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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【19】朱盃 特別純米 生一本(しゅはい、熊本県山鹿市 千代の園酒造)【熊本】

2010.2.9 17:02
熊本県山鹿市 千代の園酒造
熊本県山鹿市 千代の園酒造

 酒を愛する友人との月例飲み会。居酒屋の店主は毎回、わたくしたちが飲んだことのない酒を用意してくれる。この日も3種類をとりそろえてくれた。その2番目に出してくれたのが、「朱盃 特別純米 生一本」。店主は「この酒、期待して入れたんですよ」。わたくしたちは、「へ~、朱盃?知らないな」「熊本の酒だって? 面白そうだ」と飲む前から喜んでいる。

 ラベルには「濃醇より出でて淡麗の姿装う」と書かれている。ん? 濃醇と淡麗なんて、相容れない正反対。「こりゃ、面白い、面白い」。飲む前から、盛り上がる。もちろん、飲んでみてハズレの場合もあるが、飲む前にあれこれ勝手なことを言うのは、“儀式”みたいなもんで、これもまた楽しいものだ。

 さっそく飲んでみる。けっこう濃醇なタッチ。やや辛口か。酸も感じる。余韻を引きずる。飲んでみた結果、「濃醇より出でて淡麗の姿装う」は、分からないでもない、というのが、わたくしの結論。なぜなら、たしかに濃醇。それでいて、やや軽快。ということで、「淡麗の姿装う」になるのかな? ここで面白いのは、「淡麗」と断定していないこと。だって、濃醇で淡麗、ということはやっぱりありえないから。だから「姿装う」と表記したのだろうが、このコピーを書いた人はなかなかの知恵者だとおもう。この意外性に拍手。

 このあといくつかの酒を飲み、今度は「朱盃」のぬる燗を飲む。おっ、ふくらみが増し、キレが良くなり、酸が出てくる。旨い。冷酒でも燗でもいいが、ぬる燗の方が断然いい。冷酒で飲んだとき、ぬる燗の旨さはある程度予想はついたが、予想よりはるかに旨かった。口が喜ぶ。

 それから間もないある日。某社の社長夫妻らを接待する場にわたくしはいた。が、宴席は、なんだか盛り上がらない。社長夫妻は熊本県出身。そこで社長に言ってみた。「こないだ、千代の園酒造の酒を飲んだんですよ。おいしかった」。すると、場は盛り上がった。「え~っ、千代の園を知っているんですかあ。すごいなあ」。それから夫妻とわたくしは酒の話を30分くらい続けた。社長はご満悦。この酒のおかげで、わたくしは役目を果たすことができた。

 酒名「朱盃」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「戦後は普通酒全盛の昭和43年(1968年)全国の酒蔵にさきがけ、純米酒造りに着手。上槽後の祝いの席で蔵人が朱色の大盃でまわし飲みをしたことからその純米酒を『朱盃』と名付けました」

酒蛙