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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3827】雨後の月 麹交換 純米吟醸 生酒(うごのつき)【広島県】

2019.6.8 23:23
広島県呉市 相原酒造
広島県呉市 相原酒造

【S居酒屋にて 全9回の⑦】

 飲み仲間のK、Tと久しぶりに飲む。これにわたくしの同僚Wが加わる。場所は、何回かお邪魔し、気に入っているS居酒屋。日本酒約200種類を常備しているので、とても勉強になる。フロアを仕切るSさんは博識で、分からないことを聞くと、即答してくれ、これまた勉強になる。

 Sさんが「花見ロ万 純米吟醸 低アルコール一回火入れ」「新政 涅槃龜 96%低精米酒 生酒」「天寶一 華風車 こいおまち 純米」「川鶴 特別純米 生原酒」「白鶴 純米生原酒 荒駒 特撰」「賀茂金秀 麹交換 純米吟醸 生酒」に続いて7番目にもってきたのは「雨後の月 麹交換 純米吟醸 生酒」だった。

 前回の「賀茂金秀 麹交換 純米吟醸 生酒」を持ってくるとき、Sさんはこう解説し、ぜひ飲むように、と勧めた。広島県有数の蔵の「雨後の月」と「賀茂金秀」が、あろうことか酒造の生命線である麹を交換して酒をつくったというのだ。麹を交換して、酒米八反錦と酵母と精米歩合など仕込みは同じ。違うのは水と杜氏だけ。まずは「賀茂金秀」を飲み、次に「雨後の月」をいただいた。

「雨後の月」の裏ラベルには、「賀茂金秀」の裏ラベルと同じ文言が、以下のように書かれている。「『良酒』は『麹が決め手』と昔から。だったら、他蔵の麹を使ってお酒を醸したらどんな味なのか? 広島の吟醸蔵2蔵のつぶやきが現実になりました。醸すのは同じ酒米、酵母、仕込み。違うのは水と杜氏。前代未聞の試みですので、ぜひ2蔵を飲み比べてください」

  さて、どんな酒ができるのか。興味津々でいただいてみる。

 酒蛙「驚くほどやわらか、ふくよか。さすが軟水蔵だ」

 K 「すっごくやわらかい」

 T 「おいしい。雨水のようだ」

 酒蛙「甘・旨・酸・苦・渋……辛が無いだけで、味がバランス良くそろっている。飲み口が実に丸い。余韻は辛みがわずか。飲んでいると、酸がじわじわ出てきて、酒の味わいを複雑なものにしていく。旨い」

 さて、麹交換をしたうえで、酒米八反錦と酵母と精米歩合など仕込みは同じ、違うのは水と杜氏だけという2つの酒を飲み比べた結果、違いは明瞭に出た。「賀茂金秀」は骨太で力強い酒質。一方の「雨後の月」は、実にやわらか・ふくよか。ほとんど真逆の結果となった。これには驚いた。おそらくは、仕込水の違いが、この結果となったものとおもわれる。

 瓶の裏ラベルの表示は、「アルコール分16度、原材料名 米(国産)米麹(国産米)、使用米 八反錦100%、精米歩合60%、製造年月31.3」。「八反錦」は広島県立農業試験場が1973年、母「八反35号」と父「アキツホ」を交配。育成と選抜を繰り返し品種を固定。1983年に命名、1984年に種苗法登録された酒造好適米。今や、「八反錦」といえば広島、広島といえば「八反錦」というほど、全国的に著名な酒米となっている。

 酒名「雨後の月」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「蔵を代表する酒『雨後の月』は、小説家・徳富蘆花が明治33年に発表した随筆『自然と人生』の短編題より二代目・相原格が命名しました。『雨あがりの空に、冴え冴えと光輝く月が周りを明るく照らす』そんな澄みきってうつくしい酒を醸したいと、蔵人が常に目標に掲げる名前です」

 ちなみにわたくしは、この「自然と人生」(岩波文庫)を学生時代購入したが、「雨後の月」の章まで読み進めないうちにギブアップ、いまだに書棚のこやしであり続けている。

酒蛙

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