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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4104】千代むすび 純米 鳥系105号(ちよむすび)【鳥取県】

2020.1.6 18:36
鳥取県境港市 千代むすび酒造
鳥取県境港市 千代むすび酒造

【S居酒屋にて 全9回の④】

 年に1~2回飲んでいる5人グループ。もともとTとわたくしは仕事で知り合い、よく2人で飲んでいた。Tの友人が次々に加わり5人のメンバーとなった。場所は、酒の種類が非常に多い東京・銀座のS居酒屋だ。メンバーのうち2人が都合がつかず欠席。今回は3人で飲んだ。

「東鶴」「緑川」「花の香」と飲み進め、4番目にいただいたのは「千代むすび 純米 鳥系105号」だった。「千代むすび」は当連載でこれまで、7種類を取り上げている。蔵がある境港市は、「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木しげるの出身地。このため、この蔵では妖怪ラベルの酒をつくっており、当連載で取り上げた7種類のうち3種類が妖怪ラベル酒だ。

 さて、わたくしは今回、飲み会が始まる前に、恰幅のいいフロア担当のお兄さんに、飲みたい酒を10種類指定した。ずばり、当連載で取り上げたことのない酒を指定した。連載に既に出ている酒を飲んでも取材にならないからね。ということで、冷蔵庫を見ながら、飲んだことのない酒を選んだ。つまり、野球に例えるなら、わたくしがベンチ入りの選手を選び、打順はお兄さん(監督)に任せた、というわけだ。

 4番目の酒を持ってくるよう、お兄さんに催促しようとしたら、この居酒屋を仕切っている方(店を経営している会社の役員で、かなり酒に詳しい方)が、「これ飲んでみませんか?」と「千代むすび 純米 鳥系105号」薦めてくれた。「第11回全国燗酒コンテスト金賞酒なんですよ。審査員の一人がわたくしでした」と役員氏。おおっ、それなら飲みたい、飲まなければならない、飲む、の「飲む三段活用」(うそ)で、新加入の選手をベンチに入れ、即、代打で送り出した。

 全国燗酒コンテストのウェブサイトを見たら、この酒が受賞したのは2019年の第11回全国燗酒コンテスト。その中の「お値打ち燗酒 ぬる燗部門」。この部門には246点がエントリー。最高金賞が16点、そして「千代むすび」を含む51点が金賞を受賞した。

 さて、この店の通常のテーブルに燗付けの穴が2つあり、そこにちろりを入れると、すぐ燗酒ができる。しかも、気に入った温度を自分で調節できる。しかし、わたくしたちが座る喫煙席にはそれがなく、代わりに熱湯を入れた樽にちろりを入れたり出したりして、酒温度を調節する。燗付け係は当然わたくし。わたくしは“絶対温階”の舌を持っているので、湯温計はいらない。で、40℃のぬる燗酒をつくった。いただいてみる。

 T 「辛い」
 N 「辛いっすよ」
 酒蛙「酸が立つ。辛みも出ている。旨みは適度。味のバランスが実に良い。肩の力が抜ける“ゆるゆる感”がある。酸がきりりとしているので飲み飽きせず、だらだらいつまでも飲める酒だ」
 T 「ベタつかない酒だ」
 酒蛙「軽快な飲み口」
 N 「どんどん酸が出てきますね~。これ、日本酒好きの人の酒だ」
 酒蛙「昭和レトロ感的熟成感的クラシカル香味がすこしある。日本酒オールドファンは泣いて喜ぶ」

 燗冷ましに近い温度帯(室温に近い温度)に差し掛かったら、味が変わった。

 N 「おおおっ、酸が来ますね!
 酒蛙「酸が強くなった。酸と辛みがいい。甘みはあまり感じない。旨みはすこし出ている。酸が実にいいね。好きだ。いくらでも飲めそうだ」

 冷酒でも燗酒でも楽しめるのが日本酒。世界の醸造酒の中で、日本酒ほど適温範囲が幅広いものはない。その中でも燗酒の温度帯によって味が違う。日本酒は、懐が非常に深いのである。

 この酒と使用米「鳥系105号」について、蔵のホームページは以下のように紹介している。「鳥取県固有の酒造好適米『強力』の血を引く新しい酒米『鳥系105号』を使った純米酒です。ぬる燗で旨味が広がるお酒です」「鳥系105号は、鳥取県農業試験場が開発したオリジナル酒米で、強力の突然変異を自然交配させてつくられました」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料 鳥系105号米100%(国産)米麹(国産米)、精米歩合70%、アルコール度16度、日本酒度+5、酸度1.5、酵母 7号酵母、杜氏 坪井真一、製造年月2019.10」。

 酒名および蔵名「千代むすび」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「『千代むすび』とは、『永久に変わることのない人と人の固い結び、絆』を意味します。夫婦、親子、兄弟、知人との愛情、友情の深さを象徴し、お祝いの言葉でもあります。『お客様』を初め、『千代むすび』に携わる全ての人々の『幸福の創造』が経営理念です」

酒蛙

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