メニュー 閉じる

47News

文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【17】千両男山 辻村勝俊の純米酒(せんりょうおとこやま)【岩手】 

2010.2.7 22:33
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
岩手県宮古市 菱屋酒造店
岩手県宮古市 菱屋酒造店

 晩酌をするため、家から歩いて15分ほどの蕎麦屋へ。ここは、酒の種類は少ないが、肴が安く、しかも量が多いので、気に入っている。

 酒のメニューを見ていたら、「辻村勝俊の純米酒」という名が目についた。辻村勝俊。田酒(青森市)の名を全国に広めた名杜氏。彼はいま、千両男山で酒をつくっていたのだ。

 飲んでみた。田酒とは全然違っていた。田酒はコクのある酒だが、この酒はすっきり系。香りを抑えており、落ち着いた雰囲気のきれいな酒。さらっとして、やや線が細いが、味がしっかりしている。辛甘濃薄旨酸苦渋が、すべてにおいて中庸の感じの、飲み飽きしない酒だった。キレが良い。余韻で酒の旨みを楽しめる。

 辻村勝俊が田酒の杜氏だった、というので飲む前は田酒をイメージしたが、田酒とあまりにも違うタッチにびっくりした。彼が、意図して違う路線を目指しているんだろうなあ、と想像するが、あくまでも想像の域を出ない。また、精米歩合は55%。純米吟醸を名乗れる数字だが、あえて純米を名乗っているところが、彼のこだわりなのだろう。

 さて、この酒を飲んだとき、これは、単にきれいなだけの酒じゃないな、とおもった。後味というか余韻が実にしっかりしていたからだ。このような酒は、ぬる燗にすると抜群に旨くなる傾向にある。

 この日、燗酒も楽しみたかったが、そこまでしなくても、とおもい、仕上げに蕎麦をすすって帰った。

 ところが面白いもので、それからわずか2週間後のこと。定年を迎える同僚を送る会に、この酒が登場したのだ。おあつらえ向きだ。試したかったぬる燗を飲んでみた。驚いた。冷やのときは、すっきり系の酒だったが、なんと、信じられないほど旨みが膨らみ、おもわず頬が緩むほどの旨酒に大変身をとげていたのだ。会に参加した仲間も盃を口に運びながら、「こりゃあ旨い。どこの酒だ?すげぇなあ」と口々に言う。

 田酒を全国の人気酒に押し上げておきながら、千両男山ではまったく違った酒づくりをめざす。そして、冷やとはまったく違う顔を持つ燗。辻村勝俊、なかなかやるなあ。つくづく、そう思う。

酒蛙

最新記事