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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【22】月の井 純米 無濾過 生原酒(つきのい)【茨城】

2010.2.12 21:22
茨城県東茨城郡大洗町 月の井酒造店
茨城県東茨城郡大洗町 月の井酒造店

 「これ、食べてみませんか?」。仲良くなった居酒屋の料理長が、料理一品をカウンターに置いた。ブリ大根だった。

 「俺、ブリ大根に、いいイメージを持ってないんだよね。ブリの身がパサついたものばかりで」とわたくし。「ふふっ、だまされたと思って、まず背骨から食べてみてください」と料理長。

 一口噛んで、ぶったまげた。骨はたやすく砕けた。その骨から、えもいわれぬ旨みがほとばしる。感動ものだった。身はまったくパサつかず、豊潤な旨みの凝縮。わたくしが持っていたブリ大根に対するイメージを根底から覆す味だった。

「師匠の背中を見て必死に学んだブリ大根です。師匠が病で倒れたあと、勉強の成果を味わってもらおう、と師匠の病床に、一生懸命つくったブリ大根を持って行ったんです。食べた師匠は、モノを言わなかったけど、こっくり首を縦に振ったんです。評価の厳しい師匠から、初めて褒めてもらったような気がします。これが、そのブリ大根です」。料理長は、すこし遠くを見て言った。師匠は、それから間もなく亡くなった、という。

 この絶品ブリ大根に合わせたのが、「月の井 純米 無濾過 生原酒」。ぬる燗にしてもらった。多少濃醇で、旨みと酸味とキレがある、力強い飲み口。とくに、余韻でずっと尾を引く酸が特徴的だ。

 この酸がブリ大根と合う。旨みの強いこってりしたブリと、さわやかな酸のコラボレーションがいい。口の中に、旨みの宇宙が広がる。至福のひとときだった。

 酒名「月の井」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「『月の井』の酒名の由来は、磯節の中の一節にある『波の背に乗る秋の月』という文句のとおり、中秋の名月の光を磯に砕ける波頭に受け、金波、銀波に輝く様が実に見事で、その月景にあやかって名付けたと言われています(徳川時代の水戸八景の一つにもなっている光景です)」

酒蛙