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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【3677】綿屋 百年酵母 特別純米(わたや)【宮城県】

2018.12.29 20:49
宮城県栗原市 金の井酒造
宮城県栗原市 金の井酒造

【S居酒屋にて 全13回の⑤】

 日本酒研究会の遠征場所が開かれ現会員・OB会員合わせて10人が参加した。場所はMうなぎ屋さん。それぞれ9種類の酒を飲み解散。このうちF、SA、わたくしの3人で二次会に繰り出した。場所は、わたくしなじみのS居酒屋。市内繁華街の中心地にある。わたくしは、酒のユニークな品ぞろえが気に入っている。

 店主が「太閤 門傳 純米」「東錦 純米 生貯蔵」「東錦 極 大吟醸 生貯蔵」「綿屋 純米大吟醸 雄町」と飲み進め、店主が続いて持ってきたのは、これも「綿屋」の「綿屋 百年酵母 特別純米」だった。

「綿屋」は、いまや、宮城県の地酒の中で最も人気のある銘柄の一つ。時として、プレミア価格を呼んだりする。当然、わたくしも飲む機会が多いお酒で、これまで、17種類を当連載で取り上げている。数えたことはないが、たぶん、当連載で最も種類が多い銘柄の一つであることは間違いない。

 わたくし個人的な「綿屋」の印象というかイメージは、地味めだが非常に整った味わいの食中酒。これが綿屋だ、という強烈な個性は持ち合わせていないが、やわらかで大人しくて、スーパー・バイプレーヤーのような味わいいにおもえる。もし間違っていたら、蔵元さん、ごめんなさい。

 この蔵はホームページを持っていないので、なんとも言えないが、大正4(1915)年創業のこの蔵は、ことしで103周年を迎える。この歴史ある蔵で近年、蔵付き酵母が分離されたので、その酵母を使って醸してみたのが、今回の酒、ということのようだ。「近年、分離された」と推測する理由は、これまで、そんな話は聞いたことがなかったからだ。どの蔵でも蔵付き酵母を分離すれば、必ずといっていいいくらい、その酵母を使った商品を出し続ける。しかし、この蔵にはそれがこれまで無かった。

 また、当連載【3428】で取り上げた「綿屋 特別純米 百年酵母」と今回のお酒は、酷似している。前回、「百年酵母」は酒名の副題だったが、今回、「百年酵母」は主題になっているのだ。つまり、ラベルが全然違う。前回は、従来の「綿屋」のラベルだったが、今回はまったく新しい。もしかして中身が同じかもしれない、とおもいつつ、ラベルが違うので、中身はすこしは違うのでは、ともおもい、取り上げてみる。さて、いただいてみる。

 酒蛙「旨いっ! 旨みと酸と辛みのバランスが良い」
 SA「最後に酸があるので、飲み飽きしない」
 酒蛙「若干、木香的というか菌類的香というか、表現が難しい含み香が出ている。旨いね」
 F 「まとまっている」
 酒蛙「旨いなあ。後味の辛みがいいなあ」
 F 「そうそう」

 前述したように、「綿屋」にこれまで持っていた印象は、やわらかくて大人しくて、地味めながら非常に整った味わい、というものだった。が、今回の酒は酸がちょうど良く出ており、メリハリが出ていた。おそらくは、「蔵付き酵母」の働きによる結果だとおもう。

 すなわち、この酵母を上手く使えば、これまでの「綿屋」とは味わいが全く違うラインナップを構成でき、蔵が大きく羽ばたくことができる可能性を秘めている。期待の大きい酵母である。逆に、オールドファンが戸惑う危険性と背中合わせ、だ。
 瓶の裏ラベルの表示は「創業大正4年 綿屋百年酵母、醸造酒米 宮城県一迫長崎地区産トヨニシキ100%、アルコール分15度、精米歩合55%、日本酒度−1.5、酸度 2.3、使用酵母 綿屋百年酵母、杜氏氏名 南部杜氏 鎌田修司、製造年月18.10月、29BY」。

「トヨニシキ」は農林水産省東北農業試験場栽培第一部作物第一研究室が1960年に母「ササニシキ」と父「奥羽239号」を交配、育成と選抜を繰り返し品種を固定、1969年に命名された主食用米。1975年から1977年の3年間、全国品種別作付面積で2位だったかつてのエース品種。

 酒名「綿屋」の由来について、コトバンクは「酒名は、創業時の屋号『綿屋酒造』に由来」と説明している。

酒蛙

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