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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【358】酒一筋 かたつむり 純米吟醸 しぼりたて(さけひとすじ)【岡山】

2010.12.3 21:08
岡山県赤磐市 利守酒造
岡山県赤磐市 利守酒造

 土曜日の夜。晩酌のため、歩いてふらりと街に出る。いつもならまっすぐH居酒屋に入るところだが、今回はちょいと浮気をして、H居酒屋の真向かいの居酒屋「生活習慣病にやさしい店」に。変な店名の居酒屋だが、けっこう気に入っている。

 この店でビールを1本飲む。お供は、ジャガイモを豚ロースで巻いたものの天ぷら、シメサバとタマネギのマリネ、ゼンマイと油揚げの煮付け。う~ん、もろ家庭料理。たしかに生活習慣病にやさしそうなメニュー。

 これらを食べたあと、道路を隔てた向かいのH居酒屋へ。楽しみにしていた「酒一筋 かたつむり 純米吟醸 しぼりたて」が冷蔵庫に入っていたので、これを飲むことにする。

 H居酒屋ではことしの夏ごろから、カウンターに「いきものラベル」の酒の空き瓶を立てて飾っている。瓶はすこしずつ増え、いまは、ムカデ、セミ、トンボ(2種類)、ヤゴ、ウグイスの絵のラベルが並ぶ。これにカタツムリを加えよう、と店主が注文していたものだ。この酒は3年ほど前、同店で入れたことがあり、わたくしも飲んだが、その記憶はまったく無くなっている。再び味わえるのがうれしい。

 酒蛙「旨いっ! 酸があり、すっとキレる。落ち着いた香り。余韻に苦味がずっと残る。しっかりした旨みとしっかりした味がある。旨みと酸味とやや辛さの複合味。非常に落ち着いた大人の酒だね」
 店主「口開けのときは、ちょっと落ち着かなかったが、今は落ち着いた感じ。昔の『かたつむり』はもっと吟醸香が華やかだった記憶があるが、気のせいだったのだろうか。こっちの方が断然いい。苦味と酸味が一緒になった『苦酸っぱい』味に感じる」

 一口目は濃醇のようにおもえたが、三口くらい飲むと、濃醇さが無くなる。

 酒蛙「際立った特徴はないが、実にいい酒だなあ」
 店主「それが一番です。それが、お酒にとっての、最大の褒め言葉です」

 次に、ぬる燗にしてみる。

 酒蛙「ん? 甘みが出てきたぞ」
 店主「なんだ、なんだ? 甘さがいる。香ばしい含み香がいい。ああ、おいしい」
 酒蛙「甘さと酸味と旨みが一緒になっている。いいなあ。旨みがふくよか。全体のバランスがいい」

 旨さは、これだけで終わらなかった。温度が下がった燗冷ましも良かったのだ。

 酒蛙「燗冷ましでもいいね。甘みがある。面白い。おいしい」
 店主「そうっすね。燗冷まし、いいですね」

 ところで、ラベルの俳句が気になる。「行く先に 吾が家ありけ里 かたつむり」。蔵のホームページを開くと、「杜氏が酒造りのために米を担いで蔵へ向かう姿をうたったものです」と俳句のココロが書かれていた。なるほど、である。でも、誰がつくった俳句なのだろう。

 また、杜氏について、瓶の裏ラベルでは、次のように記載している。「但馬杜氏・田村が、酒造り同様に、丹精こめて自ら栽培した兵庫北錦をたずさえて、今年の酒造りの為に蔵へ帰ってきました。今期第一号、純米吟醸しぼりたて。田村杜氏と蔵人が、昼夜を惜しんで醸しあげた入魂の一滴をご賞味下さい」

 この酒は「兵庫北錦」という酒米を使って醸しているのが特徴だ。「兵庫北錦」は、 「なだひかり」と「五百万石」両親に兵庫県で育成され1987年に品種登録された。現在は兵庫県の但馬、丹波地域で栽培されているが、このコメを使っている蔵は非常に少なく、「酒一筋」は希少価値の酒といえそうだ。

 わたくしは、「酒一筋 かたつむり 純米吟醸 しぼりたて」の冷酒と燗酒を飲んだあと、H居酒屋で、「萩の露 特別純米 山廃仕込 無濾過」のぬる燗を飲み、ミルキー味的な旨みを楽しんだ。

 酒名「酒一筋」の由来について、日本の名酒事典は「明治元年創業。酒名は一生涯、酒造りに打ち込むという信念からつけられた」と説明している。

【備考】
この記事は2010年12月3日に初公開、その後一部加筆されました。

酒蛙