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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【4101】東鶴 つるのおんがえし 純米(あずまつる)【佐賀県】

2020.1.4 13:47
佐賀県多久市 東鶴酒造
佐賀県多久市 東鶴酒造

【S居酒屋にて 全9回の①】

 年に1~2回飲んでいる5人グループ。もともとTとわたくしは仕事で知り合い、よく2人で飲んでいた。Tの友人が次々に加わり5人のメンバーとなった。場所は、酒の種類が非常に多いS居酒屋だ。キャパも大きい。しかし、キャパの割りには静か。キャパの大きい大衆居酒屋だと酔ってオダを上げる客が多く、隣りの仲間と話すのにも一苦労するほど騒々しい。しかし、ここはオダを上げる客はおらず、全体的に上品な雰囲気。なんてったって、東京・銀座の居酒屋だから。そのS居酒屋で、今回は3人で飲んだ。

 最初にいただいたのは「東鶴 つるのおんがえし 純米」だった。「東鶴」は当連載でこれまで、10種類を取り上げており、飲む機会の多い酒だ。しかし、この酒をトップに持ってこなければならない理由があった。それは、この蔵が大雨の被害に遭い、復興したからだ。いろんな支援を受けてきた。だから、東鶴だから「つるのおんがえし」だ。本物の昔話では障子越しに鶴が機を織っている絵が有名だが、これは鶴が一升瓶を持っている。

 さて、蔵のホームページでは、水害については一言も触れていない。そこで、ネット情報を総合すれば、以下のようになる。

 令和元年8月末、記録的な大雨が九州北部を襲い、各地に甚大な被害をもたらした。東鶴酒造は、酒蔵の裏を流れる川の増水・氾濫によって蔵が浸水した。被災した酒の中から、無事だった純米酒をはじめ、純米大吟醸までさまざまなタイプの酒をブレンド。ボランティアなど多くの人たちから支援があり、蔵も何とか酒造りができる状態まで復旧してきたことから、その恩返しとして感謝を込めて、売り出すことにした。被災蔵から生還した“奇跡のお酒”である。

 T 「これ、好きです。クセが無い」
 N 「フルーティー。すっきりしている」
 酒蛙「うん、すっきりした辛口酒だ。きれいな酒質だ」
 N 「後に何も残らない」
 酒蛙「そう。キレがずいぶんいいね」
 T 「酸味は強くないが、えらくキレが良い」
 酒蛙「甘みと旨みも感じる。すっきり、さっぱりした口当たり」
 T 「甘みがあるが、ベタつかない」
 N 「本当にキレが良い」
 酒蛙「口が慣れてきたら、酸を感じるようになる。酸が出てきた感じ」
 N 「あ、本当だ!」

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合65%、アルコール度15度、製造年月2019.11」。

 この蔵は復活蔵である。これについて、蔵の現在のホームページは以下のように説明している。

「創業は江戸末期。佐賀県多久市の山々に囲まれた豊かな地で、私たちは代々地元に愛される酒造りを行ってきました。 平成元年を境に休業していましたが、平成21年より蔵元自ら杜氏となり、現在は家族ぐるみで経営、酒造りに日々励んでいます」

 また、2013年5月当時の蔵のホームページは、以下のようにもっと詳しく掲載していた。

「江戸末期に創業して以来、地元の方に愛されるお酒を造って参りました。20年ほど前までは、冬になると福岡県柳川市から杜氏と蔵男が来て、住み込みでお酒を造っていましたが、不況や日本酒の需要低迷の煽りを受け、我が蔵の製造も停止しておりました。
 野中家長男である保斉は、今でこそ東鶴の立派な杜氏となりましたが、数年前、彼が大学卒業後に実家に帰ってきた時は、家業は廃業寸前であり、さらに彼自身が日本酒を苦手としてたので、東鶴は父・保圀の代で終わってもおかしくない状況でした。
 そんな状況を見かねた近所の日本酒好きの方が、保斉に佐賀県のとある酒蔵の純米酒を紹介してくださったのでそれを飲んでみると、今まで飲んだことのない美味しい味に相当感動し、自分にも飲んだ人が感動できる日本酒を造れるかな?いや、造りたい!という気持ちが芽生えて、日本酒造りに目覚めたわけです。その後、東京の醸造試験場、山口県にある永山本家酒造場での修行を経て、平成21年、初めて自分が造ったお酒を世に出すことになりました」

 これらのいきさつについて、地元佐賀新聞は当時、以下の記事を掲載した。

「東鶴酒造は、江戸末期創業の蔵だが、長引く需要低迷で製造を中止していた。2006年、飲食店に勤めていた蔵元の長男が、蔵を復興させた小松酒造(佐賀県唐津市相知町)の酒の澄んだ味わいに驚き『本物なら再興の可能性がある』と確信して再興の準備を進めた。日本醸造協会で1年間研修を受け、『貴』で知られる山口県の蔵に1年間住み込んで酒造りを学んだ。こうして平成20醸造年度(2008年7月1日~2009年6月30日)から酒造りを始め、蔵を15年ぶりに再興させた」(要約)

 いったん閉鎖した蔵を復活させた東鶴酒造。そして今回は大雨浸水被害。幾多の苦難に直面してきた東鶴酒造。タンチョウヅルのように大きく羽ばたいてほしい、と願わずにはいられない。

酒蛙

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