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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【52】極聖 純米桃にごり(きわみひじり)【岡山】

2010.3.12 23:54
岡山県岡山市 宮下酒造
岡山県岡山市 宮下酒造

 月例の飲み会。年度末につき、メンバーたちは忙しいようで、ドタキャンが相次ぐ。そこで会長(わたくしの飲み友達)が急きょ、同僚を誘った。鈴木さんという。いきなり申し訳なさそうに「私、お酒を飲むと、酔うんですよ」と言ったから、全員、ずっこけた。「飲むと酔うのは当ったり前田のクラッカーじゃないかあ」(古いなあ)。

 ややこしいことに、従来のメンバーにも鈴木さんがいる。誰かが「鈴木さん」と声をかけると、2人の鈴木さんが「はいっ」と答える。こりゃ、困った。だから、「こちらの鈴木さん」「あちらの鈴木さん」と呼んだりする。いつもと雰囲気が違い、これはこれで楽しい。

 この夜は、最初からしっかりした味や、フルボディーの酒を飲み続けた。口が濃い味に慣れきったあとでは、続く酒を何にするのか迷う。すっきり系の酒を飲めば、それこそ水のように感じてしまい、その酒に申し訳ないからだ。そんなとき、冷蔵庫を見ていた会長が「次は、あれを飲もう」。

 「純米桃にごり」だ。それまで飲んだ路線とまったく別の酒だ。これはいいかもしれない。にごり酒っぽく見え、しかも、薄っすら桃の色だ。見た目は桃ジュース。しかも、ラベルには、「岡山白桃酵母使用」と書かれており、すべて“桃づくし”の酒。これは珍しい。「白桃酵母」って何だ?という疑問が頭を駆け巡るが、それはさておき、飲んでみる。

 見た目はくどそうにおもえたが、飲んでみたら違っていた。クセがなく、さっぱりした飲み口。甘みと酸味のバランスが絶妙、しかもアルコール度数が低めなので、実に飲みやすい。旨くて驚いた。飲み会のメンバーも、「こりゃ、いいな」と言いながら飲む。

 蔵のホームページを見たら、「赤い色素を作る赤色清酒酵母(独立行政法人酒類総合研究所特許)と白桃の木から発見された岡山白桃酵母(岡山工業技術センター特許)の2つの酵母を使用した」と書かれていた。ふむ、この酵母は桃から見つけたのではなく、桃の木から見つけたんだ。なるほど。

 蔵のホームページはこの酒を「心地よい酸味と甘味があり、のどごしが爽快です」と紹介している。ホームページのスペック表示は「原材料名 米・米麹、アルコール度数12度、精米歩合 あけぼの65%、酸度3.8、アミノ酸度1.0、日本酒度-44」。

「アケボノ」は農林水産省東海近畿農業試験場栽培部稲育種研究室が1939年、母「農林12号」と父「朝日」を交配。育成と選抜を繰り返し、食用米として開発、1953年に命名された。主産地は岡山県。

 それにしても、いろいろ考えるものだ。岡山といえば、すぐ桃を連想する桃の産地。その主産業を酒に生かすなんて、なかなかのアイディアだ。ソフトで旨いので、ヒット商品になる可能性がある。このような、地元にこだわってつくった商品がヒットし、地域が潤うことになればうれしい。

 ところで、なぜ、居酒屋にこの酒があったのだろう。そのときは酔っ払って、まったく気にもとめなかったが、翌日、酔いがさめてから、その理由が分かった。飲み会が「桃の節句」のあたりに開かれたので、酒屋さんが、季節の彩りを添えるため、気をきかして居酒屋に持ってきたのだ。ああ、なんということだ。季節の情緒におもいを巡らすことなどまったくなく、ただ「うめぇ~うめぇ~」と飲んでいたなんて。おのれの、がさつさを恥じた。

 酒名「極聖」の由来について、蔵のホームページは、以下のように説明している。

「代表銘柄であった『聖』は、万葉の歌人・大伴旅人が詠んだ和歌『酒の名を聖と負せし古の大き聖の言のよろしさ』から名づけました。 甘口が主流の岡山にあって、辛口を身上とする酒として1974年(昭和49年)から醸してきました。 大吟醸は最高峰という意味で、聖の上に『極』の文字を冠し、『極聖(きわみひじり)』と命名しました。 同1989年(昭和63年度)に全国新酒鑑評会で金賞受賞以来、3年連続金賞を果たし、それ以降も金賞を受賞いたしております。 そして、現在、代表銘柄を『極聖』に移行いたしました」

酒蛙