【3762】黒牛 純米(くろうし)【和歌山県】

【TU会例会 全4回の③】
2カ月に1回のペースで、M居酒屋で開いている異業種間飲み会「TU会」。今回は5人が参加、にぎやかに飲み、にぎやかに酒を論評し合った。
「四海王 純米大吟醸 山田錦 生貯蔵」「憲 Ken Blue 純米吟醸 無濾過生原酒」と飲み進め、3番目にいただいたのは「黒牛 純米」だった。このお酒は飲んでいるはずなのに、当連載にはまだ掲載されていなかった。つまり、この連載が始まった2010年1月以前に飲んだ、ということなのだろう。当連載では、今回の酒を含め、「黒牛」を3種類を取り上げている。しっかりした味わいの酒というイメージを持っている。今回の酒はどうか。いただいてみる。
酒蛙「甘っ! 辛みも感じる」
TU「甘いすね。酸ないすねー。セメダイン香(ベンゼン環芳香族系の芳香)いますね」
酒蛙「セメダイン香はいないとおもうけどなあ」
TU「あっ、酸が来た」
酒蛙「えっ? 酸が来てる? 俺はまだ感じない」
W 「濃厚ですね」
酒蛙「相当に分厚い酒だ。太い。甘旨みたっぷりの、かなりしっかりとした味わいのお酒だ」
TU「げっぷが甘いお酒だ」
酒蛙「あっ、ようやく酸が顔を出してきた。あっ、セメダイン香も出てきた」
TU「ほら~~~~~っ!!!!! 言った通りでしょ!!!!!」
酒蛙「ごめん」
瓶の裏ラベルは、以下のようにこの酒を紹介している。
「精選した山田錦や五百万石などをすべて自家精米で高精米し、調湿、限定吸水のうえ硬めに蒸すよう心がけました。小仕込みの長期低温発酵で丁寧に仕上げております。芳香で旨味のある、酸度の多さを感じさせないにもかかわらず幅と広がりのある味わいを実現させています」
また、蔵のホームページはこの酒を「やわらかい香りで、米の旨味を引出した幅のある味わい。旨口の食中酒タイプで、ぬる燗から冷やしまで幅広く楽しめます」と紹介している。
裏ラべルの表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、アルコール分15度以上16度未満、精米歩合 麹米50% 掛米60%、日本酒度+4.0、酸度1.6、使用酵母K9系、杜氏 岡井勝彦(能登杜氏組合員)」。
瓶の裏ラベルは、酒名「黒牛」の由来について、以下のように説明している。
「約1300年前の万葉の昔、蔵の周辺は美しい入り江で黒い牛の形をした岩が波に洗われていたそうです。黒牛潟として万葉集にも詠まれていました。【黒牛潟 潮干の浦を 紅の 玉裳裾引き 行くは 誰が妻(詠み人知らず 万葉集巻九)】 その後海は干上がり、『黒牛』を名の由来とする黒江の町となり室町時代から、ぬりものの町として栄えることとなります。万葉の昔を偲べる味わいをめざし、地名の由来でもあることから酒銘としたものです」
瓶のラベルにも「黒牛」を詠み込んだ以下の歌を掲載している。
「黒牛の海紅にほふももしきの 大宮人しあさりすらしも 万葉集巻七 藤原卿」
「いにしへに妹とわが見しぬばたまの 黒牛潟を見ればさぶしも 万葉集巻九 柿本人麻呂」