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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【208】雑賀 純米大吟醸 本生無濾過(さいか)【和歌山】

2010.7.16 23:00
和歌山県和歌山市 雑賀豊太郎商店
和歌山県和歌山市 雑賀豊太郎商店

【酒友との二人酒 全4回の③】

 H居酒屋での、酒友との二人酒。居酒屋店主が友人の家の冷蔵庫から持ってきた4本の酒を飲む。その3つ目は「雑賀」だ。「雑賀」はだいぶ前、いちど買って飲んだことがあるが、味はすっかり忘れていた。味を確認するいいチャンスだ。

 ラベルの八咫烏(やたがらす)に驚かされる。店主は即座に「サッカー日本代表のシンボルマークだあ」と敏感に反応する。時あたかも、W杯サッカーたけなわ。日本代表の活躍に国中が盛り上がっている。

 飲んでみた。旨くて驚いた。濃醇で酸味がある。旨みがあり、味がしっかりした酒。わたくしのストライクど真ん中の酒だ。けっこうキレが良い。香りは控えめだが、吟醸香はしっかりある。旨い。完成度が高い酒だ。

 店主が面白いことを言った。「入り口が大人しくて、中盤でナニカがいる」。「何がいるのか?」と酒友が即座に突っ込みを入れる。その答えを期待したが、店主は「分からない」。肩透かしをくわされたわたくしは、すこしずっこけた。

 酒は一級品で文句のつけようがないが、わたくしは、ラベルに惹かれた。「雑賀」と「八咫烏」という全国的に知られた名が、このラベルに同居しているからだ。

 雑賀は、「雑賀衆」で知られる。ネット情報によると、雑賀衆は、紀州雑賀荘を中心とする一帯(現在の和歌山市の雑賀崎)を根拠地とした戦国時代の地侍集団。大量の鉄砲を使いこなす戦術に優れ、領土防衛のほか、戦国大名の傭兵として各地を転戦。信長・秀吉などの権力とは一線を画し、独立性を最後まで保ち続けた、という。

 酒名「八咫烏」(やたがらす)の由来について、蔵のホームページは以前、以下のように説明していた。

「『やたがらす』とは神話に出てくる瑞鳥です。神武天皇が東征の際に熊野から大和に入る吉野の山中にて道に迷われました。
その際に天の神が道案内としてつかわした鳥が『やたがらす』であると言われています。『やたがらす』とは大きい鳥という意味であり三本足のカラスで中国や日本では太陽の精として信じられています。法隆寺の玉蟲の厨子後側の密陀絵に三本足のカラスの象徴の日輪があります。熊野本宮、那智、速玉の三社の御神鳥、また橿原神宮では交通安全の守護神として祭られています。また、日本サッカー協会での旗章に採用され日本代表のエンブレムになっています。北岡本店では大正時代、惣太郎が吉野とかかわり深い神武天皇の伝説にちなみ『八咫烏』を商標としました」

 この八咫烏がなぜ、サッカー日本代表のシンボルマークに使われたのだろう。これもウィキペディアによると、「東京高等師範学校(現在の筑波大学)の漢文学者であり、日本サッカー協会の創設に尽力した内野台嶺らの発案を基に、日本に初めて近代サッカーを紹介した中村覚之助(内野台嶺の東京高等師範学校の先輩でもある)に敬意を表し、出身地である那智勝浦町にある熊野那智大社の八咫烏をデザインしたものであり、1931年に採用された」とある。なんと、79年前からシンボルマークとして使われていたのだ。知らなかった。

 そして、あの最強鉄砲集団「雑賀衆」の旗印が「八咫烏」だったのである。ここで、「雑賀」のラベルに「八咫烏」が使われている理由が分かる。この蔵が、地元の英雄「雑賀衆」と、神社の神紋「八咫烏」をとても誇りにおもっていることが、酒のラベルを見て伝わってくる。

【備考】
この記事は2010年7月16日に初公開、その後一部加筆されました。

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酒蛙