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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【176】隆 純米大吟醸 無濾過生原酒仕 十九 播州山田錦(りゅう)【神奈川】

2010.6.10 17:26
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店
神奈川県足柄上郡山北町 川西屋酒造店

【3人酒 全5回の⑤完】 

 「昇龍蓬莱」「七田」「悦凱陣」「宗玄」と飲み進めてきた三人酒。そろそろラストだ。どの酒で締めるか。わたくしが、悩んでいたら、K居酒屋の三代目店主が「これなんか、いかがでしょうか?」と一升瓶を持ってきた。この店は、酒メニューに書かれている酒のほか、メニューには書いていない、いわゆる“裏メニュー”の酒を置いている。この“裏メニュー”の酒を飲むのが、K居酒屋でのひとつの楽しみなのだ。三代目が持ってきた「隆」も裏メニューの酒だった。これも、ぬる燗で飲む。

 またまたAさんが最初に反応した。「これはすごい。濃いっ!」。続いてBさんが「強烈っ!」。料理の味にうるさいAさんは、実は酒の味にもうるさく「酸が強いなあ。酸度は1.5くらいか?」。一升瓶の裏ラベルを見たら、ほんとに酸度が1.5だったから、一同びっくり仰天。

 わたくしは、一升瓶の写真を撮ったり、酒の名をメモしなければならないので、どうしても出遅れる。Aさん、Bさんが「すごい、すごい」と盛り上がっているさなか、この酒を口にする。わたくしも驚いた。「うめぇ~~っ! 酸っぱい。厚い。旨い。味が膨らむ!」。貧困な語彙をフル活用して感動を口にする。

 Bさんが言う。「(一番最初に飲んだ)昇龍蓬莱より濃い。一升瓶の首に張っているラベルの『十九』が気になるなあ。アルコール度か?」。「まさか」とAさん。このやりとりを聞いていたチー女将のYちゃんが「タンクの番号なんだって」。な~るほど。一同、腑にすとんと落ちる。

 それにしても旨い酒だった。「旨みが膨らむよ。なんという厚さ。なんという旨さ。香りが抑えられ、どっしり重量感のある酒だ。さすが、三代目が持ってきた酒だなあ」。お世辞抜きでわたくしがこう言ったら、三代目もYちゃん(三代目の妹)も、いかにも嬉しそうな表情を見せた。わたくしたちがいる一角は、あたたかい空気に包まれ、その中で3人は、極上の旨酒を飲み続けた。

 このあとは、Aさん行き着けのバーへ。進駐軍相手のジャズバンドでならした、という高齢のマスターの店だ。わたくしも何度か来たことがある。マスターが開口一番、「酒蛙さん、アレ歌ってよ」とわたくしにリクエストする。ペリー・コモの「and i love you so」。マスターもわたくしも大好きな曲。わたくしが、マスターのピアノをバックにこの曲を歌うと、ジャズにくわしいAさんが「俺、この曲、知らねぇ~なぁ~」。

 次にAさんがマスターのピアノに合わせて、難しそうなジャズの曲を歌う。今度はわたくしが「俺、この曲、知らねぇ~なぁ~」。こんな感じで、マイクは行ったり来たり。時計の針は、0時をはるかに回ってしまった。

 退任するAさん、Bさんだが、「また、一緒に飲もう」。このような飲み会なら、いつでもOKだ。

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酒蛙