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文化

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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【482】雪雀 純米吟醸(ゆきすずめ)【愛媛】

2011.4.25 20:32
愛媛県松山市 雪雀酒造
愛媛県松山市 雪雀酒造

 酒友Kと毎月のようにT居酒屋で飲んでいる。営業がスーツを着ているようなKは、めちゃくちゃ明るくにぎやかで、T居酒屋でも人気者。来店回数はわたくしの方が圧倒的に多いものの、人気度ではKの方が圧倒的に上だ。

 そのT居酒屋が先ごろ、新装開店した。律儀なKは、祝酒を2本贈った。これまた律儀な店主は、すぐ開栓せず、Kが来店するまで、大事に冷蔵庫に保管していた。ほかの客の目に触れないように、冷蔵庫の奥の奥に。

 Kと飲む日がやってきた。祝酒2本がわたくしたちの前に現れた。「雪雀 純米吟醸」と「月山 純米吟醸」だ。

 酒蛙「おおおっ、『雪雀 純米吟醸』は、見るのも聞くのも初めてだああ。すげぇなあ。いったいどこのお酒なの?」

 K 「いいね、いいね、うれしいね。酒蛙さんが飲んだことがないだろう酒を探したんだよ。その甲斐があったよ。よかった、よかった。これ、愛媛のお酒だよ」

 酒蛙「ふ~ん。でも、『月山 純米吟醸』は飲んだことがあるよ」

 K 「え~~っ!? そりゃ、残念だなあ」

 わたくしを意識して、Kは祝酒を選んだのだった。ということで、わたくしが飲んだことがない「雪雀 純米吟醸」から冷酒で飲んでみることにする。

 K 「普通の酒だね」(贈った当のKは、そっけない感想だ)

 酒蛙「水の如くのすっきりしたお酒だ。厚みやコクは抑えている。余韻に辛さがすこしある。ほとんど酸は感じない。純米吟醸だけど、吟醸香はあまりしない。熟成感があるね。でも、飲んでいるうちに熟成感を感じなくなったよ。飲み飽きしないタイプなので、食中酒に向いているお酒だ」

 K 「主張しない、目立たない、一般生徒みたい。『あ、君、いたのか』というような」

 Kの絶妙な例えに、全員大爆笑だ。Kは、お酒を独特の言い回しで表現する。わたくしは、彼の感想を聞くのを、いつも楽しみにしている。わたくしの単細胞的酔脳ではけっして出てこない表現をするからだ。いわば、言葉のマジシャン。

 瓶の裏ラベルでは、この酒を以下のように紹介している。「華麗でシンプルな香りとともに、まろやかで柔らかな風味がバランスよく口中に調和した、いつまでも飲みあきしない軽やかな純米吟醸です」。う~む、わたくしが感じた印象とはだいぶ違う。感覚の違いなんだろうな。軽やかなタッチ、ということろはわたくしと同じだ。

 ところで、愛媛県の酒なのに、酒名になぜ「雪」を付けているのだろう。ホームページでは、以下のように説明している。

 「蔵元の猪野家は、初代の猪野嘉次郎が大正4年(1915年)に、やはり酒造を営んでいた本家から分家して当地で始めました。創業時の酒銘は、日本昔話に『雀の酒造り』があるのにちなんで『雀正宗』と名付けました。その後、昭和6年、当時首相に就任した犬養毅政友会総裁は、かねて猪野初代蔵元と交流があり、この酒を愛しました。そして『雪雀』という銘にするようにとすすめたのです。『雪雀』の“雪”は昔から豊年の瑞兆とされています。同時に清酒の白々と輝う清らかな様子を“雪”の白さになぞられた言葉でもあります。また、“雀”の字は、もともと『雀正宗』にも使われているように『雀の酒造り』に由来します。雀が竹の切り口に蓄えた米が、自然に発酵して酒になった、という言い伝えにもとづいています。ねがってもない酒銘を得て『雪雀』の酒味、酒質はいよいよ深まったのです」

 わたくしたちは「雪雀 純米吟醸」の次に、これもKが贈った祝酒「月山 純米吟醸」を飲み、このあとH居酒屋に移動。H居酒屋では、津波で被災した宮城県石巻市の墨廼江酒造を励ますため「墨廼江 純米吟醸 蔵の華」(当連載【351】参照)の冷酒を飲み、そして「房島屋 純米 無ろ過生原酒」(当連載【481】参照)を飲んだ。

酒蛙