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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【255】十八盛 備前蒼海 雄町 純米(じゅうはちざかり、びぜんそうかい)【岡山】

2010.9.12 21:36
岡山県倉敷市 十八盛酒造
岡山県倉敷市 十八盛酒造

【Jさんとの二人酒 全8回の①】

 遠来の友人Jと飲むことになった。遠来といっても、ちょうど1週間前にもY居酒屋とH居酒屋で飲んでいる。今回はM居酒屋で飲む。

 Jは、日本酒研究会(単なる飲み会ね)の発足当初のメンバーだったが、その後、異動で遠く離れた地で仕事をしている。Jの舌はなかなかのもので、当地で行われた利き酒大会の優勝をJとわたくしが分け合ったことがある。

 いつもの飲み会のように、飲む酒は、M居酒屋の店主に任せる。この日は、わたくしが酒米の「雄町」が好きなのを知っている店主が、雄町飲み比べ作戦に出た。

 最初は、「十八盛 備前蒼海 雄町 純米」。最初から雄町、である。が、「十八盛」をJもわたくしも知らない。ちょいと情けない無知蒙昧な研究会である。

 まず、飲んでみる。わたくしが、「最初のアタックは濃醇な感じだけど、すっとキレる。酸もくる。口に慣れてくると、それほど濃醇には感じられず、さわやかな飲み口だな。香りはあまり無いなあ」と普通の感想を言うと、Jが、どうしたものか、あまり一般的ではない第一声。

 J「後味がいい。後味が好き」

 ん?どういう意味だ?じゃあ、後味までの前味、中味(そんな言葉はないとおもうけど)はどうなのさ、とツッコミを入れたくなったが、黙っている。

 次にわたくしが言った感想は、「なんだか昭和レトロ感熟成感クラシカル香味があるね。日本酒オールドファン垂涎だね」だった。これにJが、激しく反応した。「俺さあ、このクラシカル香味が苦手なんだよな。古酒とはまた違うビミョーな感じなんだけどさ。だから、熟成感がいなくなったあとの、後味が好き、と言ったのさ」。なあるほど。これで、Jの感想の真意が分かった。「でも、Jさん、後味がいい、ということは味がいいってことだよ」とわたくし。

 要するに、この酒にJもわたくしも、昭和レトロ感熟成感クラシカル香味を感じたわけで、この酒は、日本酒オールドファンにはたまらない酒だろう。

 飲み進めていたら、すなわち冷酒の温度が上がったら、味わいが変わってきた。酸が前面に出てきて、すっきりさわやか系の飲み口に変わってきた。旨みが、堂々と正面玄関から出てこないで、奥の勝手口から顔を出す、という感じだ。つまり、すぐ炸裂的に旨みが膨らまないで、ゆっくり遅れて控えめに顔を出す、というイメージだ。余韻にすこし苦みがある。やわらかさは感じないため、飲んだ印象は「愛想の無い武骨な酒」。この、雄町的な愛想の無さが、たまらなく好きだ。

 ところで、わたくしは、この酒を飲んでいるとき、大発見をした。ある食べ物と合わせたら、この酒に感じられる「クラシカル香味」が消えたのだ。その食べ物とは、焼いたシシャモ(♂)。アテの1つとして出てきたものを何気なくかじって、この酒と合わせたら、あの「クラシカル香味」が消えたのだ。

 びっくりしたわたくしは、Jに教えた。「わっ! シシャモを食べたら、クラシカル香味が無くなったよ~」。「どれどれ」とJ。すぐ、「無くなったああああ。これ、すごい発見だよ」。以後、Jは、焼きシシャモをかじりながら、この酒を「旨い旨い」と言いながら飲む。

 しかし、逆に日本酒オールドファンの人がシシャモを食べたら、クラシカル香味が失われる。「日本酒オールドファンにはシシャモを勧められないね」とわたくしが言えば、Jも「そうそう」と同意していた。

 さて、一升瓶の首のラベルに「雄町特有の華やかな味わい…」と書かれていたが、わたくしの舌ではそのようには感じなかった。やっぱり、さらっとして愛想の無いようにおもえるんだけどな、わたくしの舌には。人の舌は、百人百様だから、なにも、瓶のラベルと同じように感じなきゃ間違いだ、というものでもない、とおもう。

 酒名および蔵名「十八盛」の由来について、ウェブサイト「『日本の名酒』自宅にいながら蔵元巡りの旅」は、以下のように説明している。「5代目石合多賀治氏によって『娘十八、番茶も出花』という言葉から命名された伝統あるお酒ということです」

【備考】
この記事は2010年9月12日に初公開、その後一部加筆されました。

酒蛙