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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3935】甘雨 純米(かんう)【新潟市】

2019.8.26 17:02
新潟県新潟市 越後酒造場
新潟県新潟市 越後酒造場

 これまで、酒の夢を見ることはなかったが、2019年の春ごろ、初めて見た。場所は、ある一軒家の納戸。なぜか、着流し姿の石井竜也(旧・カールスモーキー石井)と、これまた着流し姿の作家・京極夏彦が納戸にいる。納戸の棚には日本酒の一升瓶が並んでいる。

 そのうちの1本を手に取り、ラベルをみた石井竜也と京極夏彦が「なんだ、こりゃ~!」と叫ぶ。ラベルには銘柄名「甘雨」が大書されていた。そこで夢から覚めた。

「甘雨」という銘柄の酒は本当にあるのだろうか。起きてすぐ検索してみた。なんと実在していたではないか。ただ、ロゴが違っていた。夢で見た「甘雨」の字体は、荒っぽいものだったが、実在するものは、隷書風の丸くおとなしいイメージだ。

 夢に石井竜也が出てきたのは分かる。何日か前、テレビで着物を婆娑羅調に着こなした石井竜也を見て、印象に残っていたからだ。京極夏彦もいつも和服姿だから、石井竜也に引っ張られたのだろう。しかし「甘雨」ということばが夢に突如として出てきたきっかけがまったくおもいつかない。それまで、「甘雨」という言葉は本や新聞のどの部分でも見てこなかったし、そもそも「甘雨」という言葉をわたくしは知らなかった。それなのに夢にあらわれるとは。夢は面白い。そして不思議だ。

 ともあれ、「甘雨」が実在することが分かった。次の興味は、どんな味の酒なのか、だ。で、ネット通販で取り寄せてみた。そして、晩酌にいただいた。

 まずは冷酒で。甘旨みが適度にあり、これに酸と辛みが絡む。すっきり・さっぱりした飲み口。そんなイメージ。キレが非常に良い。余韻は辛みと苦み。熟成香に似たような穀物的クラシカル香味がある。エレガントさは無いが、どこか懐かしさを感じさせる酒。やや軽快感があり、淡麗辛口の範疇か。

 次に、ぬる燗にしていただいてみる。温度は40℃。酸が前に出てくる。と同時に辛みがかなり出てくる。次第に酸より辛みが前面に出てくる。味に幅が出てくる。キレの良さとクラシカル香味は冷酒のときと変わらないが、冷酒のときに感じた淡麗辛口というよりは、しっかりとした味わいの酒になる。冷酒のときより、飲み飽きがしない。ぬる燗の方が、味わいが出て良いと感じた。

 蔵のホームページはこの酒を「純米酒独特のまろやかさとキレが 特徴の口当たりのいいお酒です」と紹介している。

 瓶のラベルの表示は「アルコール分15度以上16度未満、製造年月19.5、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合60%」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。しかし、ホームページのスペック表示では以下のように開示している。「原料米 五百万石・こしいぶき、精米歩合60%、アルコール15度以上16度未満、日本酒度+5.0、総酸度1.4、アミノ酸度1.4、お薦めの飲み方 常温~上燗(20~50℃)」

 使用米の「こしいぶき」は新潟県農業総合研究所作物研究センターが1988年、母「ひとめぼれ」(その母は「コシヒカリ」)と父「どまんなか」を交配。選抜と育成を繰り返し品種を固定、2000年に命名、2003年に種苗法登録された飯米用品種。

 この蔵の主銘柄は「越乃八豊」と「甘雨」の2つ。これについて、蔵のホームページは以下のように説明している。

「『越乃八豊』(こしのはっぽう)は、地区名の豊栄と、豊栄の発展と蔵の発展を願い『末広がりに、お客さまと(株)越後酒造場が共に豊かになる』事を願っての銘柄です。
『甘雨』は、創業以来のロングセラーを誇る。甘雨とは、ほどよいときに、降って草木を潤し育てる雨・恵みの雨」

酒蛙

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