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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3882】隆 純米吟醸 無濾過生原酒 五百万石 赤紫隆(りゅう)【神奈川県】

2019.7.29 14:30
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店

 なじみのH居酒屋の店主から連絡が入った。「『隆』の新しいお酒が入りましたので、店に来てください」。わたくしは、「酒質1行解説」付きの酒メニューをH居酒屋につくってあげている。お客さまが酒を注文するとき、とても便利だからだ。そのためには、まずは飲まなければならない。おっとり刀で暖簾をくぐった。

 川西屋酒造店のお酒は飲む機会が多い。わたくし行きつけの店がなぜかこの蔵のお酒を好むからだ。今回のお酒を含め、当連載でこれまで「隆」を10種類、「丹沢山」を4種類取り上げている。「隆」10種類のうち、H居酒屋で飲んだものが半数の5種類だ。

 今回の酒は、以前に取り上げた「隆 純米吟醸 五百万石 五拾 火入 赤紫」(当連載【1859】)の生原酒バージョンだ。「隆」には酸と苦みというイメージを持っている。今回のお酒はどうか。いただいてみる。

 酒蛙「すっきり軽快感があり、酸っぱい。きれいな酒質だ」
 店主「全然クセが無い。なんとなく古酒感がある」
 酒蛙「ばあちゃんのタンス的な香味を感じる。酸がだんだん強く感じられるようになる」
 店主「酸が出ていますね。全然いいんじゃないの? 味が太い」
 酒蛙「苦みもけっこう出ている。すっきりした酒質だが、なかなか力強い」
 店主「うん、辛みと苦み。中でも苦みが強いね」
 酒蛙「後味の辛みも強い。くせ者だね」
 店主「辛みがかなり出てくる。力強い」

 次に、燗酒を飲んでみる。湯煎で45℃。

 酒蛙「おおっ、酸と苦みがくる」
 店主「苦い」
 酒蛙「たしかに苦い」
 店主「苦い、苦い」
 酒蛙「キレは良い」

 苦みが強く感じられたが、温度がすこし下がると、酒質が一変する。

 酒蛙「あ、温度が下がってきたら、苦みが和らいできた。酸が出て、苦みが少なくなり、飲みやすくなる」
 店主「甘みも出てくる。丸み・とろみがある。いいね」
 酒蛙「うん、丸み・とろみがあり、甘みが出てきた。味の基本要素は、甘・酸・苦だ」

 湯温計で、わたくしたちがベストと感じる湯温を測ってみたら、32℃だった。いわゆる日向燗である。

 瓶の裏ラベルの表示は「アルコール分19度、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、原料酒米 2018年度新潟県産五百万石100%使用、精米歩合50%、日本酒度 プラス7.5、使用酵母 協会701、酸度1.9、杜氏氏名 高橋健一、製造年月19.3」。

 前述のように、この蔵の主な銘柄は「丹沢山」と「隆」。これらのコンセプトの違いについて、神奈川県茅ケ崎市にある青木酒店のサイトは、以下のように説明している。

「川西屋さんが情熱を込めて造っているお酒に変わりはないのですが、隆は一タンクもしくは二タンク限定の瓶囲いです。タンク囲いの良さもあるのえすが、瓶囲いによる品質安定と食中酒にこだわる川西や酒造の集大成ともいえます。幅広く地元で愛される丹沢山に対して隆は米の特性を最大限表現する酒として生まれたものだと、うかがっています」

 また、酒名「隆」の由来について、同サイトは以下のように説明している。

「お酒は決して、できたてがすべて良いとは、限りません。力のあるお酒はビンテージワインの様に月日が経つことで味が更にまろやかになり、深みが増すこともあります。丹沢山の山の名にちなんで山が隆起するごとく、味も隆起するとの意をこめてつけられたとうかがっています」

酒蛙

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