メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【2】隆 純米無濾過生原酒(りゅう)【神奈川】

2010.1.14 20:02
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店

 おもいがけず、いいものに出会ったときは、ことのほかうれしいもの。酒も同じだ。

 友人と飲んだときのことだ。濃醇酸味酒を4種類、立て続けにぬる燗(かん)で飲み、さて、次に何を飲もうか、と酒メニューを見ていたとき。「隆」の文字が目に入った。

「隆」についてのメニューのコメントは、「時間の芸術。ゆっくりと着実に旨みがふくらんでゆく。今、この瞬間を味わって!」と書かれていた。なんのことだか、さっぱり分からない。分からないけど、「これ、飲んだことないよな」と言いつつ、注文した。

 ぬる燗にして飲んで、ぶっ飛んだ。濃醇で、甘辛酸苦のバランスが非常によくとれている旨酒だったのだ。やや強い酸が全体を引き締める。口の中で旨さの宇宙が広がる。いい酒を知った二人、はしたなくも「うめぇ~うめぇ~」とヤギのように叫んでしまった。

 店主が席にやってきた。「隆」を褒めちぎると、戸惑ったような、くすぐったいような表情を見せた。店主としては、想定外の褒められ方に、ちょっと戸惑っているのだろう。

 さて、「隆」の話には余談がある。酒の手帳をめくっていたら、なんとこの店で2年前、同じ「隆」を飲んでいたのだ。それをすっかり忘れて、初めて飲む酒だあ、と喜んで飲んでいたわたくし。アルコール性健忘症になりつつあるのだろうか。

 酒名「隆」の由来について、神奈川県茅ケ崎市にある青木酒店のサイトは以下のように説明している。

「お酒は決して、できたてがすべて良いとは、限りません。力のあるお酒はビンテージワインの様に月日が経つことで味が更にまろやかになり、深みが増すこともあります。丹沢山の山の名にちなんで山が隆起するごとく、味も隆起するとの意をこめてつけられたとうかがっています」

(了)

酒蛙