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日本酒津々浦々

日本全国津々浦々のさまざまな日本酒のコラムです。

【592】夢の中まで 純米吟醸(ゆめのなかまで)【宮崎】 

2011.9.13 17:57
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宮崎県延岡市 千徳酒造
宮崎県延岡市 千徳酒造

 日曜日の夕方、歩いて近くのH居酒屋へ。晩酌のためだ。日曜日の夕方、居酒屋で晩酌するのは、なんともフシギないい気分になる。ウイークデーだと、仕事の切り替えで飲むのでメリハリがつくが、休日の居酒屋だと、まったり感をひきずっての飲みだから、いつもとは違う気持ちで酒を飲める。そのいつもとは違う気持ちが、心地よい。

 さて、H居酒屋には「夢の中まで」という、酒には似つかわしくない軟弱(失礼!)そうな酒名と、これまた酒にはあまり例がない淡いピンクに桜模様。知らないけど、女性が好みそうな雰囲気を醸している。

 酒蛙「これ、どこのお酒?」

 店主「宮崎県です」

 酒蛙「へ~~~~っ、宮崎県かあ。俺、以前、千徳酒造の酒を飲んだことがあるよ」

 店主「ふんぎゃ~! なんで知っているんですかああ??? このお酒、千徳酒造なんですよ」

 酒蛙「え~~~~っ、マジっすか?」

 わたくしが以前に飲んだのは、千徳酒造の「蔵の真心 荒ばしり 純米 無濾過生原酒」(当連載【6】参照)。宮崎県の酒を飲んだことがなかったので、M居酒屋の店主にリクエストしたら、その酒を取り寄せてくれたのだった。このときは仲間と飲んだのだが、フレッシュ感があり、味がやわらかくふくらみ、余韻に甘さと苦味がほどよく残る、レベルの高い酒だった。失礼ながら、宮崎県は焼酎文化だとおもっていたので期待はしていなかったが、その旨さに、わたくしたちは「おっ、うまっ」「旨いなあ」。感動感激驚きの声が上がったものだった。

 その蔵のお酒だから期待が持てる。まず、冷酒でいただく。

 店主「軽いっす。ラベル通り。ラベルのイメージです」

 酒蛙「うん、軽快。さわやかだ」

 店主「うん、さわやかだが、飲兵衛には物足りないかも。淡麗系でしょうか」

 酒蛙「さわやかな酸が際立つ」

 店主「フルボディー酒は旨いけど疲れます。その点、この酒は疲れません」

 酒蛙「旨みほどほど、キレがものすごく良い」

 店主「キレはいいっす」

 酒蛙「夏酒にぴったりだけど、桜ピンクだから、春をイメージしたんだろうな。春のうきうき軽快感も表現している。燗は向かないかも。冷酒として飲むのが一番いいかも」

 店主「たぶん、そうでしょうね」

 酒蛙「吟醸香はほどほど、適度にある。疲れなくていい。酸がすごくいい感じでいいよ。辛口ではないね」

 店主「いい感じの酸。自己主張が無くて」

 酒蛙「自己主張が無いけど、メリハリはある。全体としては上品な飲み口だ」

 名は体をあらわす、の通りの飲み口だった。気軽に、いくらでも飲めそうなお酒だ。わたくしは「この酒は燗に向かないかも」と言っておきながら、ぬる燗を所望する。初めてのむ酒は、冷酒と燗の二通り飲んでみないと、どうしても満足できない体になってしまっているのだ。さて、ぬる燗ができてきた。飲んでみる。

 酒蛙「あっ!」

 店主「あっ! 軽い」

 酒蛙「軽いね。軽さの中に、吟醸香が出てきた」

 店主「吟醸香、ありますね。クセがない」

 酒蛙「うん、いいね。いくらでも飲めそうだ。香りが出る。ますます軽快になる」

 店主「甘さも出てきました。やわらかな甘みです」

 ぬる燗にしても良かった。冷酒、ぬる燗ともクセの無い飲みやすいお酒だった。宮崎県にこういうお酒があるなんて、うれしくなる。

 この瓶の裏ラベルでは、以下のようにこの酒を紹介している。

 「昔ながらの伝統と技術で高千穂産の酒造好適米山田錦を50%以下になるまで磨き上げました。純米700kgを手洗いし、米と米麹だけで醸したお酒は華やかな香りでさわやかな口あたりです」

 華やかな香りでさわやかな口あたり、か。さわやかな口あたりはその通りだとおもう。しかし、香りは華やかとはおもわなかった。冷酒では、香りはほどほど適度、むしろ控え目。ぬる燗にして香りが立ってきたようにおもえた。

 わたくしは、この、見事なまでにやさしいお酒を堪能したあと、H居酒屋名物の「焼きそば」で晩酌を締めた。

酒蛙

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