メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【380】一会 無ろ過小槽袋搾り 純米吟醸(いちえ)【愛媛】

2010.12.22 21:39
愛媛県西条市 武田酒造
愛媛県西条市 武田酒造

【日本酒研究会月例会 全6回の⑤】

 今月の日本酒研究会の5番目に出てきた「丹沢山 山廃純米 足柄山田錦 本生」は、非常に酸が強い酒だった。このように酸が強い酒を飲むと、次の話題は、甘さが強い酒になる。甘い酒となると、メンバー全員、「三芳菊」のことが頭に浮かんだ。

 ことし3月の日本酒研究会で飲んだ「三芳菊 雄町 純米吟醸 生原酒」(当連載【56】で紹介)は、驚くほど甘い酒だった。みんなの脳味噌に、この甘さは強烈に刻み込まれている。ひとしきり「三芳菊」について話したあと、店主が、「じゃあ、この酒と『三芳菊』とを比べてみてください」と言って出してきた酒が、「一会 無ろ過小槽袋搾り 純米吟醸」だった。

 甘い酒というテーマを考える前に、みんな、ラベルを見て目が点になった。「なんだ、なんだ、どうした、どうした、この『●会』は。なんて読むんだ」。仰天のラベルだ。よく見たら、小さな字で「いちえ」と書かれていた。そりゃ、そうだよな。「●会」だなんて、だれも読めない。それにしても「●会」だなんて、どういう意図で命名したのだろう。

 さて、態勢を立て直し、飲んでみる。

 酒蛙「これは旨い」

 M、K「でも、甘いっす。香りも甘い」

 F 「旨い。鼻から抜ける香りがいいね」

 酒蛙「ボディーは甘く余韻も甘いけど、これは旨い。酸味と甘み・旨みのバランスがいい。酸が強いから、酒度『-3』という数字ほど甘さを感じさせないんだとおもう。香りは控えめだ」

 甘いことは甘い酒だったが、総じて「三芳菊」よりは飲みやすい酒だった。

 一升瓶の裏ラベルには、次のような口上が書かれていた。

 「愛媛県産米『松山三井』を使った純米吟醸です。手締めの小槽(こぶね)で時間をかけゆっくりと丁寧に搾っているため、口当たりも優しく膨らみのある味わいとなっております」

 なるほど、だ。たしかに口当たりがよい。たしかに優しく膨らみのある味わいだ。なかなか上手い表現だ。

 「一会」を醸している武田酒造の看板銘柄は、「日本心(やまとごころ)」。すごい酒名だ。命名の由来について、蔵のホームページは、次のように説明している。

 「明治37年、初代武田近平が現在の地(愛媛県東予市三芳)に創業致しました。ちょうどその頃は日露戦争のさなか、心一つにして勝利を願う日本人の熱い心『ヤマト魂』と静かに移りゆく四季の中で培われてきた日本人の繊細な感性を表して『日本心(やまとごころ)』と命名したと言われている」

 ところで、このホームページでは、杜氏も紹介している。紹介文を見て驚いた。同酒造の杜氏・上田益男さんは、1956(昭和31)年から現在まで、なんと54年間も杜氏を務めている超ベテラン。1999(平成11)年には黄綬褒章を受賞された、という。上田杜氏の信条は「杜氏生涯一年生」とのこと。素晴らしい言葉だ。すべての仕事に当てはまる言葉ではないか。わたくしの仕事にも。

酒蛙