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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【466】東北泉 雄町純米 辛口(とうほくいずみ)【山形】

2011.4.5 23:47
山形県飽海郡遊佐町 高橋酒造店
山形県飽海郡遊佐町 高橋酒造店

【ひとり酒 全2回の①】

 大震災に反応して、自粛モードが世間に横溢している。が、自粛モードが行き過ぎると、社会にカネが回らなくなり、社会が閉塞し、二次災害、三次災害が発生する。

 それを食い止めるためには、街ににカネを落とさなければならない。わたくしの場合、その対象は居酒屋になる。このような固い決意のもと先々週、T居酒屋、M居酒屋、H居酒屋、というなじみの居酒屋3軒を回った。しかし、どこも安い店なので、カネを落とそうとおもっても、なかなか落ちない。

 で、落としたカネは少なすぎる、もっと落とさなければならない、という固い決意のもと、社会貢献のため再び、T居酒屋とM居酒屋を回った。まず、T居酒屋へ。

 冷蔵庫の中の顔ぶれ(酒ラベルの顔ぶれね)は、見慣れたものばかり。選択がむずかしい。そもそもわたくしは、食堂のメニューから注文品を選ぶのが非常に苦手なタイプだ。

 で、面倒くさいので、看板娘(娘と言えるかどうか)のカズに「自分が好きな酒を持っておいで」と言った。そのカズが持ってきたのが「東北泉 雄町純米 辛口」だった。当連載【135】で、「東北泉 雄町純米 辛口 生原酒」を紹介している。前回は生、今回は火入れ、ということだ。

 さて、いただいてみる。すっきり辛口、前に出て来る酸がいい。旨みも適度にあり、単なる辛口に走らない。厚みはあまりないが、私がおもうところの、雄町酒らしい芯がある。シャープで、後味にしっかりした力強い味が残る。硬派的な酒。奥に若干の甘みもある。食中酒としてなかなかいい。香りは抑えている。奥に若干、わたくしの好きなセメダイン香(酢酸イソアミル系の芳香)がある。

 ずばり、酒飲みが好む酒。酒好きなカズが選んだ酒だけある。わたくしが「さすがカズだな。さすが酒飲みだな。酒飲みが好む酒だよ、これは」と褒めると、カズは「やめてくださいよぉ~」と半分困惑、半分納得の表情。

 さて、このような酒は、燗映えする可能性が高い。で、ぬる燗を所望する。推定ジャスト40℃くらいの温度のぬる燗ができてくる。わたくしの舌は、酒の酸度と温度には、絶対値的正確さを持っているのだ。

 ぬる燗をいただく。おっ、コメの旨みが広がる。酸も出てくる。冷酒のときに感じた辛さが、ちょっと引っ込む。冷酒のときはシャープな酒という印象だったが、ぬる燗にしたら、やわらかさと丸みが出てくる。厚みも増す。それでいてキレが良い。旨みが余韻に残る。「旨っ!」。おもわず声に出る。これはこれは燗の方が圧倒的にいい。

 この酒は、冷酒ももちろんいいが、ぬる燗の方がいい。くどさが無く旨みが適度に膨らみ、いい(わたくしは、くどい酒も大好きだが…)。わたくし一人が「旨い、旨い」と喜んでいては申し訳ないので、カズにもすこし味わってもらう。カズは親指を立てて「バッチ、グー♪」。そして「燗の方がいいわあ。こんど燗で飲も」。新しい楽しみを見つけたような、ぱっと花開く表情を見せた。

 蔵のホームページは、この酒について、以下のように紹介している。

 「最初は『雄町の旨みを楽しめる純米酒を造ろう』というコンセプトからスタートしたのですが、2~3年前からはもっとシャープにキリッとした純米酒も出来るのではと思い、同じスペックで『雄町純米』と『雄町純米辛口』の2種類を出荷しています」

 たしかに、シャープで旨みを感じる。コンセプト通りの酒に仕上がっている。そして、わたくし的な表現をするならば、わたくしがおもう雄町的旨さと雄町的武骨さを併せ持つシャープな酒、ということになる。

 わたくしは、この酒を冷酒で1合、ぬる燗で1合飲んだ。酒に合わせたのはソイの煮つけ、タラの芽の天麩羅、ヤリイカの握り4貫。

 さあ、夜は、これからだ。わたくしは歩いて、次のM居酒屋に向った。

酒蛙