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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3871】田酒 特別純米(でんしゅ)【青森県】

2019.7.21 16:11
青森県青森市 西田酒造店
青森県青森市 西田酒造店

【日本酒研究会月例会 全7回の③】

 異業種間の日本酒研究会。単なる飲み会だが、ちょっと気どって研究会だ。足掛け13年目に突入した超長寿飲み会。M居酒屋で毎月開いてきたが、この間、一度も休まず飲んできた。みなさん、なんと研究熱心なことか。今回は6人での月例会となった。

「玉の雫 純米」「文華 純米吟醸 壺中の天」という、わたくしたちにとっての初蔵酒を飲んだあと、店主が3番目の酒として持ってきたのが「田酒 特別純米」だった。「田酒」の名を全国不動のものにした、「田酒」の定番酒というかレギュラー酒。いまさら、のおもいがあったが、なんと当連載で取り上げたことがなかった。しかも、何回も飲んでいるのに。

 加えて、店主がびっくりすることを言った。「このお酒はこれまで2回火入れ(加熱し酵素・酵母の働きを止め、酒質を安定させるための作業)だったのですが、1年前の造りから1回火入れに変わったんです。だから、みなさんにも飲んでもらいたい、と」。店主がこの酒を持ってきた理由は、ここにあったのだ。

 驚いた。レギュラー酒の造り方を変えるとは。蔵元さんの決断力はハンパじゃない。さて、注目の酒をいただいてみる。味は変わったのか、変わらないのか。興味津々でいただいてみる。

 酒蛙「おおおおっ、バナナ香だ。田酒でバナナ香を感じたのは初めてだ。フレッシュ感も出てきた」
 Y 「今までの田酒と全然違う」
 S 「俺の知っている田酒とは違う」
 Y 「きれいな酒になった」
 酒蛙「以前よりかなり軽くなった」
 S 「たしかに軽い。以前は、ずっしりした感じだったが・・・」
 H 「保守本流を変えていいのか?」
 酒蛙「やわらか、軽快。酸が出ており、キレが良い。旨みが以前より細くなったイメージ」
 M 「田酒としては、あまりにもすっきりしたお酒になった」
 酒蛙「すっきり、さっぱりした飲み口に。いわゆる“田酒くささ”“田酒らしい”といわれる田酒DNAがあまり感じられない」
 H 「旧来のバージョンと新しいバージョンの両方を売っていけばいいんだけどな」

 旧来の「田酒 特別純米」は、旨み(コク)がたっぷりのやや濃醇(醇酒)な酒だった。それでいて辛みもあり、全体を引き締め、力強い酒質を保ってきた。田酒DNAの強い香味は、全国の日本酒ファンの心をつかんできた。その一方で、味がしっかりし過ぎでもてあます、という声もあった。今回飲んだ田酒は、これら旧来の酒質とはほとんど真逆だった。やわらかくて軽快感がありさっぱりすっきりした飲み口、果実香がやや華やか、甘旨と酸のバランスが良くジューシー。辛みはあまり感じられない旨口酒。つまり、現在の今風トレンド的な味になったのだ。おそらくは、過去の熱烈なファンは大いに戸惑うだろう。一方、今風の清酒が口に合う人たちには支持されるに違いない。おそらくは、蔵元さんは、プラスマイナスを考えた結果、プラスになると結論付け、この酒質に大きく舵を切ったのだろう。今後の「田酒 特別純米」の売れ方を注目したい。

 瓶のラベルの表示は「アルコール分16度、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合55%、製造年月2019.01」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だが、蔵のホームページでは「原料米 華吹雪」と開示している。

「華吹雪」は青森県農業試験場が1974年、母「おくほまれ」(祖母が「山田錦)と父「ふ系103号」(祖母が「ササニシキ」)を交配。育成と選抜を繰り返し開発、1988年に品種登録された酒造好適米だ。

 酒名「田酒」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「『田』はもちろん、酒の元となる米が獲れる田んぼを意味し、名前の通り、日本の田以外の生産物である醸造用アルコール、醸造用糖類は一切使用していないことを力強く主張した、米の旨みが生きる旨口の純米酒です。『日本酒の原点に帰り、風格ある本物の酒を造りたい』という一念で、昭和45年に昔ながらの完全な手造りによる純米酒の醸造に着手。その後、商品化までに3ヶ年を費やし、発売は昭和49年10月1日でした」

 ラベルの「田酒」の字は、竹内俊吉・元青森県知事の筆による。

酒蛙

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