともに辛みも立つ。そして、分厚い甘旨みがたっぷりとある。かなりのボリューム感がある。余韻は辛み。酸・辛・甘旨みがかなり出ており、それぞれがかなり太いのだ。あ、なんだか「かなり」がやたらに多い文章になってしまった。正しい文章は「かなり」は1個しか使わないのですよ。

 かなり品の無い文章を書いてしまったが、それほど、心乱れるような旨い酒だったのだ。その気持ちを率直に文章表現したら、このような結果となってしまったことをご了承ください。

 瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。

「口に含んだ瞬間に濃厚な香りがふくらむ米の豊潤な味わいを引き出した逸品。存在感のある旨みは酸味や辛みと相まり口のなかで幾重にも広がるいっそうまろやかなコクへと昇華。鮮やかなキレが上品で心地よい余韻を残します」

 裏ラベルのスペック表示は「酒質 濃醇旨口、アルコール分17度、原材料名 米(国産)米麹(国産米)醸造アルコール、製造年月 R1.8.7」。特定名称酒の区分や、原料米の品種名や、精米歩合は非開示だ。

 これについて、蔵のホームページは「剣菱の商品には、精米歩合のラベル表示をしておりません。理由は、毎年異なる条件下で育ったお米のできに合わせて精米歩合を変えているから。すべては、変わらぬ味を守り続けるため。 “肩書き”よりも“味”。それが、私どものポリシーです」と説明している。

 知人の女性日本酒ライターSさんは「この蔵にはブレンダーがいて、同じ味を造り続けるため、毎年、ブレンドを変えている。だから、特定名称酒の区分は、仮にやりたくても出来ないのが実情だ」と言っている。

 酒名および蔵名の「剣菱」の由来についてコトバンクは「酒名は、不動明王が持つ降魔(ごうま)の剣の剣身と鍔(つば)の形に由来」と説明している。

酒蛙

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