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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3777】ゆきの美人 純米吟醸 6号酵母(ゆきのびじん)【秋田県】

2019.4.14 21:18
秋田県秋田市 秋田醸造
秋田県秋田市 秋田醸造

【Mうなぎ屋さんにて 全3回の③完】

 単なる異業種間の飲み会なんだけど、足掛け13年も月例会を欠かさず続けている日本酒研究会。長寿飲み会である。その会の今後について、メンバーのMと話し合う。場所は、いつものMうなぎ屋さん。ここの女将さんは、利き酒師真っ青なほど正確なベロメーター(味覚能力のこと)を持っている。だから、飲んでいて楽しい。日本酒研究会の臨時総会みたいなときに利用している。

「蓬莱泉 純米大吟醸 吟」「越の白鳥 純米 辛口 無濾過生原酒」と飲み進め、女将さんが最後3番目に持ってきたのは「ゆきの美人 純米吟醸 6号酵母」だった。「ゆきの美人」は飲む機会が多い酒で、今回の酒を含め、当連載で14種類を取り上げている。酸が出ている、やや濃醇系のしっかりとした味わいの酒、というイメージを持っている。今回の酒はどうか。

 おやっ?意外に大人しい。これが第一印象だった。あらためて味わってみる。やっぱり大人しい酒質で、落ち着き感がある。上品な吟醸香がほのか、さわやかな香り。酸・甘み・旨み・辛み・苦みのバランス良し。実にまとまっている。後半は、キレるタイプではなく、押し味がある。「ゆきの美人」というと、味が主張するしっかりとした味わいの酒という印象だったが、今回の酒は大人しく落ち着いた飲み口。「ゆきの美人」が6号酵母を使うと、このような酒質になるんだろうな。良い酒なんだけど、これまでの「ゆきの美人」と違い過ぎるので、戸惑いを隠せないわたくしであった。

 瓶の裏ラベルは、この酒を「山田錦・秋田酒こまちを原料とし、6号酵母で仕込みました」と紹介している。

 裏ラベルの表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、原料米 兵庫県北産山田錦20%主要・秋田酒こまち80%使用、精米歩合55%、アルコール分16度、日本酒度+1、製造年月31.1」。「秋田酒こまち」は秋田県農業試験場が1992年、母「秋系酒251」(その母は「五百万石」)と父「秋系酒306」(その父は「華吹雪」)を交配。育成と選抜を繰り返し開発、2004年に品種登録された酒造好適米だ。

 この酒は、6号酵母を使って醸したのが特徴だ。6号酵母は、秋田市の新政酒造の蔵が発祥で、それまで不安定だった酒造りを安定したものにし、清酒酒造業を飛躍発展させた画期的酵母。清酒業界が今あるのは6号酵母のおかげ、と言っていいほどの金字塔的存在。新政酒造は、そのプライドのため6号酵母を使い続けている。

 新政酒造の蔵のホームページは、6号酵母について詳しく書書いているので、以下に転載する。

「五代目卯兵衛の採用した近代的酒造技法によって、自ずと選択された蔵付き酵母。これこそが、きょうかい六号酵母(新政酵母)です。この酵母の特徴は、中~低温での安定した増殖力と発酵力。また一般的な蔵付き酵母と比較して、驚くほど酒の酸度が低く、まろやかな味になる点。そして、なんといっても上品で馥郁たる香りです。  新政の酒が、新酒鑑評会主席を2年連続受賞するなど、その名声が頂点に達するに至った頃、五代目卯兵衛と花岡正庸氏はこの新酵母を研究の対象にすべきとの意見で一致しました。この頃、日本醸造協会は、失敗がつきものだった酒造りを改善しようと、高い醸造適正を有する酵母を選抜・培養し、全国の酒蔵に配布する取り組みを行っていたのです。
 そして昭和5年、花岡氏の弟子であった酒造技師、小穴富司雄氏が、新政のもろみからこの酵母を分離し培養することに成功。 後に、日本醸造協会より『きょうかい六号酵母』の名で発売されることとなったのです。発売直後から、この六号酵母は、全国の醸造家に画期的な一大転機をもたらす酵母となりました。
 以前の酵母とは比較にならない安定した醸造特性、また近代的な酒質が評価され、一躍、日本の醸造方法は、蔵付き酵母に頼る自然発生的なものから、醸造協会が頒布する培養酵母添加方式へと様変わりしたのです。速醸酒母と協会酵母という、現在の一般的な酒造方法は、この時、確立したといえます。
 このようなわけで、六号酵母は、 現在頒布されている協会酵母の中で一番歴史の古い酵母となっています」

酒蛙

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